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行間を読むとは? 相手の心情を読み取る力を養う方法

高見綾(心理カウンセラー)

「また今度こちらから声を掛けますね」。あなたは、この言葉をどう読み取りますか? このように「行間を読む」のは、とても難しいですよね。今回はそんな力を養う方法を、心理カウンセラーの高見綾さんに教えてもらいます。

「行間を読む」ということは、なかなか難しいものです。同僚などから「行間読めないよね」と言われて、どういう意味なのだろう? と戸惑った人もいるかもしれません。

そもそも行間を読むとはどういう意味で、仕事で行間が読める人とはどんな人なのでしょうか。また、そんな力を養う方法についても紹介します。

「行間を読む」の意味。「空気を読む」との違いは?

では、始めに「行間を読む」の意味や、使われ方について詳しく見ていきましょう。

「行間を読む」とは?

行間を読むとは、「文章には直接表現されていない筆者の真意をくみ取ること」をいいます(出典:『デジタル大辞泉(小学館)』)。

一般的には、文章だけではなく会話においても、「相手が言葉では明確に表現していないけれど、伝えたいと思っている意図をくみ取る」という意味でも使われます。

例えば、気になる相手をメールで食事に誘ったとします。すると、「お誘いいただきありがとうございます。せっかくなのですが〇日は先約があり難しいです」と返ってきました。

「それならいつがご都合よろしいですか?」と聞くと、「当分難しいので、時間ができたらこちらから連絡しますね」と返信があったとします。

ここから行間を読むと、相手には「その気がない」ということになるかもしれません。このように、相手の気持ちを察することをいいます。

「空気を読む」とは違うの?

類語として「空気を読む」がありますが、これは「その場の雰囲気から状況を推察する。特に、その場で自分が何をすべきか、すべきでないかや、相手のして欲しいこと、して欲しくないことを憶測して判断すること」を意味します(出典:『デジタル大辞泉(小学館)』)。

つまり「空気を読む」は、その場の状況や雰囲気・相手の表情などが情報源になり、「行間を読む」は、文章や言葉・会話が情報源になります。

仕事で「行間を読む力」がある人の特徴

「行間を読む」の意味は分かりましたが、実際に「行間を読む力」がある人はどんな人なのでしょうか? 仕事上で見られる特徴を紹介します。

(1)少ない指示でも動くことができる

上司や先輩がざっくりとした指示を出したとしても、何を求められているのかを的確に把握して、期待通りもしくはそれ以上の仕事をします。

こういった人は、自らの経験則などから行間を読み、少ない情報でも業務の全体像を把握することができます。

(2)気配り上手

視野が広く観察力に優れているので、困っていそうな人がいればすぐに気付くことができます。また、気付くだけではなく、「何か力になれることはありますか?」と声を掛けるなど実際に行動できる点も特徴です。

(3)周りの人の特徴をつかんでいる

例えば、「あの上司は、せっかちな人だから何でも早め早めに報告しよう」とか、「あの後輩は、一人で抱え込む癖があるからまめに声を掛けよう」など、周りの人の特徴をつかんでその人に合った対応をしていることが多いです。

(4)一歩先を予測できる

「自分がこう言ったら、相手はどう返してくるだろう」など、常に一歩先を予測しながら仕事をしています。相手の出方に応じて、自分の対応を複数考えておくなど、準備には時間をかけます。

(5)相手のニーズがくみ取れる

商談相手の言葉を文字通りに受け取るのではなく、言葉にならない隠れたニーズをくみ取ることができます。そのため、よりニーズに合った提案をすることができ、お客様の信頼を得ていきます。

行間を読むことのメリット・デメリット

メリットしかないように見える「行間を読む力」ですが、デメリットもあるのでしょうか? 確認していきましょう。

メリット

(1)応用力が身に付く

言葉を文字通りに受け取ることがないので、物事の表面的なことに振り回されなくなります。相手の真意をくみ取ることができるので、さまざまな場面で応用力が身に付き、臨機応変に対応できます。

(2)信頼される

相手の真意をしっかりとくみ取ることができますし、一言えば十分かるので、「この人は話が通じる」と思われて信頼されます。仕事もたくさん任されるようになるでしょう。

(3)人間関係が円滑に進められる

相手の性格や意図に沿った言葉選びができるので、コミュニケーションを円滑に進められます。よって、人間関係でぶつかることも減り、対人トラブルは比較的少ないでしょう。

デメリット

(1)相手の真意を間違えて解釈する可能性がある

自分では行間を読んだつもりでも、しょせん他人ですので、相手の伝えたいこととズレた受け取り方をしてしまうことがあります。

特に仕事では、間違って解釈したことが原因でトラブルに発展することもありますので、言葉で確認することを怠ってはいけません。

(2)萎縮してしまう恐れがある

周りの意向を気にして合わせてばかりいると、自分の気持ちが後回しになってしまったり、萎縮して自分の意見を言えなくなってしまったりする恐れがあります。

(3)察し過ぎて疲れる

行間を読めるのは悪いことではありませんが、常に相手の気持ちを察して行動しなければいけないと考えてしまうと、疲れてしまいます。

行間を読む力を養う方法

一見難しそうな行間を読む力ですが、日々の心掛けで養うことができます。

(1)暗黙のルールを把握する

会社でも趣味の団体でも、そのコミュニティ内における暗黙のルールというものが存在します。

暗黙のルールは、あえて口に出すことはないけれど、みんなが共通して持っている価値観や文化のようなもの。知っておくことで行間を読む際に役立ちます。

そのコミュニティに属してすぐの時は分からないかもしれません。その場合は、ベテランの人に教えてもらったり、少し時間をかけて周りを観察したりすることで把握していきましょう。

(2)相手の性格をよく理解する

どんな考え方をするのか、思いをはっきり言う人なのか、それとも遠慮がちなのかなど、相手がどんな人なのか興味を持つといいですね。仕事では、直属の上司や後輩などメインで関わる人たちの性格くらいは把握しておくと役に立ちます。

また、行間を読む時は、先入観や思い込みが混じらないよう、フラットな目線で見ることが大切です。

(3)仕事の本質を理解する

行間を読むためには、その仕事の目的は何か、交渉ならどこに落としどころを持っていくかなど、本質を理解しておく必要があります。

表面的なことだけにとらわれず、何が一番大切なのかを考える視点が、行間を読む際にも役立ちます。

(4)周りの人に確認する

相手の真意が分からなかった時や間違えて解釈してしまった時は、ちゃんと答え合わせをしておきましょう。周りの信頼できる人に、「なぜあの言葉が、そういう解釈になるのか」などを確認しておくと今後の学びにつながります。

(5)小説や漫画を読む

登場人物の心理描写が詳しく描かれている、小説や漫画をたくさん読むのもおすすめです。「登場人物はどういう気持ちなのか?」に注目して読み進めると、想像力が鍛えられます。

また、さまざまな登場人物に出会って、自分の常識を良い意味で壊し新しい考え方を取り入れていくことが、総合的に行間を読む力を高めることになります。

身近なコミュニティから始めよう

行間を読むのはなかなか難しいものです。自分とは違うタイプの人とたくさん出会い、新しい考え方を取り入れながら想像力を身に付けていくことが必要なので、焦らずコツコツ取り組んでみるといいかもしれません。

できることからで構いません。まずは、自分が所属するコミュニティの暗黙のルールを把握してみるのはどうでしょうか?

(高見綾)

※画像はイメージです

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