お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

フレックスタイム制とは。メリットとデメリットある!

藤井佐和子(キャリアアドバイザー)

「フレックスタイム制」名前は聞いたことあれど、くわしくはわからない人も多いのでは? フレックスタイム制とは何か、メリット・デメリットにはどんなことがあるのか。キャリアアドバイザーの藤井佐和子さんにくわしく教えてもらいました。

フレックスタイム制は、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を自ら決めることによって、生活と業務との調和を図りながら効率的に働くことができる制度です。

多様化する働き方に合わせて使えるこの制度ですが、働き続けるためにも柔軟にそのときの自分の状況に合わせて活用するにはどうしたらよいのでしょうか。

フレックスタイム制とは

まずはフレックスタイム制の概要について、簡単に触れてみたいと思います。

フレックスタイム制とは

フレックスタイム制とは、一定の期間、あらかじめ定めた総労働時間の範囲内で、日々の始業・終業時刻、労働時間を労働者自らが決めることのできる制度です。

それによって、労働者は仕事と生活の調和を図りながら効率的に働くことができます。

コアタイムとフレキシブルタイムって?

「コアタイム」とは、会社が定めた、必ず勤務しなくてはならない時間帯のことです。

そして、「フレキシブル」とは、いつ出社してもよい時間帯のことです。

フレキシブルタイムやコアタイムは必ずしも設けなければならないものではありません。 コアタイムを設定しないことによって、労働者が働く日も自由に選択できるようにすることも可能です。

また、フレキシブルタイムの途中で中抜けするなどといったことも可能です。

※厚生労働省働き方改革関連法解説より

残業代は? フレックスタイム制には残業はない?

残業も残業代もあります。

フレックスタイム制における残業の考え方ですが、もしも1日12時間働いたとしても、週や月単位で設けられたトータルの総労働時間内であれば、残業のカウントにはなりません。

トータル時間を月で設けるか、週で設けるかは会社の規定によりますが、この総労働時間を超えた場合を残業時間とみなすのです。

残業時間とみなされた分は残業代が支払われます。

逆に、総労働時間に足りない労働時間は翌月に繰り越したり、不足時間の賃金をカットされることもあります。

フレックスタイム制は裁量労働制とどう違う?

裁量労働制とは、あらかじめ想定した労働時間に賃金を払う「みなし労働時間制度」の一種です。

一般的には労働基準法に基づく法定労働時間内で働き、実際の労働時間が法定を超えると、残業代が支払われます。

一方、この制度の対象者は、実際に働いた時間に関係なく、みなし労働時間分を働いたことになり、基本的に残業代は出ません。ただし、深夜手当や休日手当は出ます。

対象となるのは、「専門業務型」と「企画業務型」の2種類

専門型はデザイナーや弁護士などが対象、企画型は企業の本社などで企画立案といった業務に従事している人が対象となります。

※日本経済新聞2017年8月2日朝刊参照

フレックスタイム制の清算期間が3カ月に改正

2019年4月、働き方改革の一環としてフレックスタイム制の法改正が行われ、労働時間の調整を行うことのできる期間が延長されました。

これによってより柔軟な働き方の選択が可能となったのです。

これまでのフレックスタイム制は、清算期間の上限が「1カ月」までとされていました。そのため労働者は、1カ月の中で生活に合わせた労働時間の調整を行うことはできましたが、1カ月を超えた調整をすることはできませんでした。

今回の法改正によって、清算期間の上限が「3カ月」に延長され、月をまたいだ労働時間の調整が可能になりました。

たとえばこんなことができるようになります。小学校のお子さんがいる方は、夏休みなどの長期休み中は日中長時間、学童などに預ける必要がありますよね。しかし、6~8月の3カ月で清算可能になると、6月に多めに働けば、8月に連日早く帰るなんてこともできるようになります。

より個人の事情に合わせてフレキシブルに働けるようになったのです。

※厚生労働省働き方改革関連法解説より

フレックスタイム制のメリット・デメリット

では、フレックスタイム制は働く人にとってどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

フレックスタイム制のメリット

子育て中の人が働きやすい

子育てしていると、子どもの体調や行事に合わせたフレキシブルな時間の対応が必要となってきます。

また、共働きの場合、夫婦ともにフレックスタイム制を活用していれば、 保育園の送り迎えを日替わりで分担する、なんてこともできます。

日常のルーティンとして活用することもできますが、子どもが夏休みのとき、たまにはゆっくり子どもといる時間を増やしたいから、といった理由で制度を活用されている方もいらっしゃいます。

通勤ラッシュが避けられる

人混みが苦手、体調が悪いなど、リラックスして出社退社したい場合、この制度を使うことで、時間をずらすことが可能になります。

午後からハードなプレゼンテーションがあるので、通勤ラッシュを避けてストレスなく挑みたい、妊娠中のため、極力通勤ラッシュは避けたいなど、ストレスなく出社するためにも有効です。

病院に通院しやすい

大きな病気ではないけれど、ちょっと病院で診てもらってから出社したい、通院中で病院の予約が平日の午前か夕方のほうが取得しやすいから、といった事情があっても対応できます。

特に近年増えている、不妊治療中の女性にとって、フレックスタイム制で働く恩恵は大きいです。

定期的にも不定期にも通院する必要があり、また不妊治療の病院は予約が取りにくい、といったことから、この制度が利用できると仕事と両立しやすいのです。

副業をしている場合

会社にもよりますが、副業OKの企業の中には、業務に差し障りのない範囲で、フレキシブルな両立を許可されているところもあります。

フレックスタイム制のデメリット

どの職種でも可能なわけではない

クライアントに合わせなくてはならない仕事や、シフト制で時間があらかじめ決まっているなど、どの職種にも適応できる制度ではありません。

職種の特性によっては、使えないケースもあります。

自己管理能力が求められる

仕事の成果も時間も自分で管理する部分が大きくなります。

自己管理が苦手な人は、結果勤務がルーズになり、成果も出なくなる、という事態に陥るケースもあります。

企業によっては、それが理由でフレックスタイム制の導入を躊躇したり、導入したものの、うまく社員が制度を使えずに取りやめるケースもあります。

コミュニケーションの弊害

報連相したいときに相手が不在である、チームでのミーティング時間の調整がしづらいなど、社内コミュニケーションの弊害が出るといったこともあります。

フレックスタイム制の導入は働き方改革になる?

働き方改革は働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革です。

日本が直面する「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、「働く人のニーズの多様化」などの課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境をつくることが必要です。

そのためにも働く人々の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することは急務です。(※厚生労働省HPより)

フレックスタイム制の導入は、働き方改革になるのでしょうか。

フレックスタイム制の導入率

厚生労働省の『平成30年就労条件総合調査 結果の概況※』によると、フレックスタイム制を導入している企業は全体の5.6%にとどまります。

ただし、1000人以上従業員のいる大企業に限ってみると13.1%となります。

また、情報通信業においては24.0%、電気・ガス・熱供給・水道業においては29.6%が導入しており、会社規模、業務形態によってバラつきがあるようです。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/18/dl/gaikyou.pdf

フレックスタイム制導入は働き方改革になる?

フレックスタイム制は、高度成長期の日本企業の「一枚岩でがんばる」精神とはかけ離れているものです。どれだけ会社のために自分の時間を犠牲にしたか、が評価される時代は終わりを告げようとしています。

さまざまな事情を抱えた人がフレキシブルな制度によってワークライフバランスを取りやすくなる、また、事情に合わせて働き方を変えることが可能なら、続けやすくなることは、企業にとっても働く側にとっても有益です。

「残業をなくそう」という考え方だけでは、「いかに効率よく仕事を終わらせるか」が課題となり、会社と自分の成長のために未来の仕事に着手しづらい状況も生まれています。

このジレンマはフレックスタイム制を導入することで解消が期待でき、さらに、もっと自分の活躍の仕方をデザインしやすくなるのではないでしょうか。

フレックスタイム制でもっと自由に働こう

フレックスタイム制によって時間的な拘束から自由になれます。しかし一方で、それぞれの自己管理が今まで以上に求められます。

自分の生活スタイルにそれが合っている、理想の働き方がフレックスタイム制によって叶うのであれば、ぜひ利用したいところ。

自分の会社で導入されていないか調べてみるのもいいでしょう。また、導入している会社に転職するのもひとつです。

フレックスタイム制によって「働くこと」がもっと「自由」になるといいですね。

(藤井佐和子)

※画像はイメージです

SHARE