迎え舌とはどういうもの? ついやってしまう原因&やめるためのトレーニング
食事をしているとき、気が付いたら食べ物を舌でキャッチしていることはありませんか? これは「迎え舌」といい、マナーとしては良くないもの。無意識にしている人も多いという迎え舌の直し方を、マナーアドバイザーの松本繁美さんにお伺いしました。
「クチャクチャ音を立てて食べる」「犬食い(顔を皿にくっつけて食べる)」「口いっぱい頬張っている」など、食事の時にびっくりする食べ方の人がいます。
一度、発見してしまうと、その行儀の悪さに他のところまで嫌いになってしまったという経験はありませんか?
とても良い人格の持ち主なのは分かっていても、嫌いになる要素になりえるのが「食べ方の悪さ」です。
その食べ方の中でも、今回は「迎え舌」について解説します。
「迎え舌」が癖になってしまっている人には直す方法を伝授しますので、マナー良く食べることができるように努力しましょう。
迎え舌とは? マナー違反なの?
迎え舌とは、文字通り、舌が食べ物を「迎え」にいってしまうことです。食べ物を口に運ぶとき、口を開け、長く出した舌で食べ物を受け止めるしぐさを指して言います。
舌を出して食べる姿は、周りから見て気持ちの良いものではありません。下品なイメージや、汚らしい行為として映り、行儀が悪いとみなされるのです。
「迎え舌」についての周りの印象とは?
マナー違反であることが分かった迎え舌ですが、周りの人からは、行儀が悪い・下品に見える・育ちが悪いと思われるといった印象を持たれることが多いようです。
詳しく見ていきましょう。
(1)行儀が悪い人だと思われる
迎え舌がいけないことを知らない、無知で行儀の悪い人だと思われるでしょう。迎え舌に限らず、食事のマナーは大切です。もしかすると生理的な嫌悪感を持たれてしまうかもしれません。
(2)下品に見える
カトラリーを上手に使いこなし、和食のときの箸の使い方も満点。なのに、迎え舌では品が悪いことこの上ありません。大口を開けて、舌をべろりと出す姿はどう見ても上品に見えないのです。
(3)育ちが悪いと見られる
そもそも、食事のマナーは親が教えることという印象があります。大きくなるまでに迎え舌を直せなかったということは、親のしつけが悪かったと思われることも。
親も行儀に無頓着であったということは、育ちが悪いと思われても仕方ないことなのかもしれません。
(4)子どもっぽく見られる
迎え舌で食べるしぐさは子どもっぽくも感じ取れます。それを勘違いして、かわいく見られると思っている人も中にはいるようです。
子どもであればかわいいかもしれませんが、大人のぺろりと出した舌を見て、いい気持ちがする人はいないと思った方が良いでしょう。
(5)醜い表情に見える
どんな美人でも、大口を開け、舌を出して食べ物を食べているようでは食事相手が幻滅してします。そもそも人前で、大口を開けること自体、表情は醜くなります。
大口を開けても良いのはお腹の底から笑うときぐらいではないでしょうか。
迎え舌になる原因
迎え舌になる原因は何でしょう。さまざまな原因が思い当たります。また、本人に自覚がないのも直らない原因かもしれません。
(1)親のしつけが悪かった
幼少期に食べ物を受け止めようとして、まず舌が出てしまうのはよくあることです。これを、親が見逃さずにしつけるかが大きなポイントです。
親自身も迎え舌の習慣が直っていなかったり、悪いしぐさだと認識していないケースも多々あります。
(2)口周りや舌の筋力が弱い
顎の筋力が弱く噛む力が無いと、食べ物を受け止める力も弱くなり、自然に舌が出てしまうようになります。
迎え舌になるのは、口の筋力が弱いせいかもしれません。
(3)ポカンと口を開けていることが普段から多い
無意識のうちに、ポカンと口を開けていることを指摘されることが多い人も要注意です。何も考えていない状態のときは、その人にとっての自然な姿が出てしまいます。
言い方を変えれば、口に緊張感がない人は迎え舌になっている人が多いのです。
(4)一口のサイズが大きい
一口のサイズは人によって異なりますが、大きな口を開けなくては食べきれないほどの一口サイズは、思わず舌も受け止めるために出てしまうものです。
(5)前歯で噛んで受け止めるという意識が無い
食べ物を口に入れるときに、本来は舌でキャッチするのではなく、前歯で噛んで受け止めます。その意識が無い場合、舌で受け止めるようになるのです。
(6)食事のとき、顔自体が下向きか上向きになっている
食べるときに顔が下向きになっていて顎を引いているようなスタイルの人は、食べ物をこぼさないようにと自然に舌が出るようです。
反対にやや上向きになっている人も、顔全体で食べ物を受け止めようと意識するのか、舌がサポートするように出てしまうこともあるようです。
(7)こぼしたくないという深層心理
食べ物をこぼしたくないという気持ちは誰しもあります。この深層心理が作用して、何とかこぼさずに口に入れようと舌にまで応援させようとしているのかもしれません。
迎え舌をやめる方法
子どものころ、親が直してくれなかったから手遅れ……などと、諦める必要はありません。
本人の努力で迎え舌は直すことができます。方法をいくつかご紹介しますので、マスターして美しい食べ方を身に付けてください。
(1)姿勢良く食事をする。
前述のように顔が下を向いたり、上を向いたりして食事をしているのは姿勢にも関係があります。
迎え舌を直すまで、食事のときは姿勢を正し、ある程度、緊張しましょう。上半身は真っすぐに、猫背にならないようにしましょう。
(2)食べ物を前歯で受け止める
食べ物を口に入れたとき最初は舌でなく前歯で受け止めることだと、認識を変えることが重要です。前歯を意識し過ぎて、顎がぐっと前に出ても困りますが、まずは一口、一口、前歯で受け取る訓練をしましょう。
(3)一口の分量を考える
一口の分量が多すぎてはきれいに食べることができません。人間は口にいれたものはこぼさず全部しっかりと受け止めようと自然に思うものなので、まずは口からはみ出さない適量を考えましょう。
(4)食べる姿を自撮りする
自分が食べるところを、動画で自撮りしてみましょう。そして、自分の食べ方がどのようなメカニズムになっているかを分析します。客観的に自分の食べ方を見つめれば、改善点も分かりますよ。
(5)姿見や卓上鏡と向き合って食事する
一人暮らしの人は、誰も注意してくれないのと、リラックスし過ぎていることが多く、どんどん行儀が悪くなる傾向にあります。
なので、自宅での食事は、鏡を前に置いて、それを見ながら食べてみましょう。自撮りのように、迎え舌の改善点が分かるだけでなく、他の行儀もとても良くなります。
(6)高級レストランに行く機会を増やす
食事のマナーを語るときに必ず提案するのが、少し自分にはハードルが高いと思うお店に行くことです。高級レストランのお客は、おしなべてマナーが良い人が多いといえます。
上品で行儀の良い人が多く、給仕の人にまで気を使うようなシーンを数多く経験することによって、迎え舌だけでなく、食事のしぐさも洗練されます。
食事を楽しむためにも、マナーを身に付けて
性格もいいし、身なりもいいのに、食事だけは一緒にしたくない人といえば、それはマナーの悪い人です。
テーブルマナーや、しぐさはその人の品位につながります。お店だけでなく、お弁当やファーストフードを食べる姿でさえ、美しく食べることができる人はあらゆる意味で美人だといえるでしょう。
食事を通して、素敵な人に出会えるチャンスを増やすためにも、ぜひ頑張って食べ方美人になってほしいと思います。
(松本繁美)
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