「お邪魔させていただきます」は、取引先の会社を訪問する時などに使えます。よく使う表現ですが、正しい敬語なのでしょうか。
本記事では、「お邪魔させていただきます」が敬語として正しいのか解説。また、使い方や言い換え表現を紹介します。
■「お邪魔させていただきます」の意味
まずは「お邪魔させていただきます」の意味を確認しましょう。「邪魔」を辞書で引くと、以下のように記載されています。
じゃ‐ま【邪魔】
[名・形動](スル)
1 妨げること。また、妨げとなるものや、そのさま。「—な物をかたづける」「勉強を—する」
2 (「お邪魔する」の形で)訪問すること。「今晩お—してよろしいでしょうか」
3 仏語。仏道修行の妨げをする悪魔。
(『デジタル大辞泉』小学館)
辞書にある通り、「邪魔」は「お邪魔する」の形で訪問することを意味します。「お邪魔させてもらう」なら「訪問させてもらう」となります。
その「お邪魔させてもらう」を丁寧に表現したのが「お邪魔させていただきます」なのです。
■「お邪魔させていただきます」は敬語として正しい?
「お邪魔させていただきます」が正しい敬語表現なのか気になったことがある人はいるでしょう。ここでは、2つの観点から「お邪魔させていただきます」が正しい敬語なのか検証します。
◇(1)「お邪魔させていただきます」は二重敬語?
まず気になるのは、「お邪魔させていただきます」が二重敬語かどうかでしょう。
二重敬語とは、「謙譲語+謙譲語」「尊敬語+尊敬語」のように同じ種類の敬語を重ねて使った表現で、文法的には誤りとされます。
では、「お邪魔させていただきます」はどうでしょうか。品詞分解すると以下のようになります。
*謙譲の意を表す接頭語「お」+動詞「邪魔」+「させてもらう」の謙譲語「させていただく」+丁寧語「ます」*
謙譲語が2つ含まれているので、二重敬語なのではと思った人はいるかもしれません。しかし、ここで気をつけたいのは謙譲語に以下の2種類があるということです。
*謙譲語Ⅰ
自分側から相手側又は第三者に向かう行為・ものごとなどについて、その向かう先の人物を立てて述べるもの。
謙譲語Ⅱ
自分側の行為・ものごとなどを、話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。*
この定義に当てはめると、「お邪魔させていただきます」の「お」は謙譲語Ⅰ、「させていただく」は謙譲語Ⅱとなり、それぞれ異なる敬語です。そのため、「お邪魔させていただきます」は二重敬語となりません。
◇(2)「させていただきます」を使うのは適切?
「させていただく」は「相手に許しを請うことによって、ある動作を遠慮しながら行う意を表す(出典:『デジタル大辞泉』小学館)」という意味。
相手の許可が要らないことにまで「させていただく」を使うのはへりくだりすぎて不適切とみなされる場合があります。
では、「お邪魔させていただきます」の「させていただきます」はどうでしょうか。
相手の家や会社を訪問する場合、通常は許可が必要です。そのため、「お邪魔させていただきます」と「させていただきます」を使って表現するのは適切と考えられます。
▶次のページでは、「お邪魔させていただきます」の使い方を例文つきで紹介します。
■「お邪魔させていただきます」の使い方(例文つき)
ここからは、「お邪魔させていただきます」の使い方を例文と共に見ていきましょう。
◇(1)訪問の約束をする時
目上の相手への訪問を約束する時、「お邪魔させていただきます」が使えます。
例えば、取引先の会社へ出向く時やお世話になった年長者を訪ねる時などです。
☆例文
*・「それでは○月○日の15時に、貴社へお邪魔させていただきます」
・「当日は私と弊社制作担当の2人でお邪魔させていただきます」*
◇(2)相手のオフィスや自宅に上がる時
「お邪魔させていただきます」は相手のオフィスや自宅に上がる時のあいさつとしても使えます。
「お邪魔します」よりも丁寧に敬意を表現したい時に使うと良いでしょう。
☆例文
*・「本日は打ち合わせのお時間をいただきありがとうございます。お邪魔させていただきます」
・「本日はお招きいただきありがとうございます。お邪魔させていただきます」*
■「お邪魔させていただきます」を使う時の注意点
「お邪魔させていただきます」は、謙譲語を2種類使った丁寧な言葉です。
そのため、シチュエーションや相手によってはへりくだりすぎた印象を与えることがあるかもしれません。
例えば、普段からフランクに接している取引先や親族などに対して「お邪魔させていただきます」を使うと、丁寧すぎて相手が違和感を覚える可能性も考えられます。
それを避けるため、相手との距離感や立場によってはシンプルに「お邪魔します」を使うと良いでしょう。
▶次のページでは、「お邪魔させていただきます」の言い換え表現を紹介します。
■「お邪魔させていただきます」の言い換え表現
「お邪魔させていただきます」は、以下のように言い換えることもできます。
◇(1)「失礼いたします」
「失礼いたします」は「お邪魔させていただきます」よりも広い意味を持ち、相手の会社や家に上がる時だけでなく、立ち去る時にも使えます。
また、取り込み中の相手に話しかける時などにも「失礼いたします」が使えます。
☆例文
*・「失礼いたします。お茶をお持ちしました」
・「本日はありがとうございました。それでは、失礼いたします」
・「お忙しいところ失礼いたします。明日の会議の件で、1つ確認しても良いでしょうか」*
◇(2)「伺います」
「伺う」は「訪れる」「訪問する」の謙譲語。相手のオフィスや自宅へ訪問する際に使えます。
☆例文
*・「それでは○時に伺います」*
参考記事はこちら▼
■「お邪魔させていただきます」は訪問のあいさつに使える言葉
「お邪魔させていただきます」は、相手のオフィスや自宅に訪問する時のあいさつとして便利な言葉です。
「二重敬語なのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、本文で説明した通り謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱという異なる敬語を使っているため、二重敬語の定義には当てはまりません。
「お邪魔させていただきます」の言い換え表現としては、「失礼いたします」や「伺います」といったフレーズがあります。
ビジネスシーンではもちろん、プライベートでもよく使われる表現なので、言い換え表現も併せて覚えておきましょう。
(にほんご倶楽部)
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