育児 育児
2024年07月21日 07:17 更新

“思春期前の子”と“真っ只中の子”へ、親は性についてどう伝える? 産婦人科医サッコ先生インタビュー#1

近年、幼児期からの性教育が注目されていますが、家庭でなかなか性教育の機会が持てなかった場合、これから思春期を迎える子どもにどうやって“体の変化と性のこと”を伝えればいいのでしょうか。産婦人科医として診療をしながら、子どもたちへの性教育に長年取り組む“サッコ先生”に、10歳ごろ以降の子どもへの性教育について聞きました。

Lazy dummy

お話をしてくださった方
産婦人科医
サッコ先生(高橋 幸子 先生)

■子どもからの性の質問、親はどう答える?

――サッコ先生は、全国の中学・高校だけでなく、小学校でも子どもたちに性教育の講演を行なっていらっしゃいますが、これから思春期を迎えようとする子どもが性について疑問を持ったときに、家庭ではどのように対応すればいいのでしょうか?

サッコ先生 小学校5〜6年生ごろになると、自分専用のスマートフォンを持つ子どもの数が増え、インターネットの利用率も上がります。それにより、アダルトサイトなどからゆがんだ性情報が目に入るようになることも。また、SNSなどで不確かな性情報に触れることも少なくありません。

そうなる前に、できれば子どもに正しい知識を伝えておきたいものです。子どもの無邪気な興味や関心から性に関する質問をされたときには、恥ずかしがらずに堂々と真顔で、科学的に答えることが大事です。そうしておくことで、気軽に相談や質問ができる家庭環境が作れるんじゃないかな、と思います。

――いざ子どもから性の質問をされたら「えっ、なんでそんなこと聞くの? どう答えよう……」と焦って動揺してしまいそうです。

サッコ先生 もし答えに困るような質問をされたら、「どうしてそれを知りたくなったの?」と聞いてワンクッションはさむのもいいかもしれませんね。子どもが理由を話す間に、親側が答える準備もできるでしょう。また、子どもが知りたい理由によっても答え方が変わってくると思います。

たとえば、お友だちのお母さんのおなかが少しずつ大きくなってきたのを見て赤ちゃんができることについて知りたいのか、それともアダルト動画を見てしまって赤ちゃんができることと関係があるかどうかを知りたいのか。

前者なら正しい知識を教えればいいし、後者なら「アダルト動画はフィクションで現実とは少し違う」ということも併せて教える必要が出てきます。

性教育の「ゴール設定」は、夫婦で共有を

※画像はイメージです

――親子の会話も大切なんですね。では、家庭で子どもの性教育について夫婦ですり合わせておいたほうがいいでしょうか? それともどちらかが把握していればいいですか?

サッコ先生 まずは、子どもが18歳で成人する段階でどうなってほしいか、夫婦でゴール設定を共有してほしいですね。性に関することを自分で判断できる子になってほしいとか、何でも相談してくれる子になってほしいとか……。ゴール設定を共有できていると、そこへ向けてどうやって役割分担しようか、という話もできるでしょう。

子どもから相談を受けたときに「パパ(ママ)には絶対に言わないで」という状況が発生したらどうするか、とあらかじめ相談しておくのもいいと思います。子どもが困ったときにだれにも相談できない状況は避けたいもの。いつでも相談できる親であるために、どんなふうに受け止めるか、夫婦で話しておくことは大切だと思います。

■ 子どもに交際相手ができたら、親がすべきことは?

――思春期に入り子どもに交際相手ができたときに、親から最低限伝えるべきことはどんなことでしょうか?

サッコ先生 恋人と親密な関係になるとき、どんなことがデートDVに当たるかをあらかじめ知っておくことは大事です。何も知らないと「これも自分を愛しているからこそ」と勘違いし、被害に遭っていることを認識しないまま関係を続けてしまいます。

このようなものを知って、とても良いと思ったのでおすすめしたいのが、フランスで制作された暴力チェックメーターの日本語版で、性教育サービスを展開する企業が作成した『デートDVチェッカー』という定規。

「機嫌が悪くなると無視する」「ほかの人の前でバカにした態度をする」「メールやアプリを見ようとしたり見せろと言う」「自分の非を認めない、あなたの方が悪いと言う」「同意なくあなたの体を触る」など、危険な言動を具体的に例示してチェックができるようになっている。
(画像は『デートDVチェッカー』リリース情報より)

サッコ先生 このチェッカーでは
「良好な関係」は緑
・警戒領域となる「暴力」は黄
・助けを求めて身を守るべき「危険な状態」は赤
と色分けとともに23個の言動が書かれていて、どんなことがデートDVにあたるのかや、その危険度がわかります。

ここにあるような状況になったら、「自分は大事にされていないかも」と気づくことができるし、パートナーに「やめてもらえないかな」と相談するきっかけにもなるでしょう。いざというときに自分の身を守り、だれかにSOSを出すタイミングを逃さないことにつながると思います。

いざというとき、お互いを守れるように正しい知識を

※画像はイメージです

――交際相手ができたら、その先にある「性行為で起こりうるリスク」も教えておかなければと思いますが、いろいろありすぎてどこから伝えればいいものか考え込んでしまいます……。

サッコ先生 子どもが思春期になり、交際をして性的なコミュニケーションをとる関係性になるようだったら、ぜひ『#つながるBOOK』という冊子を参考にしてほしいです。セックスについてどう思っているか、したいと思っているか、どんなことが不安か、避妊方法を知ってるか、性感染症のことを知っているか、避妊に失敗したらどうするか……まずはこれらを交際相手と一緒に考えられるといいですね。

『#つながるBOOK』より

サッコ先生 どんなにちゃんと避妊をしたとしても、思いがけない妊娠になることがあります。その場合にだれにSOSを出すことができそうか、ということも交際相手と話し合えていると、お互いを守れるかなと思います。ただ、話し合うためには正しい知識と、自分自身の意見を持つことが必要です。保護者が教えるのにハードルが高ければ、『#つながるBOOK』のリンクを子どもにLINEなどで共有して、「これを読んでおいてね」と伝えておくといいでしょう。

(解説:高橋幸子先生 取材・文:早川奈緒子)

12歳までに知っておきたい 男の子のための おうちでできる性教育: 思春期の体と心・防犯・SEX・生命・人との境界線
¥ 1,650 (2024/07/21時点)
(2024/7/17時点)

PICK UP -PR-

関連記事 RELATED ARTICLE

新着記事 LATEST ARTICLE

PICK UP -PR-