妊娠 妊娠
2021年01月27日 14:51 更新

【医師監修】妊娠中の風邪とインフルエンザ 知っておくべき4つのホント

普段ならさほど心配しない風邪も、妊娠中だと、赤ちゃんに影響がないか心配になります。またつわりの時期には、つわりの症状と風邪の初期症状が重なることもあって、病院へ行くタイミングに迷うことも多いもの。妊娠中の風邪について、知っておきたいことをまとめます。なお、ここでいう風邪とは、一般的にいう「風邪症候群」を指します。

1 妊娠したら風邪をひきやすくなる?

風邪をひいた妊婦
Lazy dummy

風邪とは、ほとんどが身近な生活環境にいるウイルスによって起こる急性の鼻や喉の炎症です。めずらしくはないウイルスなので、誰でも・いつでも感染の可能性があります。

しかし、体力・免疫力が高ければ、症状がほとんど出なかったり、症状が出ても1週間程度で自然に治ります。

ところが妊娠していると、風邪をひきやすく、重症化することも少なくないようです。妊娠と風邪にどのような関係があるのでしょうか?

妊娠は免疫力に影響する?

一般的に、妊娠中は免疫機能が低下傾向にあるとされています[*1]。とはいえ、体力、免疫力、体質といった健康のベースは個人差が大きいため、一様に比べるのは難しいものとして、松峯先生は次のように話します。

「妊娠をきっかけにした体の変化や生活習慣の変化は、女性の心身にとってひとつのストレスです。その負担からも、妊娠前と比べると免疫力がいくらかダウンして、風邪をひきやすく、重症化しやすいから、『いつも以上に予防に気をつけよう』と考えるといいかもしれませんね」。

妊娠初期のこの症状はつわり? それとも風邪?

風邪は医学的には「急性上気道炎」といい、ウイルス感染による鼻や喉(上気道)の炎症なので、鼻水や喉の痛み、咳、発熱などが主な症状であることが多いですが、人によっては食欲不振や胃のむかつき、頭痛、全身の倦怠感などの症状が出ます。

症状に個人差があるのは一般的なことで、妊娠とは関係ありません。しかし、消化器系の不快症状などはつわりと見分けにくく、また、妊娠によるホルモン変化の影響で頭痛や倦怠感に悩む妊婦さんも少なくありません。

本来、“風邪様症状”などといわれるこうした症状の背景にさまざまな病気が隠れていることもあり、診断が難しいので、自分では見分けがつかないのも当たり前です。

受診を迷うことがあるかもしれませんが、迷うならば医療機関で診察を受けましょう。

赤ちゃんへの影響は?

風邪をひいても、早めに適切な治療を受ければ、赤ちゃんに影響はありません。

こじらせてしまい、高熱が続くなどすると、妊娠経過に影響するリスクがあるので、早めに治しましょう。

2 妊娠中の風邪、どうやって治す?

薬は飲める?

妊娠していることを告げたうえで診察を受け、医師から処方された薬を用法・用量を守って飲む分には、薬が赤ちゃんに影響することもありません。

市販の風邪薬には赤ちゃんの発育に影響を及ぼす可能性のある成分が含まれているものがありますので、自分の判断で飲むのはやめましょう。

受診するときは何科にかかる?

妊娠初期には通常の月経でいう「高温期(高温相)」が続いて、体温(平熱)がすこし高くなっています。中期以降は「低温期(低温相)」に戻り、落ち着きます。

ここ最近の平熱と比べ発熱している場合は、さまざまな感染症の可能性も考慮して、まずは内科を受診してもいいでしょう。発熱がなく、鼻水や鼻づまり、喉の痛みが主な症状の場合は耳鼻科受診でも診察が受けられます。

いずれにせよ、かかりつけの医療機関に電話をして症状を伝え、主治医から何科を受診するのが一番効率的か、アドバイスをもらって受診先を決めるとよいかもしれません。

医療機関に行くときは、不織布製マスクを着用し、受診前後・帰宅後には十分な手洗いをしてください。

何より安静第一!

帰宅したら、処方された薬を指示通り飲み、脱水予防のために水分を十分にとって、ゆっくり休みましょう。薬を飲んだからといって、無理は禁物です。休養が回復を促します。

「高熱」が出ていたら要注意!

38.0度以上の高熱が出ている場合は、インフルエンザなど、一般的な風邪を起こすウイルスとは違う感染症や、その他の病気の可能性が高いと考えます。

かかりつけの産科に電話を入れ、症状を伝えて、どのような受診行動をとるか、指示をもらいましょう。

妊娠中にインフルエンザにかかると、妊娠していないときと比べ重症化しやすいので、しっかり予防しましょう。次項にまとめて紹介します。

3 知っておきたい妊娠中のインフルエンザ対策

インフルエンザかも? と思ったら

インフルエンザの症状は38.0度以上の高熱と頭痛、関節痛、筋肉痛などの痛み、全身の強い倦怠感などが突然現れ、続いて咳や鼻水など“風邪様症状”が出てきます。

風邪に比べて、症状が強いことから「インフルエンザかも?」と自分でも気づきやすいかもしれません。

とても心配な気持ちは分かりますが、慌てて医療機関に行くのではなく、まずはかかりつけの産科へ電話連絡をしましょう。

インフルエンザの診察は、その他の診察と受付場所や待合室を分けている医療機関も多くあります。とくに、院内に多くの妊婦さんや新生児がいる産科は、二次感染を起こさないため、徹底した配慮をしています。

自分が感染しているということは、他の人に移す可能性があるということなので、どのようにすればいいか、確認してから行動するのが賢明です。インフルエンザ感染の可能性があるときは、まず電話で受診先などを相談してみましょう。

インフルエンザを防ぐ心がけ

妊娠中にインフルエンザにかかると重症化してしまう場合もあり、妊娠週数を経るほどリスクが高くなるため、なにより予防することが大切です。

あらかじめ予防接種を受け、流行している時期には人ごみを避ける用心が必要です。とはいえ、なんといっても「家族内」「接触感染」が多いので、次の点を心がけましょう。

・家族全員で予防ワクチン接種を!

予防接種は、インフルエンザにかからないため、また、かかっても重症化させないために受けるものです。日本で使用されているインフルエンザワクチンは妊婦さんの体や赤ちゃんの発育に問題のない「不活化ワクチン」で、妊娠期間中、いつでも予防のためにインフルエンザワクチン接種が推奨されています。

また、妊婦さんが予防接種を受けると、生まれてきた赤ちゃんは生後6ヶ月までインフルエンザにかかるリスクが低下するとされます。生後6ヶ月未満の乳児は予防接種が受けられないことを考え合わせると、妊婦さんが予防接種を受けることは、赤ちゃんにとってもメリットがあるといえます。

ただし、予防接種を受けていてもインフルエンザにかかることはあり、家族から家族へ感染するケース(家族内感染)が多いため、予防接種は妊婦さんだけでなく、家族全員で受けるようにしましょう。

・日頃から衛生に気をつけた生活を

接触感染、つまり、ウイルスに触れた手を介して、口や鼻、目から感染することが多いということですが、それは暮らしの中で何気なく行われている“共有”が原因になることが少なくありません。

家族間でもタオルの共有やドリンクのまわし飲みは避け、よく触れる場所(ドアノブ、テーブルなど)の清拭や小まめな手洗いなど、家庭内感染予防に努めましょう。

家族がインフルエンザにかかったら

家族の誰かがインフルエンザにかかってしまって、濃厚接触がある場合、妊婦さん(分娩後2週間まで)は抗インフルエンザ薬の予防投与が有益であるとされています[*2]。かかりつけの内科か産婦人科に相談してみましょう。

また、ほかに看病できる人がいるならそうしてもらい、妊婦さんはなるべく患者に近づかないようにします。

とはいえ、上のお子さんがかかってしまった場合など、看病をしないわけにはいかないこともあるかもしれません。その際は、不織布製マスクを着用し、患者に触れた後は十分な手洗いをしましょう。

4 風邪も予防第一、自分で守る!

風邪を近づけない暮らし方

体力が低下しているときに症状がでやすい風邪は「健やかさのバロメーター」ということもできます。そのため、風邪をひかないようにする特別な方法はなく、「健康習慣(運動・栄養・休養・衛生)を心がける」に尽きます。

「大切な赤ちゃんと自分の健康は『自分で守る!』という気持ちをもって、妊娠中は普段よりすこし意識的に行動し、健康を保っていただきたいですね」(松峯先生)

いつも言われているけれど予防効果高い「手洗い」

風邪もインフルエンザと同様に「家族内」「接触感染」が多いので、こまめな手洗い・うがいと、不織布製マスクの着用が予防に有効です。

とくに流水で十分に手を洗うことが大切。手首や爪の中も、たっぷりの流水で、まめに洗いましょう。

まとめ

風邪っぽい症状だからといって軽く考えず、こじらせないように早めに受診し、治療しましょう。また、風邪とは違うインフルエンザは、予防と早期治療がとくに大切です。記事を参考に、対処をしてください。

(文・構成:下平貴子/日本医療企画、監修:松峯美貴先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]国立成育医療研究センター「妊娠中に関する薬に関する基本的な考え方」
[*2]「産婦人科診療ガイドライン産科編2017」p63-66

医学書院刊「臨床婦人科産科 2018年 4月号増刊号 産婦人科外来パーフェクトガイド?いまのトレンドを逃さずチェック! 」

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

PICK UP -PR-

関連記事 RELATED ARTICLE

新着記事 LATEST ARTICLE

PICK UP -PR-