浮気・不倫の定義とは? 法律上どうなる? 弁護士が教える不倫の代償
浮気といっても、人によって考え方はさまざま。法的に問題になるのはどこからなのでしょうか? 浮気・不倫のあとには何が起こり得るのでしょうか? この記事では、浮気・不倫の定義や慰謝料などのリスクについて、弁護士・堀井亜生さんに解説してもらいました。
「自分の彼氏に浮気されたらどうしよう」と考えることは多くても、自分が浮気をする側になったらどんなことが起きるのか、具体的にイメージしたことのある人は少ないのではないでしょうか。
この記事ではさまざまな不倫事件に関わってきた弁護士・堀井亜生の視点から、浮気や不倫とはどんなものなのか、浮気や不倫が発覚すると一体どんなことが起きるのかを解説します。
一般的な浮気の定義は人それぞれちがう
カップル同士の会話で、どこからが浮気かという話題になることがあると思います。
何をしたら相手への裏切りになるかと思う基準は人それぞれです。
異性と密なLINEのやりとりをしたら、デートをしたら、手をつないだら、キスをしたら、肉体関係を持ったら……などの行動面で判断する人は、恋人同士でしかしないような行為をするという点が浮気の基準になるでしょう。
一方、「相手に好意を抱いたら」など、感情の面を基準にする人もいるかもしれません。
しかし、法律上はある程度線引きがされています。
法的な「不倫」の定義とは?
恋人がいるにも関わらず、ほかの異性に愛情が移ることをカップル間では「浮気」といいますが、法律上は問題ありません。
しかし、婚約関係になっていれば話は別で、浮気が原因で婚約破棄に至った場合、浮気をした側の人は慰謝料の支払い義務を負うことがあります。
また、浮気の当事者のどちらかが既婚者の場合は、一般的に不倫と呼ばれます。
不倫をされた配偶者は、配偶者とその不倫相手に慰謝料を請求することができます。
このとき、裁判で「不貞行為」が行われたと認定される必要があり、この不貞行為の定義は「性交渉やその他類似の行為」とされています。
メールやLINEで「好きだよ」と言っていたとか、手をつないで歩いていたというだけでは不倫と認定されず、慰謝料を取ることはできないということです。
もっとも、性交渉を行っていたことを厳密に立証する必要はなく、2人が外で手をつないでキスをしてマンションの部屋に入っていったというような証拠があれば、部屋の中で何をしていたかがわからなくても、親しい関係であることが認められて不貞行為と認定されることもあります。
また、特殊な例として、性交渉がなくても不貞行為が認定されたケースもあります。
独身女性のA子さん(仮名)は、妻のいる男性からアプローチされて食事に行ったり花火大会に行ったりしたものの、自分のマンションには入らせず、ホテルに泊まるときも別々の部屋を取っていました。
裁判ではA子さんと男性の間に肉体関係を認める証拠はないとされたものの、何度もデートを重ねていた点が「通念上、相当な男女の関係を超えたもの」と認定され、男性が家庭で妻に冷たい態度を取ったことはA子さんとの関係によるものとされて、A子さんには慰謝料の支払いが命じられました。
このように、性交渉がなくても相手の家庭を壊したと認定されれば慰謝料を支払わなければいけなくなることもあります。
不倫をしたら何が起きるのか
続いて、実際に不倫関係の当事者になってしまった場合にどのようなことが起きるのか見ていきましょう。
既婚者と不倫をした場合、相手の妻から訴えられる可能性があります。
一般的には、裁判になる前にまず弁護士を通して慰謝料を請求されることが多いです。
それに応じないと裁判になり、不倫をしたと認定されれば判決で慰謝料の支払いが命じられます。
また、裁判以外にもさまざまな影響が考えられ、相手の妻に不倫をしたことを会社に知らされたり、親や家族にも知らされたりすることがあります。
不倫をしたカップルの末路とは?
不倫の慰謝料の相場は数百万円とされています。
これに加えて弁護士費用や裁判費用もかかるので、簡単に払える金額ではありません。
支払いのために借り入れをして、そのまま破産してしまうという人もいます。
仮にお金に余裕があったとしても、慰謝料を支払えばはい終わり……ということはまずありません。
現実的には慰謝料を払うだけでは終わらないことがほとんどです。
不倫をされた妻は当然怒っているので、前述したように職場や実家にばらされるというのはよくあることで、妻が不倫相手の職場に怒鳴り込むというようなこともあります。
社内不倫の場合は2人とも部署異動をさせられたり、場合によっては職を失ったりすることもあります。
また、こんなケースもあります。
数年にわたり上司と不倫をしていたB子さん(仮名)は、あるとき「こんな関係を続けていてはいけない」と決意して、上司ときっぱり別れて退職しました。
転職先で出会った男性と交際して結婚しましたが、その矢先に新居に訴状が届きました。
以前の不倫相手の妻が最近になって過去の不倫を知り、訴えてきたのです。
B子さんは「出会う前のこととはいえ、不倫するような人とは思わなかった。最低だ」と夫に責められ、はじまったばかりの新婚生活はあっという間に破綻してしまいました。
このように、たとえ不倫をやめてほとぼりが冷めたと思っていても、過去をなかったことにはできません。
どんなタイミングで不倫が発覚するか、そのときどんな生活をしていて、そこにどんな影響を及ぼすのかは誰にも予想することができませんし、その影響は慰謝料などの金銭的な面にはとどまらないことが多いです。
どんな恋愛を選ぶかは人それぞれ。でも不倫のリスクは大きい
このように不倫にはいろいろなリスクがありますが、そういったリスクを踏まえたうえでどのような恋愛を選択するかは人それぞれです。
「たとえ慰謝料を払うことになろうと、会社に怒鳴り込まれようと、私はこの人と付き合いたい」と思うのを止めることは誰にもできません。
ただ、さまざまな不倫のケースを見ていると、妻に不倫を知られたときの男性は、取り乱したり保身に走ったりすることがほとんどです。
不倫しているときは「何があっても君を守るからね」などと聞こえのいいことを言っていたのに、いざ発覚すると相手よりも自分の身を守ろうとする様子を見て、「なんでこんな人と付き合っていたんだろう」と幻滅する女性をたくさん見てきました。
また、不倫相手になった女性は、別れを切り出されると「裏切られた」「大事な時間を奪われた」と憤りますが、そもそも不倫をする男性は家族を裏切って不倫をしているので、同じように自分自身も裏切られる可能性は十分にあるというのは頭に入れておいたほうがよいでしょう。
「大事な時間を奪われた」というのも同様で、家族を裏切るような人に自分の大切な時間を使っていいのかどうかを、一度よく考えてみることをおすすめします。
他人の夫だから魅力的に見える、リスクのある恋愛だから魅力的に見えるというのは人間の心理としてありうるものですが、リスクの大きさを考えると、不倫を選択するのはあまり合理的とはいえません。
あとになって「こんなはずじゃなかったのに」と思ってしまうぐらいなら、最初から不倫をしないほうが無難といえるでしょう。
(堀井亜生)
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そもそも浮気って何? その定義や浮気しやすい人の特徴を解説します。