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円満に辞めたい。専門家が教える「退職理由の伝え方と例」

佐野昭子

おぜきめぐみ

「退職するとき、本音を伝えたら嫌な思いをした」、なんて人もいるのではないでしょうか。退職理由は本当のことを伝えるべきなのか悩むところ。そこで、円満退職をするための理由や気をつけるべきポイントについて、ホスピタリティエバンジェリストの佐野昭子さんに教えてもらいました。

そもそも退職理由に嘘はダメ

社会における人間関係は広いようで狭いもの。退職後にどこかでバッタリ元の会社の人に会う、退職後に自分の噂話が勝手に流れていく、などはよく聞く話です。前提として、人と人との会話において、嘘はないほうが望ましいですね。また、自分自身の人生においても、嘘をつくという不必要な「負の遺産」を残さないようにしましょう。

しかしながら、退職を申し出る場面はさまざま。退職後に転職する場合やそうでない場合もあり、上司や職場の仲間との関係性のよし悪しもあることから、ケースバイケースだと思います。基本は嘘にならないよう、論理的に話をしましょう。そうすれば罪の意識を必要以上に感じる必要もありません。

退職をする場合には、現職の仕事内容や職場環境、人間関係などに対する不満などのマイナスの退職理由。そして、今後に向けたプラスの退職理由があります。その大半は、マイナスの理由が発生した後、自己を肯定化するためにプラスの理由が後から付加されます。

このように、自分の中には多くの退職理由が存在しているはず。もし、多くの理由がそろっていない人は、そのときの自分自身とじっくり対話をして、紡ぎ出すことをおすすめします。その上で、伝える相手とその時点での関係性を考慮し、どの理由を伝えるかを選んでみてはいかがでしょうか?

マイナスイメージにならない退職理由例

退職理由例1:好条件に向けて転職をしたい場合

「自分の人生を考えたとき、キャリアアップに関してよい話があったので、転職したい」と、上司に直球で伝えます。その際、現職の仕事内容や職場環境、人間関係には一切不満はないと付け加えることが重要です。

直球で伝えることにより、「信頼している上司だからこそ駆け引きなしで本音を伝えている」という状況を作り、承諾を得るためです。部下のことを考えている上司であれば、その決断を応援してくれるでしょう。

退職理由例2:勤続3年以上で、現職の仕事内容に適性がないと判断した場合

縁あってこの会社に入り、石の上にも3年と思って日々現職の仕事に打ち込んできたが、やはりちがう道を選ぼうと決めたことを正直に伝えます。周囲と相談した結果ではなく、自分の人生での重要な決断として熟慮の上、決定した旨を伝えましょう。

昔から世間一般的に「何事も一人前と言われるには最低でも3年」と言われています。それゆえ、常識的なスタンスをとった上での決断だということを示すため、正直さを前面に出して伝えましょう。より上司の理解も引き出しやすくなります。

退職理由例3:仕事や職場へのストレスがあり、すぐにでも退職をしたい場合

体調不良により現職の仕事に集中することが困難になってきた状況を説明し、治療回復に専念したい旨を伝えます。まわりに迷惑をかけたくないということを強調して説明しましょう。

これは嘘をつくことを前提としているわけではありません。ストレスが溜まっている自分の状態を少しだけ過剰に表現して、「体調不良」と称します。まわりに迷惑をかけたくないということを強調して説明することで、退職も致し方ないという着地点を引き出しやすくします。

退職理由例4:仕事や職場へのストレスに加え、親・家族の面倒を見る必要が出てきた場合

親・家族の介護や看護が必要になったため、それに専念したい旨を伝えます。3と同じく、まわりに迷惑をかけたくないというところを強調しましょう。

この場合、家庭の負担がかかることと、仕事のストレスを重ね合わせて、少し過剰表現するイメージです。ただし、3と同様に周囲に迷惑をかけたくないための結論であることを強調しましょう。

退職理由例5:UターンやIターンなどで就労地域を変える場合

家庭の事情などがあり地元に帰ることにして、再就職はその後考えると伝えます。

いったん実家に帰省してから後のことを考えることにしておくと、どの地域で就職してもつじつまを合わせやすくさせられます。

円満退職に向けて気をつけるべきポイント

ビジネスシーンにおける退職の意思表示において、最も大切なポイントは次の3点です。

ポイント1:退職の意思をできるだけ早いタイミングで伝えること

急な退職の申し出にともなう欠員は、組織的には大きなダメージを負うことになり、組織の長は欠員の補充やほかのメンバーへの業務分担の変更などといった対応が必要になります。退職を考えはじめると、多くの人がそのようなことよりも自分のことを中心に物事を考えてしまいがち。そのため、退職したいという気持ちを固めたら、とにかく早く直属の上司に退職の意思を直接伝え、退職希望日までの期間を少しでも長くとるようにしましょう。また、組織の状況次第では、退職日程の調整にも応じられるようにしておいてくださいね。

ポイント2:退職の意思は真っ先に直属の上司に直接伝えること

最も避けるべきことのひとつは、退職に関することを同僚などに話してしまい、同僚などから直属の上司に先に話が伝わってしまうことです。このようなケースになると、退職の申し出が後手にまわり、自身の退職に関するプロセスの主導権を失うことにもなりかねません。退職の意思は、まずは上司に直接伝えるようにしましょう。

ポイント3:退職希望日は、会社から提示された日程での調整に協力すること

「会社の就業規則として、退職日の1カ月前に申し出することとなっているため(企業によって異なります)、そのタイミングで伝えれば問題ない」。または「法律的に14日前であれば問題ない」と考える人もいるかもしれません。しかし、円満に退職するには、お世話になった職場や上司・部下への負荷に対する配慮も必要です。そのため、引継ぎなどがしっかりできる期間を確保するようにしましょう。

さまざまな状況はあると思いますが、一方的に「○日付で辞めさせてもらいます」や「今月末で辞めさせてもらいます。その間○日間は年次有給休暇を取得させていただきます」という、一方的なやり取りは避けたいものです。

また、企業は会計年度でビジネスを展開しているので、できれば会計年度末日を退職日にすることがよいと思います。それが難しいようであれば、四半期末や半期末でもいいでしょう。現在はどの業界も人材不足であり、欠員補充も大変。自分勝手な退職の申し出というニュアンスを最小限にすることが円満退職のポイントです。

上記3点をしっかりと押さえることができれば、円満退職の可能性が格段と高まります。これらはそれほど難しいことではありません。組織の一員として、働くビジネスパーソンとして、ほんの少しだけ配慮して行動に移すだけです。

ITやAIが社会進出している現代社会ですが、ビジネスシーンにおける退職の手続きは、機械的な処理ではなくフェイスtoフェイスです。そこでは当然、立場のちがう人同士が膝を突き合わせることになります。お互いがお互いをリスペクトし、状況を理解し合いながら進められるような場面設定を考えましょう。

相手のことも考えた上で伝えることが大切

去り行く会社だからといって、自分本位の辞め方をしてしまっては、まわりに迷惑をかけるだけでなく、自分の印象も落としてしまうものです。退職を考えたら、上記を参考に、嘘のない範囲で、早めに退職の意思を伝えるようにしましょう。

(監修・文:佐野昭子、文:おぜきめぐみ)

※画像はイメージです。

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