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メンターとは? その役割と良いメンターになる3つの心得

ぱぴこ

映画などで「メンター」という言葉を聞いたことがありませんか? 職場で後輩を指導する人のようなイメージがありますが、実際はどういった役割のことを指すのでしょうか? 外資系企業で働くコラムニストのぱぴこさんに、メンターの意味と良いメンターになるための心構えについて聞いてみました。

先日、あるネット上の掲示板で「メンターが必要なのでは」という話題が出ました。

これは、「30代中盤以降のキャリアを見据えた時に生まれる、迷いや悩みに対しての相談相手や指針となる生き方のモデルが欲しい」と言い換えられるかもしれません。

私が所属してきた会社には、名称の違いが多少あれど「メンター」という存在が制度として設定されていました。

仕事内容に対する相談とは別に、今後のキャリアやプライベートに関する相談相手としてメンターが存在する会社は意外と多いのではないでしょうか。

映画『マイインターン』のアン・ハサウェイとロバート・デ・ニーロの関係はまさしく、「メンターとメンティー」だったといえます。

そんな「メンター」ですが、キャリア上で考えると、若手~中堅時にメンターに指名されると「会社から認められた」感がありますよね。マネジメント(部下育成)スキルを身に付けるため、アラサーあたりで指名がくることも珍しくありません。

メンターとは?

1999年設立の日本メンター協会 の定義によると、メンターとは「人間的に信頼・尊敬でき、公私共に安心して相談できる人」とされています。なかなか壮大な定義です。

企業におけるメンターという点で範囲を限定すると、中途入社を含む新入社員を指導、サポートする先輩といえます。ここで、重要なのは「安心して相談できる」というところです。

つまり上司・部下という直接評価の関係ではなく、メンティー(指導される側)にとってメンターとは会社や仕事について広く相談できる相手ということになります。

プライベートの状況が仕事に与える影響は大きいものですが、なかなか話しづらい事柄でもあります。メンターはそういった「職務に影響する問題」を中心に、プライベートの話も含めてケアする立場といえるでしょう。

メンターとチューターの違い

メンターと似た役割を持つ存在として「チューター」があります。正直、言葉の定義を正確に使い分けている企業がどれだけあるのかは疑問ですが、定義上の違いでは、チューターは会社や業務に限定してアドバイスする存在のことを指します。

私は大学受験時にとある塾の塾生だったのですが、そこには大学生の「チューター」がいました。彼らは自らの受験勉強の経験を元にアドバイスしてくれる存在でした。人によってはプライベートな内容を相談することもあったかもしれませんが、基本的に「受験についてアドバイスをくれる人」という立ち位置だったといえます。

日本メンター協会の定義を再度引用すると、メンターは「公私ともに安心できる」という点がチューターとの違いであり、職場・職務に限定しない相談相手になることが理想とされています。

メンターと上司の役割の違い

では、メンターと上司にはどういった違いがあるのでしょうか。

メンターと上司の役割で明確に違うのが、「評価をするかしないか」です。その視点を持ちながら、役割の違いを見ていきましょう。

(1)メンターは評価者ではない

メンターは「仕事上の利害関係と無縁な相手から選ばれる」が鬼の鉄則です。

メンターの知恵や経験を頼って相談したい時に、その人が自分を「評価」する人間だったらどうでしょうか? 悩み相談なんて怖くてできません。

メンターの立場は、メンティーが相談するにあたって「脅威を感じない」ことが重要です。その意味で、メンターが評価者ではないということが上司の役割と大きく違います。

(2)管理・監督責任者ではない

(1)と近しい内容ですが、メンターが評価者ではないということは、つまり管理・監督責任者でもないということです。

もちろん「仕事を期日までにやる、そのためにどう進めていくかのアドバイスをする」という観点では上司もメンターも同じ視点を持ちますが、上司が管理するのは成果物であり結果です。

対して、メンターが見るのは結果に対するプロセスで、行動をどう改善するかなど、もっと内面に寄ったアドバイスをするのです。

(3)悩みや相談に対して助言をする

「悩み、困り事」といった課題が曖昧な状態の、しかし業務のボトルネックになるような事柄をシェアし、それに対しての指針を与えるのがメンターです。

上司に相談する場合は、ふわっとした「悩んでいるんです」という状態で話すことは推奨されず、「何が課題で、どうしてほしいのか」という要求を持って行く必要があります。

つまり、曖昧な状態で相談に乗ってもらえるのがメンター、対応方針の整理をしてから話を持って行くのが上司という違いがあります。

メンター制度におけるメリット

メンター制度は上手に取り入れれば大きなメリットがあります。

(1)職場への定着率が上がる

「人間関係」や「コミュニケーション」の問題は、転職理由上位にランクインしています。

このような問題が生じた時に、メンターに相談できる環境があると、1人で思い悩まずに済み、結果として職場への定着率が上がります。

(2)組織内のコミュニケーションが増える

メンターは別部署や別チームの人が指名されることも多いです。それによって、普段業務だけでは関係構築ができない他部署の人との関係性ができ、組織内のコミュニケーションが増えます。

(3)メンティーの成長が加速する

新入社員や中途社員は、横のつながりがなく、相談相手がいないことで孤立してしまいがちです。

しかし、メンターがいることで「相談相手」ができ、気後れすることなく質問できるため、結果としてメンティーの成長にも寄与します。

(4)職場への満足度が上がる

仕事そのものの面白さも重要ですが、働く環境が良いか悪いかは予想以上に「職場への満足度」にインパクトを与えます。

質問や相談ができる人がおり、その人との信頼関係ができることで組織に受け入れられているという安心感を得られます。人は、安心して成長していけると感じられる環境にいれば、職場への満足度が上がるのです。

(5)仕事の成果が出る

自分の成長を見てもらいながら働ける環境にいると、モチベーションを高く保つことができます。結果として、仕事の成果が出て評価を得やすくなるという好循環が生まれます

良いメンターになるには

では、実際に自分がメンターになった場合、どういったことに気を付ければ良いのでしょうか? 具体的な心構えについてお伝えします。

(1)命令・否定をしない

繰り返しになりますが、メンターは上司ではなく、評価者でもありません。あくまで対話によって、相手を理解し、メンティーにとってより良い行動を促すことが目的です。

そのためには「こうしろ、するべき」という命令口調や、「それは違う」という否定をせずに、相手が何を考えているのか知ることを優先しましょう。

(2)上下関係ではないことを意識する

メンターは、「自分がメンティーの課題を解決する」「アドバイスしてあげる」という感覚を時には手放すことも大事です。上から目線でアドバイスをするのではなく、メンティーに共感し、一緒に考えながら導いていくことを意識してください。

(3)相手を知る、という姿勢を崩さずに

メンターは経験をシェアするという点ではメンティーより知識などが深い立場にいます。ですが、自分のことを一方的に話すのではなく、相手がどんな人間でどうしていきたいのか? を理解するということを第一に考えましょう。

無理なく「どうしたらいいか」の問いを投げかけ、メンティーが自発的に答えにたどり着くように補佐するのです。

メンター制度は、メンター自身の成長にもつながる

アドバイスし過ぎても、放置し過ぎても人は育ちません。上司や先輩といった「管理・教育する」立場では、その人個人の成長よりも仕事の結果を優先せざるを得ない場面は出てきます。

しかし、メンターという立場であれば、その人の成長をどう補佐するか? という一点をメインに考えることができます。

メンター制度は決してメンティー側だけにメリットがあるわけではなく、メンター自身の成長にも大きく影響を与える制度です。

誰かの話を聞く、相談に乗る、その上でアドバイスをする……というのは、簡単なことではありません。

しかし、「完璧なメンターになろう」と思うのではなく、双方にとって最も心地良い関係を作るということを念頭において取り組んでみてください。今回は以上です。

(ぱぴこ)

※画像はイメージです

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