「取り急ぎ」の意味とは? 「取り急ぎご連絡まで」は目上の人にはNG?
ビジネスメールでよく使われる「取り急ぎ」。とても便利な言葉ですが、使い方によっては、相手に失礼な印象を与えてしまうことも。特に目上の人に使う時は注意が必要です。今回は「取り急ぎ」の意味と使い方を北條久美子さんに教えてもらいました。
スピードが求められる今の時代だからこそ、「取り急ぎ」の連絡は非常に便利です。
しかし忘れてはならないのは、その後に詳細をしっかり連絡すること。自分本意にならず、相手がすぐに欲しい情報かどうかを見極めること。そして2度に渡り連絡すべきことかを吟味して、賢く「取り急ぎ」を活用しましょう。
「取り急ぎ」という言葉が持つ意味
取り急ぎとは、とりあえず、急いで、ひとまずという意味。
本来は丁寧に伝えるべき事柄を、まずは急いで連絡する際に用います。一刻も早く伝えたい、そんな時に使用する言葉です。
「取り急ぎ」の使い方
本来は目上の方への「報連相」は詳細に行いたいものですが、スピードも重視される昨今。まずは現状を理解してもらうために、「取り急ぎ」は非常に便利な言葉です。
目上の相手へ使う場合は言葉遣いに注意
目上の方への使い方については、悩む方も多いかもしれませんが、言葉遣いに注意すれば使用してもOK。
とはいえ、取引先や役職がかなり上の方へは、「取り急ぎご連絡まで」など言い切ってしまうような表現は失礼に当たることも。
対面で話す時以上に文章がどんな風に伝わるか「印象」を考える必要があります。
メールは簡潔にしてしまうと冷たい、素っ気ないといった印象を与えてしまいがちです。誤解が生じないよう、言葉遣いを丁寧にするなど配慮しましょう。
急いで伝えるべき内容かを吟味
また、「取り急ぎ」の連絡をする際に、その情報自体が相手に急いで知ってもらいたい内容かどうかを吟味して使用することも大切なポイントです。
上司が出かける直前など、どうしても急ぎで一報を入れたい時に、対面でのやり取りで活用するケースはありますが、基本、この「取り急ぎ」はメールで便利な表現。
メールを読んでもらえたのかと、メールを送信した相手が気をもむことがないよう、「取り急ぎ、メール拝受のご報告まで」など簡潔に要件を伝えたい時に非常に便利です。
「取り急ぎ」を使った例文
「取り急ぎ」を使った例文を、使用に適したシチュエーションを挙げて見ていきましょう。
まずは資料に目を通してもらいたい時
「取り急ぎ、最新のデータを送付させていただきます」
アップデートしたものを送付する際など、まずは資料に目を通してもらいたい場合などに適しています。
決定した日時を早急に伝えたい時
「A社へのプレゼンは8月4日となりました。取り急ぎ日程のご連絡まで」
決定した日時をまずは早急に伝えたい時などに使用します。忙しいプロジェクトメンバーの日程をどうしてもキープしたい! といった場合にまずは決定した日程のみ連絡をすることが重要です。
同様の内容も目上の方へ送る際には言葉遣いを以下のようにアレンジします。
「A社のプレゼンは8月4日となりました。取り急ぎ日程のみのご連絡で失礼いたします」
丁寧な表現にする配慮が必要です。
急いでお礼を伝えたい時
また、どうしても急いでお礼を伝えたいといった場合にも「取り急ぎ」が役立ちます。
「先ほどは素晴らしいお話を聴かせてくださり本当にありがとうございました。取り急ぎお礼まで」
タイムリーにお礼を伝えたい時など、最後に「取り急ぎ」をつけるケースもあります。
もう少し丁寧にお礼をお伝えしたい場合は「略儀ではございますが、メールにて御礼申し上げます」など「取り急ぎ」を上質な表現にするなど工夫しましょう。
お礼についは、本来は急いでするものではなく、丁寧に感想なども交えて伝えたいものです。どうしても急いでお礼を伝えたい場合は活用することもありますが、目上の方へのお礼は慎重に時間をかけて作成し、一度で完結させる方が望ましいです。
使用上の注意点
上記の通り、「取り急ぎご報告まで」は社内の同僚やプロジェクトメンバーヘは問題ありませんが、簡略化された表現とも言えるので、目上の方に伝える際には注意が必要です。
言い回しに配慮が必要
省略せずに、「まずはご報告申し上げます」などが適しています。
「取り急ぎ」は便利な言葉でありながら、とりあえず伝えておけばいいか、と安易に使用することも危険です。
追って連絡することを忘れずに
取り急ぎ伝えたのであれば、その詳細を追って丁寧に連絡することが必須です。
「取り急ぎ」の連絡はシンプルに分かりやすく伝え、その後の詳細連絡はきめ細やかにすることが重要です。
詳細の連絡がないと相手は「詳細はどうなっているだろう」「いつ連絡をくれるのだろう」と不安な気持ちになります。
取り急ぎの連絡をしたらあまり時間をおかずに詳細を伝える、これはセットだと覚えておいてください。
取り急ぎのメールを送るといったん落ち着いてしまい、詳細の連絡を忘れてしまうというケースも。
忙しい時こそ、とにかく日程を確保したい、データを送っておきたいなど急ぐ気持ちも分かりますが、本来は詳しい情報もセットでお伝えできることが理想です。
自分中心にならず、相手の気持ちや相手の知りたい情報は何かを常に考えて発信しましょう。
相手は二度開封しなければならないということも考えると、一度で済ますことができる内容であれば1通のメールで完了させたいものです。
スピーディーな対応は時に自己満足になってしまう可能性があることも理解しておくといいでしょう。
「取り急ぎ」の言い換え表現
「取り急ぎ」は「まずは」に言い換えが可能です。「まずは」にすることでより丁寧な印象を与えます。
「まずは、日程のご連絡のみで失礼いたします」
また、「いったん」に言い換えることもできます。
「いったん、資料を送付させていただきます」
どちらもその後に、詳細の連絡をすることに変わりありません。いったん送って安心しないようにしましょう。
「一応」や「とりあえず」などは、最終的に結果がどうなるか分からない時などに使用しますので、相手に多少の不安を与えるので気をつけましょう。
「取り急ぎ」を使う時は相手の気持ちを考えて
「取り急ぎ」は便利でありながら、使い方によっては、相手に誤解を与えかねない言葉であることを理解し、使う際には相手の気持ちを考えて使用しましょう。
ビジネスには常に相手がいることを前提に、お互い気持ちの良いコミュニケーションになるよう意識することが重要です。
変化が激しく、スピードを求められることも多いため「取り急ぎ」は頻繁に活用する言葉であることは事実です。
ですが、前述の通り、取り急ぎの要件を伝えたら、必ず追ってその詳細を連絡すること。そして、目上の方にはより丁寧な言い方ができないか工夫することを忘れないでください。
シンプルかつスピーディー、それでいて気配りができて感じが良い、そんなコミュニケーションを目指しましょう。
(北條久美子)
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