豆腐の「木綿」と「絹」は、なにが違う?「絹ごしは絹を使わない」
鍋から味噌汁まで幅広いメニューに登場する豆腐。「木綿(もめん)」と「絹ごし」の名から違う布で濾(こ)すように思われがちだが、濾す作業もなければ絹も使わない。
「絹ごし」のほうが高級なイメージがあるものの、基本型は「絹ごし」で、それを加工すると「木綿」に生まれ変わる。テマや成分の濃さを考えると「木綿」のほうが高級品なのだ。
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「絹ごし」豆腐が「木綿」に生まれ変わる!
豆腐が大豆から作られているのは誰もがご存じのことと思うので、作り方を簡単に紹介しよう。
まず大豆を水にひたして柔らかくし、すりつぶして「呉(ご)」を作る。できあがった呉から豆乳を絞(しぼ)り出し、100℃近くまで熱して「にがり」を加えて凝固させる。できあがった豆腐は「絹ごし」と呼ばれるが、絹を使うこともなければ、濾す作業もない。
なめらかな舌触りから「絹」と呼ばれるようになったが、道具や作り方とはまったく無縁の「事実無根」のネーミングなのだ。
木綿豆腐はどうやって作るのか? 驚くことにできあがった「絹ごし」をつぶし、圧縮して固めているのだ。
正確には絹ごし豆腐ができあがる手前の「固まりきらない状態」が原料で、木綿の布をひいた「型」に流し込む。型の上から重しで圧縮し、水分が抜けたら完成だ。ザラザラした表面は、このときに布に押しつけられた名残りで、確かに木綿を使うので正当な名前といえよう。
工場で大量生産する際は、一度「絹ごし」を完成させてからくずして「木綿」に作り替えるのが主流なので、厳密には「元・絹ごし」豆腐と呼ぶべきだろう。
木綿と絹ごしは、堅さの違いだけではない。圧縮されて水分が減った木綿は、カロリーも栄養分も絹ごしより多いのだ。
100gに含まれるおもな栄養素と、カロリーを比較すると、
・カロリー … (木綿)72kcal : (絹)56kcal
・たんぱく質 … (木綿)6.6g : (絹)4.9g
・鉄 … (木綿)0.9mg : (絹)0.8mg
・食物せんい … (木綿)0.4g : (絹)0.3g
と、木綿のほうが約1.3倍もカロリーが多く、腹持ちが良いので、同じ価格なら木綿のほうがお買い得と言えよう。ただし、水分を減らすさいに水溶性ビタミンも流れ出てしまうので、絹ごしのほうがビタミン豊富だ。ダイエットに利用するなら、木綿と絹ごしを交互に食べると良いだろう。
「充てん」「寄せ」も絹ごし
絹ごしは、本当に絹を使わずに作れるのか? 自宅でできる「手作り豆腐キット」で検証してみることにした。キットといってもペットボトル入りの豆乳と、袋詰めされた「にがり」だけの、至ってシンプルな構成だ。
作り方も簡単で、
・耐熱容器に豆乳を注ぐ
・にがりを入れ、軽く混ぜる
・ラップをかぶせ、レンジでチン
加熱し終わったら、ラップをはがさずに3分程度蒸らせば完成だ。
試食すると、味、舌触りともに「絹ごし」豆腐にほかならない。「絹」を使う機会もなければ「濾す」作業もせず「絹ごし」が作れることが証明できた。
レンジでチンする方法は手抜きに思えるかもしれないが、スーパーなどで販売されているパック入りの豆腐の多くは、同じ方法で作られているのだ。
熱した豆乳に「にがり」を混ぜると短時間で固まってしまうため、にがりを混ぜてから加熱するほうがコントロールしやすい。これらは「充てん豆腐」と呼ばれ、1丁分の容器に小分けし密閉してから加熱するため、雑菌も防げて日持ちが良くなる。
余談だが、寄せ豆腐は型に入れて圧縮する前の木綿豆腐なので、「くずした絹ごし」とも表現できる。製造方法から分類するなら、充てんも寄せも「絹」と呼ぶべき存在なのだ。
まとめ
・絹ごし豆腐は、絹も使わなければ濾す作業もない
・木綿豆腐は、絹ごしをくずして圧縮したもの
・寄せ/充てん豆腐も、絹ごしの仲間
(関口 寿/ガリレオワークス)