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ブラジル沖に日本が全長300m級のメガフロートを建造!?石油採掘の中継のため

J-DeEP技術研究組合理事長の珠久正憲さん。

J-DeEP技術研究組合理事長の珠久正憲さん。

さる2月19日、日経新聞に興味深い記事が掲載されました。ブラジルの沖200kmほどに、日本が人工浮島「メガフロート」を建造するかもしれないというのです。わくわくする話なので取材に行きました!


■ブラジルに提案中です!

「J-DeEP技術研究組合」という団体があります。海洋開発に関する技術を研究するために政府の後押しで設立されました(2013年2月18日付)。

J-DeEPには、(株)IHI、(独)海上技術安全研究所、川崎重工業(株)、ジャパン マリンユナイテッド(株)、(一財)日本海事協会、日本郵船(株)、三井造船(株)、三菱重工業(株)が組合員として参加しています。いずれも海洋開発に関係するそうそうたるメンバーです。

上記のブラジルでの企画もJ-DeEPさんが推進しているとのこと。J-DeEP技術研究組合理事長の珠久正憲さんにお話を伺いました。

――ブラジル向けに「メガフロート」を建造する企画があるそうですが。

珠久さん 浮体には違いないんですが(苦笑)、私たちは「ロジスティック・ハブ」と呼んでいます。

――どのようなものなのでしょうか?

珠久さん ブラジルでは海底油田の開発が盛んです。最初のころは、割と陸に近い海で石油採掘を行っていたんです。例えば80kmとか100kmとかの近場で。ところが最近では採掘場所がどんどん遠くになっています。陸地から200kmも遠くで採掘していたりするんです。

――掘りやすいところは掘っちゃったってことですね。

珠久さん それほど遠くの採掘基地に人員を送るのは大変なんですよ。そこで、中継地点を洋上に作って、これがロジスティック・ハブですが、ハブまでは高速船で人員・物資を輸送するんです。そこから先はヘリコプターでシャトル輸送します。

――なるほど。で、そのハブを日本で作るわけですか。

珠久さん 現在ブラジルの石油会社に提案を行っている状態です。先方にプロポーザル(提案)が認められれば、実際に動きだすわけです。

海洋開発技術の習得が大事!

――この浮体を作る技術は難しいものなのでしょうか。

珠久さん 日本には多くの優れた技術があります。それを結集してやればできると思います。また、そこで得られるものはとても大事です。

――というのは?

珠久さん 研究室で考えること、それは大事ですが、しかし実際にやってみることで分かることはさらに重要です。現実の海で実践してしか分からないこと、得られないことがあるんです。

今回のハブは、海洋開発の分野での基礎技術、ノウハウを実地で習得し、研鑽を積むための大事な機会であると考えています。

――日本は海洋開発でも最先端のことを行っているというイメージがあるのですが……。

珠久さん 浅海域、沿岸での技術に関しては比較的あるんですが、深海域での技術はまだまだ足りません。また、個々の、パーツごとで考えれば世界有数の技術を持っています。しかし、問題なのはそれを総合的に取り扱えるかどうかです。ハブの建造には、総合力が問われると思っているんです。

――例えば、どんな難しさがあるのでしょうか。

珠久さん 例えば、どうやって係留するか。浮体は文字どおり浮いているわけですから、ある波浪条件のもとでこれをとどめておくことには技術が必要です。また、人員・物資輸送用の高速船が接舷するわけですが、両方とも浮体です。浮体と浮体との接舷。これにもやはり技術が必要です。

――なるほど。素人には分からない困難があるのですね。今回のロジスティック・ハブは、実際にはどのくらいの大きさなのでしょうか。

珠久さん それは先方の要求仕様がどのようなものになるかで変わりますね。

――現在、想定されているものを教えていただけませんか。

珠久さん そうですね。あまり大きなものではありません。全長200-300mぐらい。

――えっ、そんなに大きいんですか?

珠久さん そんなに大きくはないですよ(笑)。大型のタンカーとか、洋上石油備蓄基地とか、いくらでも大きなものはあります。

――それはプロの視点です(笑)。仮に全長300mで幅300mですと90,000平方メートルですから、そんな面積のものが洋上に浮いていたらみんなビックリします!
*……ちなみに東京ドームの面積が46,755平方メートルですから、90,000平方メートルだと東京ドームのほぼ2倍の平面積です。

珠久さん 大きさでビックリしてもらうためにやっているわけではないんですよ(笑)。かつて「メガフロート」を建造したときには、滑走路があったので全長1,000mありました。

*……メガフロートの空港実証実験が2000年に行われました。1,000m級の実証浮体が建造され、横須賀沖で飛行機の離着陸実験を行いました。

――ブラジル沖に建造する予定のこのロジスティック・ハブは完成するまでにどのくらいの時間がかかるでしょうか。

珠久さん そうですね、10年はかからないと思いますが。しかし、何でも、全く新しい技術を習得するには10年はかかるのではないでしょうか。技術というのはそういうオーダーで考えるべきです。


海洋開発に向けての努力は今まさに行われています。日本の技術がブラジルのお役に立つとうれしいですね。


(高橋モータース@dcp)

国土交通省の資料によるロジスティック・ハブのイメージ図。この段階では全長300m、幅85mほどの想定でしたが、高速船の大きさによっては全幅が拡大する可能性があります。ヘリポート数基分を備えた巨大なプラットフォームが洋上に出現するのです。

国土交通省の資料によるロジスティック・ハブのイメージ図。この段階では全長300m、幅85mほどの想定でしたが、高速船の大きさによっては全幅が拡大する可能性があります。ヘリポート数基分を備えた巨大なプラットフォームが洋上に出現するのです。

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