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2023年10月06日 07:07 更新

まだ見ぬ更年期Q&A|いつから・どんなことが起きて・どうすればいい?<働くママの更年期>

妊娠・出産という大仕事を経て、仕事に子育てにと奔走する毎日。目まぐるしくすぎる日々の中、ふと自分の心身の変化に気づき、これからのことを考える瞬間があります。今後訪れるターニングポイントの一つが「更年期」。遠いようで近い、わかっているようでうまく説明できない更年期について、今日は少し知ってみませんか?

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Q1.「更年期」ってなに?

――更年期という言葉はよく耳にするものの、なんとなくのイメージしかありません。更年期ってどんなことを指す言葉なのでしょうか?

A. 性成熟期と老年期の間にある「時期」を指す言葉です。

「更年期」という言葉を、女性なら一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。でも、その意味を問われると……意外と迷うものかもしれません。

更年期とは“時期を表す言葉”です。

女性の性機能は、一生の間で何度か節目を迎えます。8,9歳ごろから「思春期」に入って初潮を迎え、19歳ごろから移行する「性成熟期」では妊娠・出産が可能になります。その後に訪れるのが「更年期」、その更年期を終えると「老年期」となります。

なお、日本産科婦人科学会では更年期を「生殖期(性成熟期)と非生殖期(老年期)の間の移行期をいい、卵巣機能が減退し始め、消失するまでの時期」と定義づけしています。

Q2. 何歳ぐらいが更年期?

――私が高校生のころ、母が更年期の症状に悩んでいた覚えがあります。また、ママ友や職場の同僚から「そろそろ……」という声を聞いたりしますが、更年期は何歳ごろに訪れるのでしょうか?

年齢

A. だいたい「45歳から55歳ごろ」が更年期となります。

「更年期はまだまだ先のこと」とは思いつつも、年齢がさほど変わらない人から更年期の話を聞くと、実際いつごろ訪れるのか気になりますね。

更年期の時期は、生理(月経)が終わる「閉経」を中心に考えます。まず、最後の生理から1年以上生理がなければ、閉経と診断されます。そして閉経前の5年間、そして閉経後の5年間、合わせて10年間を更年期と言います。

日本人の平均閉経年齢は50.5歳なので、だいたい45歳から55歳ごろが更年期ということになります。ただし、閉経を迎える年齢は個人差が大きく、40代前半で迎える人もいれば、50代後半まで閉経しない人もいるので、更年期の症状が出る時期も変わってくるのです。

Q3. どうして更年期障害が起こる?

――更年期というと「更年期障害」が真っ先に思い浮かびます。なぜこの時期に症状が出るのでしょうか?

悩む

A. 主な原因はホルモンの変化。そこに色々な要因が関わって起こります。

「更年期症状」と「更年期障害」という2つの言葉がありますが、実は別の意味があります。まずはこの違いから説明しましょう。

更年期に起こるさまざまな症状の中で、ほかの病気が原因ではないものを「更年期症状」といいます。そして、更年期症状が重く、日常生活にまで支障が出るような状態を「更年期障害」といいます。

それでは、更年期障害はなぜ起こるのでしょうか。実際の症状について知る前に、障害が起こるメカニズムについて見てみましょう。

更年期に起こるさまざまな症状の主な原因は、女性ホルモンであるエストロゲンの低下です。

閉経前は、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンが周期的に分泌されています。一方で、更年期を迎えると卵巣の機能が低下し、エストロゲン(E2:エストラジオール)の分泌がゆらぎながら減少していきます。そうすると、別の2種類のホルモン(FSH:卵胞刺激ホルモン、LH:黄体化ホルモン)が過剰に分泌されることになり、それが自律神経中枢に影響することで更年期症状が起こると考えられています。

ホルモン分泌量の変化
▲更年期のホルモン分泌量の変化(イメージ)
卵巣機能が低下すると、卵胞からのE2分泌が少なくなり、反対にFSHとLHが多くなる。

このようなホルモンの影響に加え、
身体的因子:加齢など
心理的因子:育った環境、その人の性格など
社会的因子:職場や家庭内での人間関係など
等、いろいろな要因が重なることも関係して、更年期障害が起こるとされています。

なお、下記の性格の人は更年期症状が重いとされています[*1]。
・几帳面
・神経質
・完全主義
・こだわりが強い
・依存心が強い
 など

memo:「自律神経」ってなに?

不眠
身体中に張り巡らされている末梢神経の中でも、自分の意思とは関係なく刺激に反応して体の機能を調整する神経「自律神経」と言います。
自律神経には、交感神経(身体を活発に動かすときに働く)と副交感神経(身体を休めるときに働く)があり、それぞれが逆の役割を持って、互いにバランスをとりながら身体の状態を調節しています。
このバランスが何らかの原因で崩れると、だるさ、不眠、疲労感、頭痛、動悸・息切れ、めまい、のぼせ、冷え、消化器症状などが現れることがあり、これを自律神経失調症と言います。
原因としては不規則な生活やストレスのほか、更年期のホルモン分泌の変化があります。

Q4. 更年期障害にはどんな症状がある?

――更年期の体験者から「顔がほてる」「イライラする」などと聞くことがありますが、これ以外にも症状があるのでしょうか?

A. 100種類と言われるほど多彩な症状があり、個人差があります。

更年期症状・障害は、ホルモンだけでなく個人の持つさまざまな因子が関係して起こるので、その症状にも個人差があります。

100種にものぼるとされる多彩な症状は、大きく分けて3種類あります。

① 血管運動神経症状(自律神経失調症状)
・ホットフラッシュ(のぼせる、ほてる、汗をかきやすいなど)
・手足が冷える
・動悸 など

② 精神神経症状
・怒りやすい
・気分が落ち込む
・やる気が起きない
・イライラする
・眠れない など

③ その他
・運動器症状:頭痛、関節痛、肩こり など
・消化器症状:気持ちが悪い、食欲がわかない など
・皮膚症状:全身の乾燥、かゆみ など
・泌尿生殖器症状:排尿障害、おしっこが近い、外陰部の違和感 など

日本人の女性では、「肩こり」「疲れやすい(易疲労感)」「頭痛」「ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり、発汗など)」「腰痛」の症状が多いとされています。

なお、これらの症状が全ての更年期の女性に起こるわけではなく、症状の強さも人ぞれぞれです。ほぼ症状を自覚せず過ごす人もいれば、日常生活が送れないほどつらい症状を感じる人もいます。

Q5. 症状があった時、更年期のせいか知るには?

――頭痛や肩こり、イライラなどは、普段から感じることがあります。起きている症状が更年期が原因なのかは、どうやって判断するのでしょうか?

A. 生理周期やホルモン量などから判断します。まずは受診を。

更年期ではなくとも、生理中やPMS(月経前症候群)で毎月のように頭痛に悩まされたり、憂鬱な気分になったりする女性も少なくありません。また、更年期障害の症状は「不定愁訴」と表現され、つかみどころのない多岐にわたる自覚症状が現れるので、戸惑う人も多くいます。

生理周期が長くなった/短くなった、経血量が減った/増えたなどの「生理不順」が起こるようになり、同時に先に挙げたような症状がある場合更年期の症状である可能性があります。

一方で、「更年期のせいだと思ってたら、別の病気が原因だった」ということもあります。その場合は治療が必要ですし、更年期障害の場合でも有効な治療法があります。まずは婦人科や更年期外来などを受診しましょう。

更年期障害はホルモンだけでなく、性格やメンタル面なども関係して起こります。また、なんらかの疾患によって症状が起こっていることも考え、受診の際にはていねいな問診が行われます。下記に問診の一例を挙げますので、焦らないように事前にメモしておくと安心ですね。
・生理について(周期や期間、最終生理開始日など)
・既往歴(過去にかかった病気、特に婦人科疾患や乳腺疾患)
・現症(治療中の病気、服用している薬など)
・家族歴(血がつながった近親者の既往歴や現症など)
・生活環境(睡眠、運動、食事や嗜好品、ストレスなど)
・症状(いつから始まったか、どんな症状があるかなど)

質問票(下図:日本人女性の更年期症状評価表)で症状の有無や強さを確認し、問診の補助として使用することもあります。

更年期問診票
産科婦人科診療ガイドライン婦人科外来編より

問診以外に、血液検査でホルモンの状態をチェックします。これは、先ほど「更年期症状はなぜ起こる?」の部分でお話しした、「エストロゲンが減ってFSHやLHが増える」という更年期のホルモンの状態になっているかを確認するためです。中でも、E2はゆらぎがあるので、FSHの数値が上昇しているかが更年期障害を診断する上で重要となります。

そのほか、婦人科疾患の有無や子宮や卵巣の状態などを確認するため、内診や超音波検査なども行います。

実際に行われる検査については医療機関によって異なるので、施設のWebサイトなどで確認してみるといいでしょう。

memo:更年期になると基礎体温が変わる⁉︎

基礎体温
妊活中は基礎体温を測っていた人も多いかと思いますが、できればその後も日頃から基礎体温を測ることをお勧めします。
更年期に差し掛かると、卵巣機能低下に伴い基礎体温グラフにも変化が現れます。更年期に差し掛かると高温相・低温相が短いスパンで訪れるようになり、さらに閉経が近づくと高温相・低温相の区別がつきにくくなり、閉経後は高温相がなくなります。

Q6. 更年期の症状は治せる?

――更年期の原因や症状は分かりましたが、更年期に感じるつらい症状の治療法はあるのでしょうか?

A. ホルモン補充療法や漢方療法など、効果的な治療法があります。

他の病気が原因ではなく、更年期による症状だということがわかれば、更年期障害の治療を検討します。

更年期障害の治療法は、主に以下のようなものがあります。
---------------------------
✅ ホルモン補充療法(HRT)
✅ 漢方薬による治療
✅ 向精神薬による治療
---------------------------


1. ホルモン補充療法(HRT)
飲み薬・貼り薬・塗り薬などで少量のエストロゲンを補う治療法で、黄体ホルモンとあわせて補充します(子宮摘出後の場合はエストロゲンのみ)。様々な更年期の症状に効果がありますが、特にホットフラッシュの症状に有効です。
なお、乳がん発症などの副作用が強調された時期もありましたが、その後研究が進み、影響はとても小さいことがわかっています。また、最近では心血管疾患や骨粗鬆症の発症予防効果ができることで再評価され始めています。

2. 漢方薬による治療
生薬の組み合わせで心と身体のバランスを回復させる働きを持つ漢方薬は、HRTと併用する場合と漢方薬単体で使用する場合があります。特に多彩な症状があるケースに有効とされています。
その人の体質や症状に合わせてさまざまな漢方薬が使用されますが、中でも当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)・加味逍遥散(かみしょうようさん)・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)は「婦人科三大処方」と呼ばれ、更年期障害の治療によく用いられます。

3. 向精神薬による治療
気分が落ち込む、不安感がある、不眠……といった更年期の精神症状に対しても、ホルモン補充療法が有効ではありますが、精神症状が重い場合には抗うつ薬・抗不安薬・催眠鎮静薬などが用いられます。

これらの薬物治療に加え、サプリメント、プラセンタによる治療、カウンセリングや心理療法を行うこともあります。

服用

また、自律神経のバランスを整えるためには、生活面の工夫も大切です。これは更年期に限ったことではなく、今のうちから
・バランスが取れているか食事内容の見直しをする
・起床・就寝時間など規則正しい生活リズムを意識する
・定期的に適度な運動をする

などを心がけましょう。
自分の一番のサポーターは自分です。疲れやストレスを溜め込まないためにも、何事もほどほどにして、自分を労ってあげてくださいね。

自分の心と体と対話しながら、前向きに進もう

「近い将来、心身の不調が起こる」と聞くと、誰でも焦ったり不安な気持ちになったりしますよね。子供が成長するように、周囲も自分も変化し続けています。原因を知り、対策を知り、冷静に受け止める心構えができたならば、その焦りや不安も軽くなるのではないでしょうか。日本人の女性の平均寿命は87歳を超える世の中。一時迎える更年期を乗り越え、それ以降の人生もいきいきと楽しむためにも、ネガティブ面のみにとらわれず、自分の心と体と対話しながら過ごしていきたいですね。

(監修:馬場 敦志 先生、構成・文:マイナビ子育て編集部)

参考文献
[*1]日本産婦人科医科会「更年期症状は人によって症状がちがうのはなぜですか?」


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