ロジカルシンキングとは何か? 簡単に身に付く3つの方法
仕事をする上でロジカルシンキングができると良いと聞いたことがあるものの、身に付けるのは難しそう……。そんな人のために、多くのキャリア相談を受けている人気コラムニストのトイアンナさんが、ロジカルシンキングを簡単に身に付けられる方法を教えてくれました。
こんにちは、イギリスに計6年住んでいたトイアンナです。
実は、「ロジカルシンキング」という単語を英語圏で聞くことはあまりありません。似た言葉はありますが、ロジカルシンキングはあくまでコンサル業界などで使われる専門用語で、一般的な用語ではないのです。
日本でロジカルシンキングがもてはやされているのは「欧米人=論理的」という誤解から来ているのかもしれません。おそらくロジカルに会話できる人は、欧米人でもトップエリートのごく一部です。
と、いうことは……。ロジカルシンキングは身に付けるだけで、欧米のエリート層と会話が成立するくらいのスキルなわけです。そんな高いスキルである、ロジカルシンキングについて、今回は解説していきます。
ロジカルシンキングとは何か
ロジカルシンキングを簡単に説明すると「筋が通った説明の仕方」と定義されます。ある説明をする際の、相手が納得するような客観的で筋の通った話し方のアプローチ、と思ってください。
ロジカルシンキングは「論理学」という学問分野から由来するものと、コンサル業界で広く採用されているものの2つに分かれています。
そして、会社の仕事で使われるロジカルシンキングはコンサル由来のものが多いため、ここでは後者を説明していきます。
コンサル業界で広く使われるロジカルシンキングは、「考え方の枠組み(フレームワーク)」が決まっています。そのため、広く深く学ばねばならない論理学を始めるよりは、簡単に手を付けられるかもしれません。
ロジカルシンキングがなぜ必要なのか? 仕事にどう役に立つ?
なぜ、世界のエリート層が集まるとされるコンサル業界では、ロジカルシンキングを採用しているのでしょうか? その理由は3つあります。
(1)答えの無い問いの筋道を作れる
例えば「来年までに会社の売上を2倍にしたい」と言われても、ロジカルシンキングが無ければ、何から手を付けたらいいのか分からず、アイディア勝負になってしまいます。
しかし、ロジカルシンキングがあれば「まずAを考えて、次にBでアイディアを出して、Cで絞り込めばいい」と流れがつかめるので、より成果に近い戦略を選べます。
(2)考えを正確に周りへ伝えられる
アイディアを思いついただけでは、会社の組織は動きません。分かりやすい言葉で、誰でも「そうだね」と言いたくなる流れで相手へ説明するスキルも、ロジカルシンキングで身に付きます。
企業の頭脳として「代わりに考える」仕事を請け負うのがコンサルタントの業務。考えたことをプレゼンし、顧客となる会社を説得するためにはロジカルシンキングが必要なのです。
(3)人と建設的に仕事ができる
ロジカルシンキングは、考え方の流れを決めるもの。最初にどう考えるか順番が決まっていると、チームともめづらくなります。
「まず、Aについて合意を取ろう。それができたらBを考えて、Cをやろう。Cができたら上司に持っていこう」と、流れを決められるので、感情的な議論や、「やっぱり別の案にしたい」「そもそもこの議論、必要?」など、プロジェクト途中のどんでん返しを防げます。
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簡単に身に付く3つのトレーニング方法
ロジカルシンキングを身に付けたいなら、照屋華子・岡田恵子著『ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル―』を読むのが一番良いのですが、コンサルタント1年生が読む本なので簡単とはいえません。
そこで、もう少し簡単に取り組めるロジカルシンキングの初歩を3つご紹介します。
(1)何事にも意見を持つよう意識してみる
ロジカルシンキングとは「論理的に一貫して、相手へ思いを伝えるスキル」です。そのため、自分に意見が無ければ、そもそもロジカルシンキングの始まりようがありません。
ロジカルシンキングを始めるなら、まずは何事にも意見を持ってください。
【意見を持つための具体例】
・今日のニュースから1つを選んで、意見を自由に持つ。
・人から受けた相談に「どっちでもいい」以外の答えを出す。
・今日の服、香水、コスメ、ご飯を「自分の意思で選ぶ」。
まずは、自分の人生に意見を持つこと。全てはそこからです。
(2)意見に対して理由を説明する癖を付ける
普段から意見を持てたら、次のステップは「理由付け」です。まずは、論理的かどうかを忘れてもいいので、意見の理由を説明する癖を付けましょう。
【理由付けの例】
・ナポリタンが食べたいのは最近トマトソースを食べていなくて恋しいから。
・最近「彼氏欲しい」とつぶやくのは仕事から逃避したいから。
・ふと親にLINEしたくなったのはそろそろお盆だから。
といった具合です。とにかく「意見には理由を付ける」ことを習慣づけます。なんとなく、で流すのをやめましょう。慣れないうちは、SNSに毎日1つ「意見+理由」を投稿するのもいいですね。
(3)意見の「説得力」を上げる方法を考える
意見に理由が付けられるようになったら、最後に「これを見た半分以上の人が納得するにはどう説明すればいいだろう?」と考えてみます。ここからが、ロジカルシンキングです。
【説得力を高める方法】
・アンケート調査をネットで探して、自分の意見と同じ意見の人がたくさんいるというデータを出す。
・周りの人にヒアリングして「自分の周りにはこんな人が多い」という情報を集める。国の統計よりは客観的では無いけれど、「自分と似た集団には同じ意見が多い」と言える。
・自分の意見と同じ意見を持っている、専門家を探す。自分より深くその分野を知っている人が同じ意見なら、説得力はある程度増すはず。
これらは、ロジカルシンキングの第一歩。
ロジカルシンキングには「MECE」「SWOT」など多数のフレームワーク(考え方)がありますが、最初にこういう単語を勉強すると、専門用語に振り回されて終わります。
ロジカルシンキングが生まれた本来の目的である「一貫した説明で相手を説得するスキル」を磨くよう意識しましょう。
ロジカルシンキングを身に付けることに焦らなくても良い
ここまで「ロジカルシンキングとは何か」について、最初のステップをご案内しました。最近は簡単に始められるテキストも増えてきたので、怖がらずにロジカルシンキングを始めていただきたいと思います。
そして最後に、ロジカルシンキングができなくても死にません。しょせん、ロジカルシンキングは世界のエリート層が使っている専門スキル。世界の人の大半は、これからもロジカルシンキングを使わず生きていくことでしょう。
ですから、できなくても焦らないで。ロジカルではない人には、感性という強みがあります。そして感性は、ロジカルシンキングと同様に重宝されるべきスキルだと、私は思うのです。
(トイアンナ)
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