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デジャブとはどんな現象? なぜ起きるのかを心理学の観点から解説

高見綾(心理カウンセラー)

デジャブとは、「過去に経験したことがないのに、かつて同じような事を経験したことがあるかのような感覚に包まれること」をいいますが、この現象が起こる原因は何なのでしょうか? 心理カウンセラーの高見綾さんに、心理学的側面から解説してもらいます。

あなたは、「デジャブ」という言葉を聞いたことがありますか? 初めて体験したことのはずなのに、前にも体験したことがあるかのように感じられる現象をいいます。

しかし、具体的にどういう現象なのか、またなぜ起きるのかについては、知らない方が多いかもしれません。そこで今回は、デジャブの意味や原因などについて心理学の観点から詳しく解説します。

デジャブの意味

まずは、デジャブの意味を知っておきましょう。

「デジャブ」は、フランスの心理学者エミール・ブワラックによって提唱された概念で、フランス語で「既に見たことがある」という意味の言葉です。日本語では「既視感」と表現されることが多いです。

辞書で意味を調べると、「過去に経験・体験したことのない、初体験の事柄であるはずにも関わらず、かつて同じような事を体験したことがあるかのような感覚に包まれること。『前にもどこかで一度これと同じものを見たような気がする』という感覚」(出典:『実用日本語表現辞典』)と記されています。

「経験したことがあるかのように感じるが、いつどこでその体験をしたのかは全く思い出すことができない」というのがポイントです。

そんなデジャブが起こるのは、特別めずらしいことではなく、日本人の約6~7割の人が経験したことがあるといわれています。

ちなみにスピリチュアルな分野では、私たちには前世の記憶が残っていて、それがデジャブを引き起こしているとする説もありますが、心理学や脳神経学の分野では、人間の記憶の整理の仕方や無意識が、何らかの影響を及ぼしていると考えられています。

しかし、デジャブを再現することが困難なため、現在でも明確な原因が解明されているわけではありません。

具体的な事例・現象

では、デジャブとは具体的にどういった事象をいうのでしょうか。よくある代表的な例を挙げてみました。あなたにも思い当たる体験があるのではないでしょうか。

(1)初めての場所なのに、前にも来たことがあるような気がする

例えば、引っ越し先の土地を散歩していたら、初めて来た場所のはずなのに、街の様子や雰囲気などが妙に懐かしく感じ、「あれ? 前にもここに来たことあったっけ?」と思ってしまうような現象をいいます。

(2)誰かと話していた時に、前にもこのシーンを体験したことがあると感じる

友達や家族などと何気ない会話をしていた時に、ふと「ん? 前にもこういったやり取りをしたことがある気がする」と感じたりします。

実際には、初めて体験した場面のはずなのに、以前にも同じような会話をしたように感じるのです。

(3)人の言動が予測できる

例えば、電車に乗っていて、目の前に立っているカップルの会話を何気なく聞いていたとします。

「この後、こういう話題が出て、彼氏がこんなふうに反応するだろうな」と、なぜか分かってしまうのです。そして、本当にその通りになり、予知をしたような感覚になるのです。

デジャブが起こる原因

不思議な現象であるデジャブですが、なぜ起こるのでしょうか。原因についてはたくさんの説があるのですが、その中の代表的なものを紹介します。

(1)記憶のエラーから

私たちの記憶は、一続きではなく細分化されて脳にインプットされているといわれています。

すると、例えば「桜の季節に学校のベンチで友達と恋バナで盛り上がった」という記憶の断片が引き金となり、10年後「別の友達とカフェで恋バナをした時」にデジャブが起こるケースがあります。

記憶とエピソードを結び付ける脳の回路がうまく働かないため、記憶の一部が一致しただけで、あたかも同じことを経験したかのように錯覚してしまうのです。

こうした記憶のエラーは、自分が体験したことだけではなく、テレビなどで見た風景や人から聞いた話などでも、自分が体験したものだと思い込んでしまうことがあるようです。

(2)無意識の記憶から

精神科医のフロイトは、「デジャブは既に見た夢」であり「無意識のうちに見たものは、意識的には思い出すことができない」と説明しました。

つまり、夢をはじめとした、無意識のうちに見たり聞いたりしたものは記憶の断片として残り、似ている状況に遭遇した時にその記憶がよみがえってデジャブになるとされています。

(3)無意識に予測しているから

人が次に取る言動が何となく分かってしまうというデジャブは、無意識に行動を予測していることが原因だと考えられています。

私たちはその場の状況や過去の経験などから、近い未来のことをある程度予測することができます。人が取る行動を、意識的にではなく無意識に予測しているため、実際にその通りになった時にデジャブだと感じるのです。

デジャブが起こりやすい人の特徴

デジャブが起こりやすい人には、一定の特徴があることが分かっています。どういった特徴なのか、ご紹介します。

(1)15歳~25歳の若者

経験者への調査によると、デジャブは15歳~25歳あたりの年齢の時に頻発することが分かっています。反対に、年齢が上がるとだんだん起こりにくくなるともいわれています。

脳自体が成長途中にあるため、記憶とエピソードを結び付ける脳の回路がうまく働かないことで、思い込みによるデジャブが起こるとされています。

また、若い頃はたくさん新しいことを経験するために、多くのことが印象的に記憶に残りやすいともいわれています。

(2)感受性が豊かな人

感受性が豊かな人は、物事を見たり聞いたりした時に感情が揺れやすく、そのためさまざまなことが記憶に残りやすいといわれています。

強く印象に残った記憶が多いほど、デジャブを起こすきっかけになるのです。

(3)ストレスをたくさん抱えている人

強いストレスは、記憶障害などを引き起こすことがあります。

ストレスが原因で疲れている時は、脳の働きが鈍くなり、記憶のエラーや錯覚などが起こりやすくなり、デジャブが発生しやすいとされています。

(4)よく旅行に出掛けている人

よく旅行に出掛けている人は、初めての光景を見る機会が多く、強く印象に残った記憶が人より多くなります。

そして、特に旅行中はさまざまな刺激によって脳が活性化し、過去の記憶がよみがえりやすくなるので、そのタイミングでデジャブを感じやすくなるのです。

(5)頭の回転の速い人

デジャブの原因の1つとして、無意識で予測しているとする説がありますが、頭の回転が速い人ほど近い将来についてさまざまな可能性を予測して先読みをしているため、デジャブに遭遇する確率が上がるとされています。

デジャブを楽しんでみよう

初めての体験なのに、あたかも過去に同じ経験をしたことがあるかのように錯覚するデジャブという現象の仕組みは、まだ完全に解明されていません。

スピリチュアルな分野では、前世の記憶が引き出されているのではないかといわれていますが、心理学的な観点では無意識の記憶が関係しているのではないかと考えられています。

もしあなたがデジャブを体験した時には、こういったさまざまな説があることを参考にして、不思議な現象を楽しんでみるのも良いかもしれません。

(高見綾)

※画像はイメージです

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