リーダーの役割とは。周りから評価されるリーダーの条件
仕事を長く続けていると、リーダーとしての役割を求められることがあります。そもそもリーダーとは何をすればいいのでしょうか? 周りから優れたリーダーだと思われるために気を付けることとは? 多くの人からキャリア相談を受けるコラムニスト・トイアンナさんに、リーダーの役割について伺ってみました。
「リーダー」として、プロジェクトに配置された皆さん、また今後リーダーになる皆さんへ。私は常々、リーダーという言葉が、過大評価されているように感じています。
「いざという時に頼れる姉御」。
「何でも相談できる相手」。
「仕事の全責任を負う人間」。
いやいや、そんなリーダーそういませんって。だって、大半は会社員じゃないですか。魔王と戦う勇者じゃないんだから。
もっと肩の力を抜きつつ、職場で評価されるリーダーになるポイントをお伝えします。
リーダーの役割とは。リーダーは何のために必要?
そもそも、なぜリーダーは必要なのでしょうか。その役割をいくつか挙げてみます。
(1)リーダーはプロジェクトを前に進める役
仕事をしていると、良いアイディアが出て「最高!」と褒め合っているうちに脱線して……と、脇道に進みがち。
リーダーはそこで「そもそもの課題って何だったっけ?」と議論を前に進める仕事をします。リーダー不足の職場では、プロジェクトが道に迷うのです。
(2)リーダーはお偉いさんと部下の調整役
どんなに会社で偉くなっても「頂点」は無いものです。たとえ社長になったところで、利害関係者には頭が上がりません。
そこで、リーダーとは現場とお偉いさんの間をうまく調整します。リーダーシップが無い人がこの役割に就くと、上司たちのイエスマンになって部下の離職率アップに貢献してしまうでしょう。
(3)リーダーはチームの「今不足している役割」を担う人
リーダーの仕事とは「オラオラ!」と無理やりプロジェクトを前に進めることではありません。プロジェクトを前に進めるために「今何が足りていないか」に目を配り、不足している役割を担う人です。
例えば「あれ、直近の議事録がメールで届かないな。そうか、議事録担当の〇〇さん、今、手一杯なんだった。じゃあ、私が担当を変わろう」と、フォローしてプロジェクトを円滑に進める人物。これがリーダーです。
リーダーに必要なスキル・条件
リーダーにはどういったスキルが求められるのでしょうか? いくつか挙げてみます。
(1)コミュニケーション能力
集団で行動する際にメンバー同士が協調して業務を進められるようにするのもリーダーの役割です。その際に求められるのはコミュニケーション能力。
メンバーと適切な距離感・良い人間関係を維持する力が必要となります。
また、他の部署の人たちとの交渉を行う必要もでてくるため、円滑に意思疎通ができることは大事な要素の1つです。
(2)判断力
チームの方向性や方針を決めるなど、さまざまな場面で判断する必要が出てくるため、リーダーには判断力が必要になってきます。もちろん、常に正解を導き出せるわけではないため、間違えたと気付いた時には自分の行った判断を覆す柔軟性も必要です。
新米リーダーが突き当たる3つの課題
リーダーには誰もがなれますが、最初は皆同じような課題にぶつかるもの。そこで、新米リーダーがぶつかる、典型的な3つの課題をご紹介します。
(1)メンバーに任せられず全部自分で背負いパンクする
新米リーダー「あるある」は、メンバーに仕事を任せられず、自分で背負い過ぎてパンクすること。チームの中には新卒1年目やプロジェクト未経験者など、成長をじっくり待たねばならない人がいます。
新米リーダーはここで「私がやるね」と巻き取り、プレイヤーになってしまうのです。最初はどうにか回りますが、いつか(肉体的に)倒れる日が来ます。
(2)自分の成果と比較して怒り、チームのモチベーションを下げる
リーダーは大抵、職場で業務経験が最も長い人が担当します。ですから、他のメンバーは自分よりできなくて当たり前なのです。
ですが、新米リーダーは「何で私がやるよりこんなに下手なの?」と怒ってしまいます。そして、部下が落ち込んだり、モチベーションを下げて離職してしまったりする原因を作ります。
(3)部下の味方をし過ぎて経営陣にたてつく
リーダーの難しさは「部下の味方」であり過ぎてもいけないところです。部下が会社の理不尽に怒ろうとも、その理不尽なルールは「何らかの合理的な背景があって会社に生まれた」可能性が高いものです。
そこで部下の味方になり経営陣にたてつけば、待っている未来は「リーダーからの降格」だけとなります。
評価されるリーダーになるための心構えと行動
では、難しい立ち位置にあるリーダーが周りから評価される人材になるには、職場でどう行動すべきでしょうか。
3つの心構え
以下は、どういった心構えでいればいいかについてお伝えします。
(1)教えていないことでチームが失敗したら「自分のせい」と考える
グループ内で、予想外のことが起きたとします。それは、事前にメンバーに向けて「やらないで」と伝えていたことでしょうか?
もし教えていないことでミスが起きたなら、それは「伝えなかった自分のせい」です。分かるはずだ、常識だろう……と思わず、自分の指導不足を振り返りましょう。
(2)完璧なリーダーはいない、と先人に学ぶ
この世に完璧なリーダーはいません。世界のトップ企業で活躍するリーダーも、過去に部下と山ほどの確執や、もめ事を起こしています。
ですから「リーダー失格だ」と思わなくても大丈夫。プレイヤーとしては熟練していても、自分はリーダーとしてまだ新米。これから徐々に良いリーダーになればいい、と考えてみてください。
(3)1度で覚える人はいない、と知る
たとえ1度教えても、それで覚える人は全体の中で10%程度の逸材です。普通は教えたことをミスして、それから学習して……と、2~3回のミスから学ぶもの。
「これ、前にも言ったでしょ」と怒らないように。自分だって何度もミスをしてきたはずです。
3つの行動
心構えの他に、行動ではどういったことを気を付ければ良いでしょうか。
(1)プロジェクトを進める環境に不足している役を探す
このプロジェクトを進める環境に、不足しているのは「どんな役回りだ?」と考え、その不足している役を担いましょう。
そうすると現場では「助けてくれる優しいリーダー」として映りますし、プロジェクトのミスも防げます。
(2)人それぞれに違う強みを見出し、褒める
人は弱みを克服するより、強みを伸ばした方がプロジェクトを上手に回せます。うっかり者に緻密な計算をさせたり、慎重派に大胆な決断を迫る仕事を任せたりするようなことは、できるだけ避けて配置してください。
そして、強みを発揮できたメンバーを意図的に褒めましょう。そうすると、チーム全体のモチベーションが上がります。
(3)失敗の報告を褒める
プロジェクトリーダーとして一番恐れるべきことは「失敗の隠蔽」です。失敗を隠したくなるのは、怒られるのが怖いから。ですから逆に、失敗を報告したら褒めてください。
トラブルの報告はヒヤリとしますが、隠されて後から時限爆弾のように見つかるより、100倍マシです。

あなたにはリーダーシップがある? 診断で「リーダーに向いている度」を詳しくチェックします。
先輩に相談しながら「リーダー」として育っていこう
リーダーになるのは、負荷の高い変化です。
「イケてるプレイヤー」「イケてるリーダー」には本来、職種転換ほどの違いがあります。しかし、現場ではプレイヤーとして成熟すると、そのままリーダーにスライドすることがあります。あなたは今、転職して全く異なるビジネススキルを求められているようなもの。
ですから、できないことを責めないでください。あなたはリーダーとしての人生が始まったばかりなのです。これから優れたリーダーになるため、共に頑張っていきましょう。
(トイアンナ)
※画像はイメージです