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ビジネスで「不躾」はどう使う? 意味や使い方・類語を解説

松岡友子(コミュニケーションマナーアドバイザー)

「不躾」という言葉を知っていますか? ビジネスや日常生活において「不躾なお願いですが」や「不躾ですが~」というフレーズを見聞きしたことがあるという人もいるのではないでしょうか。今回は「不躾」の意味や使い方について、コミュニケーションアドバイザーの松岡友子さんに解説してもらいました。

私たちは普段、極力相手に配慮した話し方や文章を心掛けています。

ですが時には、あえて強い態度に出なければならなかったり、本当なら言いたくないことを言わなくてはならなかったり、というような場面にも遭遇します。

本日紹介する「不躾」はそのような場面で使うことができる言葉の1つです。

「不躾」とはどういう意味なのか?

「不躾」は「ぶしつけ」と読みます。

「躾」は、礼儀作法のことです。ちなみにこの「躾」という漢字は中国から伝来したものではなく、日本人が作り出した「国字」です。

ここではそんな「不躾」の意味について、紹介していきます。

「不躾」とは「無作法」「無礼」のこと

「躾」が「身を美しくする」つまり「礼儀作法を身に付ける」という意味であることは、漢字が表しています。

『広辞苑 第七版』(岩波書店)にも「礼儀作法を身に付けさせること。身に付いた礼儀作法」とあります。

したがって「不躾」とは、「躾が身に付いていない、礼儀作法をわきまえていない」つまり「失礼な振る舞い」という意味になります。広辞苑には「無作法。無礼」とも書かれています。

「不躾」が用いられる場面

言葉遣いをはじめ、立ち居振る舞いなどの礼儀作法が最も問われるのは上下関係です。

ですから、特に目上の方への礼儀作法や物言いが立場をわきまえず偉そうであったり、歯に衣着せぬはっきりとした遠慮のない言い方だったりした場合、「不躾な態度だ」と非難されかねません。

また、「唐突感」を感じた際にも使われる言葉です。

例えば、本来なら直接言うべきでないことや、時や場所をわきまえて発言すべきであることを、あいさつや前置きなしに本題に入るなどした際に、「なぜ急にそんなことを言い出すのか」と相手をびっくりさせるような場面。

こういった場合にも、相手には「不躾な人だ」という印象を抱かせてしまうでしょう。

このように、本来礼儀正しく振る舞うことが求められている場面で、失礼な態度を取ることが「不躾」という言葉なのです。

「不躾」を使う上で知っておきたいポイント

前段で触れた通り、「不躾」は、自分や他人が取った失礼な態度を「あれは不躾な態度だった」と客観的に表現する場合にも使われます。

その使い方だけではなく、無礼を自覚しながらもあえて失礼な態度を取る場合にも用いられるということが、この言葉のポイントとして挙げられます。

ですので「不躾ながら」「不躾とは存じますが」と自ら前置きして、その後続けてはっきりと相手に自分の意見を伝えるというケースでも使われます。

逆に考えれば、実は言いにくいことをどうしても相手にはっきりと伝えなければならない場合に、「はなはだ不躾であることは重々承知の上で申し上げるのですが~」と使ってみると良いでしょう。

本来礼儀を尽くすべき相手に向かって、やむを得ず取る自分の態度を指す言葉ですので、社内外を問わず使うことができますし、もちろん口語だけでなくメールや手紙でも使うことができます。

「不躾」を使った例文

ここでは、「不躾」を使った例文を紹介していきます。

聞きづらい質問をする時の例文

一般的によく使われるのは、「聞きづらい質問をする時」でしょう。

例文

はなはだ不躾とは存じますが、昨年の取引件数を教えていただけますでしょうか?

不躾ながらお尋ねします。これ以外にも何か不都合なことがおありなのではないですか?

急な頼み事をする時の例文

唐突感のある行動にも、不躾さを感じられることがあります。

本来ならもっと手順を踏むべきなのに「なぜこのタイミングで急に?」と相手が感じるような頼み事の場面などです。

例文

・お会いして早々に大変不躾ではございますが、ぜひお写真を撮らせていただけませんか?

・来月のセミナーをご担当いただけないでしょうか。本来でしたら昨年度中にご相談すべきところ、誠に不躾なお願いとなり恐縮でございます。

自分や他人の失礼な態度について述べる時の例文

また、自分や他者の態度について述べる時にも使うことができます。

例文

・このような不躾なお手紙を差し上げますこと、お許しください。

・昨日の彼の部長に対する発言は、少しあからさまで不躾だった。

「不躾」の言い換え表現

「不躾」と同じような意味を持つ類語をいくつか紹介します。

「失礼を承知で」

「不躾」の最も使いやすい言い換え表現です。

「失礼=礼儀作法がなっていない=不躾」であることを、相手に分かりやすく伝えられます。

相手にとって聞かれたくないことを、あえて聞かなければならないような場合に使うことが多い聞き方です。

例文

・恐れ入りますが、失礼を承知で収支状況についてお尋ねします。

「単刀直入」

「単刀直入」とは、「前置きなどを省いてすぐに本題に入ること、遠回しな言い方をしないで問題の核心をつくこと」です。

つまり手順を踏まずに「不躾」に聞くと、多くの場合「単刀直入」な聞き方になります。相手に対して少し強い態度に出ている印象です。

例文

単刀直入にお聞きします。それは在庫管理の甘さが原因だったのではないですか?

「率直に」

「率直」とは「正直に」ということですので、思っている意見をはっきり伝えるということです。

そこにはうそのない誠実さも感じられます。

例文

・私の意見を率直に申し上げると、今回のミスは、普段からの気の緩みがもたらしたものだと言えるのではないでしょうか?

「遠慮なく」

このことを言うと相手は傷つくかもしれないけれど、必要以上の気を使う(=遠慮する)ことなく、きちんと伝えるということもビジネスシーンでは必要になります。

例文

・あえて遠慮なく申し上げますが、今回のことに関しては、私共も大変苦慮しております。

「不躾」は思いの強さを伝える言葉でもある

いかがでしたか?

「不躾」には「躾が身に付いていない、礼儀作法をわきまえていない」つまり、「無作法・無礼」などの意味があることを紹介してきました。

言い換え表現で紹介したそれぞれの言い方は、普段あまり見聞きしない「不躾」と比べると、日常生活でもよく触れる言葉が多かったと思います。

だからこそ、ここぞという勝負時に「不躾」を使ってみると、「大変失礼ですが~」などと言うよりも、ずっとこちら側の覚悟や思いの強さを伝えることができるのではないでしょうか?

意味を正しく理解して言葉の引き出しを増やし、ぜひ学んだことをビジネスシーンなどでも活用してみてくださいね。

(松岡友子)

※画像はイメージです

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