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【新連載】神さま、どうか今年こそあの人と縁を切れますように……

Story1 ★湘南行きの列車で

「ああ、乗っちゃった」
走り出した列車の窓に向けて、
わたしは思わず小さくつぶやいていた。
今、小田急ロマンスカーは、
新宿駅をゆっくりと出発したところだ。

帰省先の蔵王から2時間半、
立ったまま新幹線で帰ってきたというのに、
その足でまた別の列車に乗るなんて、
自分でもかなり物好きだと思う。
でも実家から自分の家に、
そのまま帰る気にはなれなかったし、
どうしても行きたい所、やりたいことがある。

外はとてもよい天気で
冬なのに強い射しが容赦なく降りかかる。
雪の蔵王とは別世界だ。
隣の人に断って思わずカーテンを半分しめた。
すると途端に、眠気に襲われる。
まぶたの裏を細切れに通り過ぎる、
暮れの忙しかった会社の業務、
どこかに違和感をおぼえた実家の玄関先、
そして胸を締め付ける、あの人の横顔。
「美穂」と耳元でわたしを呼ぶ声。
そんな夢を見たような、見ないような……。
「あの、終点です。着きましたよ」

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