ビジネスシーンだけでなく日常生活でも使用することが多い「くださりました」「くださいました」というフレーズ。この2つは一文字違いであり「どちらが正しい言葉遣いなのか」と考えたことがある方も多いのではないでしょうか?
この記事では、この2つの言葉の違いや正しい使い方などを解説。類似表現も紹介するので参考にしてください。
■「くださりました」「くださいました」の違い
まずは「くださりました」と「くださいました」の意味と違いを確認していきましょう。
◇言葉の意味と由来は?
「くださりました」「くださいました」は「与える」「くれる」の尊敬語である「くださる」が語源となっています。
ではここで「くださる」の意味を確認しておきましょう。
下さる(くださる) の意味
[動ラ五(四)]《動詞「くだされる」(下一)の五段化》
1 「与える」「くれる」の尊敬語。お与えになる。くだされる。「祝電を―・った」
2 (補助動詞)「お」を伴った動詞の連用形、「ご(御)」を伴った漢語、また、動詞の連用形に接続助詞「て」を添えたものなどに付いて、その動作の主が恩恵を与える意を、恩恵を受ける者の立場から敬意を込めて表す。「お話し―・る」「ご理解―・る」「助けて―・る」
出典:(『デジタル大辞泉』小学館)
元々「くださる」という言葉は「くだされる」というフレーズが変化したもの。これに過去形の「ました」が組み合わさったことにより、「くださりました」「くださいました」となりました。
◇言葉の意味に違いはない
実は^この2つには意味の違いがなく、全く同じ意味を持つフレーズ。^どちらも相手が自分に対して「何かをしてくれた」「何かをくれた」という時に使用する、丁寧な言い方です。
「くださいました」は、「くださりました」の「り」がイ音便化したことによってできた言葉で、より近代的な印象を与えますね。
この2つの違いは「すみません」と「すいません」の違いと似たようなものととらえて問題ないでしょう。
◇「くださりました」も「くださいました」もどちらも正しい
ではこの2つを比べた際には、どちらが正しいのでしょうか。
実は、^どちらも正しい^ものといえます。
この後説明しますが、「くださりました」「くださいました」の元になるのは「くださる」という単語。そのため^厳密に言えば、その連用形である「くださり」を使用した「くださりました」が正しい^です。
しかし発音しにくいことから「くださいました」を使うことが増え、^現代語では「くださいました」を使うことが一般的^になりました。とはいえ「くださりました」も間違った言葉とは認識されません。
そのため現代用語では、「くださりました」「くださいました」共に、正しい用語といえるのです。
◇なぜ「くださいました」と使うことが増えたのか
「くださいました」は音便形の言葉です。
音便形とは、言葉と言葉の続きが発音しやすいよう変化することを指します。前述した通り、「くださりました」イ音便化された形が「くださいました」となります。
つまり^「くださりました」では発音しにくく、発音しやすくするために「くださいました」に変化しその結果、現代では発音しやすい「くださいました」の使用が増えている^のです。
■「くださいました」と「いただきました」の違い
似ている言葉として挙げられるのが「いただきました」ではないでしょうか。みなさんも使用する際にどのような違いがあるのかと、悩んだことがあるかと思います。
どちらも相手から「何かをもらった」「してもらった」という時に使うことに大きな違いはありません。
◇主語が相手か自分かによって使い分ける
しかしここで注意したいのは^「くださいました」の元となる「くださる」は尊敬語、「いただきました」の元となる「いただく」は謙譲語^であるという点です。
そのため、文章の主語によってどちらを使うか、変える必要があります。
^主語が相手の場合は「くださいました」、主語が自分や自分の身内の場合は「いただきました」を使用する^ようにしましょう。
■「くださりました」「くださいました」をビジネスで使う時の使い方と例文
「くださりました」「くださいました」を使う場合、^「何をしてもらったか」を追加して伝えます。^
☆例文
*・「ご多忙中にもかかわらず、お越しくださいました」
・「当社製品をご購入くださいましたことを、感謝申し上げます」
※この例文の「くださいました」は「くださりました」に置き換えて使っても問題ありません。*
使う時の注意点は2つ。
前述した通り、^主語が相手の場合にのみ使用可能^です。
また、「くださりました」と「くださいました」はどちらを使っても問題ありませんが、メールなどの^同じ文章内の中では、どちらかに統一する^必要があります。
ちなみに、ビジネスメールや手紙などの^文章で伝える際は、平仮名で記すのが一般的^です。
■「くださりました」「くださいました」の類語
次にこのフレーズの類似表現について紹介します。
似た言葉ではありますが、微妙なニュアンスの差や使用する場面の違いなどがあります。しっかり頭に入れて、使い分けられるようになるといいですね。
◇(1)「いただく」
まず先ほども説明した「もらう」の謙譲語である「いただく」です。「くださる」同様、相手に「何かをしてもらった」「何かをもらった」という意味で使えます。
また他にも「飲む」「食う」の謙譲語でもありますので、^食事が関連する場面でも使用できる^のが特徴です。
例えば取引先や目上の人との会食の際に、「もう充分にいただきました。ごちそうさまでした」のように、相手を敬う気持ちを込めて使用することができます。
◇(2)「賜る」
「賜る」も「もらう」を意味する謙譲語です。^「賜る」は目上の人に何かをしてもらった時に使う言葉。物をもらった時だけでなく厚意をいただいた時の言葉^として使用することが多いですね。
「ご指導、お力添えを賜り、感謝いたします」「ご愛顧賜りました」のようなフレーズを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
しかしとても丁寧な表現である一方、堅苦しい印象を与える言葉でもあるため、使用する相手や場面には注意が必要。近しい間柄の相手には使わない方がベターです。
◇(3)「頂戴」
こちらも「いただく」同様に、物をもらったり、もらって飲食したりする意味があるフレーズです。^「頂戴」は「もらう」の謙譲語であり、相手に対して「もらう」という行為をへりくだって伝える^ことができます。
「物」だけでなく、相手に時間をつくってほしい時「お時間を頂戴できますか?」「お時間を頂戴し、ありがとうございます」のような使い方もできます。
■「くださりました」「くださいました」はどちらも正しい日本語!
「くださりました」と「くださいました」に意味の違いはなく、どちらも正しい日本語だということを紹介しました。
また、「もらう」を意味する表現には、さまざまな言葉があります。他の類似表現との違いを意識して使ってくださいね。
(にほんご倶楽部)
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