ルーチンワークとは? 取り組み方のコツや向いている人の特徴
ルーチンワークとは、手順が決まっている仕事のこと。日々の業務の中に一つはあり、「何となく煩わしくて苦手」と思っている人もいるのではないでしょうか? 今回はそんなルーチンワークの意味や取り組み方のコツ、向いている人の特徴などについて、キャリアカウンセラーの中谷充宏さんに解説してもらいました。
こんにちは、キャリアカウンセラーの中谷充宏です。
AIやIoT、RPAといった進化したテクノロジーが、ビジネスの分野にも活用されつつありますが、まだまだ人がやらなければならない「ルーチンワーク」の領域が多く残っています。
そこで今回は、「ルーチンワーク」について再考してみたいと思います。
「ルーチンワーク」とは?
「ルーチンワーク」とは、シンプルに言うと、「手順が決まりきっている日々の仕事」です。
例えば、営業事務ならば、朝出社したら会社に届いているメールを各担当に振り分ける、午前便の郵便物を収集して郵便局に持ち込む、などが分かりやすい事例でしょう。
また、事務や経理、人事といったバックオフィス部門における入力作業(顧客情報や仕訳、給与計算情報など)といったのもイメージしやすいのではないでしょうか?
この「ルーチンワーク」は、決まった作業手順が明確な定型業務ですので、マニュアル化しやすいのが特徴です。
そしてこのマニュアルを見ながらやれば誰でもできることが多いので、どうしても難易度が低く、軽く見られがち。
ただ、誰かがやらないと会社は回っていきませんし、軽視されているからといって、やらないで済むといったものでは絶対にありません。
ルーチンワークのメリットは?
それでは、まずは「ルーチンワーク」のメリットを解説していきましょう。
(1)誰がやっても一定のクオリティーを維持できる
そもそも決まりきった仕事ですので、個人の裁量や判断に頼ることがありません。
そのため、仮に能力が低かったり未熟だったりする社員であっても、仕事に慣れている他の社員と同じ成果を生み出すことができるのが、最大のメリットといえます。
(2)計画を立てやすく進捗が把握しやすい
事前に仕事量さえ把握できれば、それを処理するための稼働や時間が容易に算出できます。
そのため、大幅に予定が狂うといったことがなく、事前に立てた計画通りに仕事を進めることができます。
(3)社内教育の一環として効果的に機能する
まだ仕事に慣れていない新人や、異動になったばかりで経験の浅い社員でも、まずはこのルーチンワークからスタートすることによって、その部門の仕事を体得していくことができます。
マニュアルを渡しておけば、付きっきりで教える必要がないために、手間暇を取られずに済みます。
そして慣れて仕事ができるようになれば、自己肯定感や仕事へのモチベーションアップへとつながっていきます。
ルーチンワークのデメリットは?
次に「ルーチンワーク」のデメリットを解説していきます。
(1)仕事に飽きてモチベーションが低下する
着手した時は新鮮で緊張感もあっていいのですが、慣れてくると単純作業の繰り返しになりますので、どうしてもやる気や集中力が続かなくなってしまいます。
この場合の対処方法ですが、後述する「ゴールを設定する」のやり方で乗り切るのが有効です。
(2)慢心によるミス誘発の可能性が高まる
最初はマニュアルに沿って、着実にポイントを押さえながら、恐る恐る進めていても、慣れてくると慢心してしまい、手を抜きがちになって、ミスを誘発してしまうことがあります。
この場合の対処法も、後述する「ゴールを設定する」並びに、「その道のプロを極める気持ちで臨む」で克服しましょう。
(3)キャリア形成上の不安が高まる
「ルーチンワーク」だけでキャリアを積み上げていったとしても、テクノロジーの進化が目覚ましい昨今では、それがいきなり機械やロボットに取って代わる可能性もあります。
このような場合に備えて「ルーチンワーク」を受け身でこなすのではなく、「正確かつ迅速に進めるには、どうすれば良いか」という業務効率化の視点を常に持って、自主的に創意工夫に取り組み、成果やノウハウを残すことが肝心です。
ルーチンワークが向いている人の特徴
それでは次に「ルーチンワーク」が向いている人の特徴について、解説します。
(1)飽きずに黙々と継続できる
例えば、機械なら心がありませんから、何千回、何万回と同じことを繰り返しても、愚痴や不満の一つも言いません。
ただ、人には心がありますから、単純作業ばかりが続くと、「これから先ずっとこの仕事をしていくのか……」と、いくらお給与をもらっているといっても、心が折れてしまう人もいるでしょう。
なので、余計な感情を入れることなく、目の前の仕事を淡々と進めることができる人は適任でしょう。
(2)自分のペースで仕事を進めたい、進めることができる
急に新しい仕事が割り込んできた場合に、どうしたら良いのか混乱し、パニックになってしまうというような、変化を苦手とする人も多いと思います。
ですが一方で、こういった人は自分が当初決めた段取り通りに仕事を進めるのは大の得意という傾向があります。そうした人は、「ルーチンワーク」に向いています。
(3)裁量のある仕事が苦手
これは逆説的な話ですが、自ら判断したり決定したりして仕事を進めるのが苦手で、会社や上司から指示や命令をされた方がやりやすい、という人もいます。
こういった人は自ら考えたり行動したりするのが苦痛で、自分に与えられた仕事を着実に進めるのにやりがいを感じることができますので、こういった人も「ルーチンワーク」が向いていると言えます。
ルーチンワークと上手に付き合うコツ
例えば、弁当工場の生産ラインで、ひたすらおかずをトッピングするだけという、一日中「ルーチンワーク」に向き合う人もいます。
一方で、日常業務の一部だけ「ルーチンワーク」をしなければならない、という人もいるでしょう。
いずれにせよ、こういった「ルーチンワーク」は、どんな人の仕事の中にも存在します。
ただ、「私にはちょっと向いていないし、苦手かも」という人も少なくないでしょう。そこで「ルーチンワーク」をうまくこなすコツを伝授します。
(1)ゴールを設定する
「前回はこの期間でできたから、今回はもう少し早く終わらせる」とか、何らかのゴール設定をしてみましょう。
漫然とやるとどうしても飽きてしまいますが、達成感を得られることでやる気や集中力が維持できます。
また、「今月中にこれを終わらせる」といった大きめのゴールだと、どうしても中だるみしてしますから、例えば「午前中にここまで、午後にはここまで」と、ゴールを小さく刻んでクリアしていくやり方が、おすすめです。
(2)その道のプロを極める気持ちで臨む
定型作業の繰り返しのために、どうしても飽きたりつまらなくなったりと、感情によってクオリティーが左右されることも多くなります。
ただ、きちんとお給与をもらってやる「仕事」ですし、誰かがやらなければなりません。
そもそも「ルーチンワーク」だからと漫然にやるのはNGで、その仕事の意義や重要性を自分なりに整理し、業務効率化を図るなど、やるからにはその道のプロとして、真摯に臨むようにしましょう。
(3)習慣化してしまう
これは一部だけ「ルーチンワーク」に関わる人への対処法です。
例えば日報や週報の作成業務などは、「やらなければならないのは分かっているけれども、自分の中では優先順位も低いし、そもそも面倒」という位置付けだと、なかなか着手しようとしないで、後回しになりがちです。
そうならないための対策として、例えば週報を作成して提出するのならば、週末に一気にまとめてやるのではなく、前日の内容を翌日の朝一にやると決めて、毎日それを継続して習慣化してしまいましょう。
どんな仕事にも「ルーチンワーク」は存在する
例えば、店舗での商品陳列という仕事。これは「ルーチンワーク」に分類されますが、従業員の手で作業をした方が早いし正確で、コストもかかりません。
つまり、どんなにテクノロジーが進化しても、人がやるべき「ルーチンワーク」の領域は必ずあります。
どんな仕事においても、大なり小なり「ルーチンワーク」は存在します。その業務が、自分のチームや部署、ひいては会社が通常運転するための大事な下支えにもなっているのです。
今回を機に、「ルーチンワーク」との向き合い方を見直してみてはいかがでしょうか?
(中谷充宏)
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