【医師監修】子宮収縮薬(陣痛促進剤)を使うと言われたら?誘発分娩について知っておきたいこと

【医師監修】子宮収縮薬(陣痛促進剤)を使うと言われたら?誘発分娩について知っておきたいこと

出産を促すために陣痛を起こしたり強めたりするときに使われるのが「陣痛促進剤(薬)=子宮収縮薬」。人工的に陣痛を起こす誘発分娩(分娩誘発)の時や陣痛を強める陣痛促進が必要な際に用いられます。ここではどんな時に使用されるのか、使用方法などについて紹介します。


分娩誘発・陣痛促進って?

分娩は自然の流れで進むのが理想的ではありますが、状況によっては医学的な助けがあったほうがよいこともあります。
その助けの代表的なものに「分娩誘発」と「陣痛促進」があります。いずれも子宮収縮薬(陣痛促進剤)を使いますが、その目的は異なります。

「分娩誘発」と「陣痛促進」の違いは?

何らかの理由で出産を促したいときに試みられるのが、「分娩誘発」や「陣痛促進」です。

「分娩誘発」とは、陣痛がない状態から人工的に陣痛を起こすもので、薬や器具などで人工的に子宮口を拡げたり、子宮収縮を促したりする方法があります。

妊娠を続けることで母体やおなかの赤ちゃんに危険がおよぶ可能性が高いと医師が判断したときや、出産予定日を2週間以上過ぎてもお産にならないと判断されたとき、あるいは仕事の都合や無痛分娩など、いわゆる「計画分娩」の際にも行われます。

一方、弱すぎる陣痛を強めるよう促すのが、「陣痛促進」です。自然分娩では規則的な陣痛が始まると時間が経つに従いその起こる間隔は短くなり、強さは増していくのが普通ですが、規則的な陣痛が起こり始めたものの途中でその周期が長くなったり持続時間が短くなったりしてしまい、そのままでは出産に至らない場合に陣痛促進は行われます。

このように、「分娩誘発」と「陣痛促進」では、行われる動機は異なりますが、いずれも同じ薬剤(方法)を用います。

子宮収縮薬(陣痛促進剤)とは

分娩誘発や陣痛促進を行う際に用いられるのが、子宮を収縮させる働きを持つ薬「子宮収縮薬」です。陣痛促進剤とも言います。

子宮収縮薬には、オキシトシン、プロスタグランジンF2α、プロスタグランジンE2の3種類がありますが、現在では薬の投与量の調整がしやすいことなどからオキシトシンを使うケースがほとんどです。

ですので、ここではオキシトシンについて紹介したいと思います。

オキシトシンは脳の下垂体後葉から分泌されるホルモンで、分娩中は子宮からも分泌されます。分娩誘発では、希釈したオキシトシンを点滴(静脈注射)で投与していきます。

効き方には個人差が大きいため、ママによっては陣痛が必要以上に強まってしまうケースもあります。また、オキシトシンには子宮の出口を柔らかくする(子宮頸管熟化)作用はないため、別の方法で子宮頸管熟化を促すこともあります。

どんなときに分娩誘発・陣痛促進になるの?

ここまでで分娩誘発と陣痛促進の違い、使用される薬剤について紹介しました。では、どんなときに分娩誘発や陣痛促進は行われるのでしょう。

分娩誘発が行われるとき

分娩誘発が必要になる状況としては、大きく「妊娠の継続がママの負担になるケース」と「おなかの赤ちゃんに問題が起こったケース」があり、できるだけ早く赤ちゃんを出した方がよいと医師が判断したときに検討されます。

薬などを使用するため、ママや家族に対して事前の文書による説明と同意が必要になります。

・ママの体を守るため

子宮内感染の疑い、妊娠高血圧症候群など、妊娠を継続することで母体に危険が及ぶ恐れがあるとき。

・おなかの赤ちゃんを守るため

子宮内感染の疑い、予定日超過、糖尿病合併妊娠、胎児発育不全など、赤ちゃんをママのおなかから早く出す必要があると判断された場合。

いずれの場合でも、分娩誘発が行われるには、「経腟分娩が可能」「内診で分娩の準備が整っていることが確認されている」などの条件を満たす必要があります。

計画分娩でも行われる

予定した期日に出産をする計画分娩でも、分娩誘発が行われます。

計画分娩は、ママ側の理由(自宅から出産する場所が遠く陣痛が来てからでは間に合わない、家族の都合、仕事上の都合など)のほか、施設側の理由(無痛分娩やハイリスク分娩などの対応のため分娩時期を特定の日に設定しなければならない場合や、休日・夜間など医療スタッフが少ない時間帯を避けるなど)で実施されます。

計画分娩で分娩誘発が行われる際も、先の条件を満たさなければなりません。

陣痛促進が必要なときは?

自然に陣痛が始まったもののその進み方がゆっくりで、赤ちゃんを産むのに必要な程度まで強まらず(微弱陣痛)、分娩が順調に進行していないと判断されたときに試みられるのが、「陣痛促進」です。

一般的に、初産婦では陣痛が10分間隔になる分娩開始から胎盤が出るまで11~15時間ほど、経産婦では6~8時間ほどかかるといわれています。しかし、これ以上時間がかかる出産は遷延分娩と呼ばれ、「分娩開始後すなわち陣痛周期が10分以内になった時点から、初産婦では30時間、経産婦では15時間を経過しても児娩出にいたらないもの」[*1]と定義されています。

陣痛促進でも、子宮収縮薬のオキシトシンを用いるのが一般的です。詳細は次項で解説します。

分娩誘発・陣痛促進ではどんなことを行う?

一般的に、分娩誘発や陣痛促進は以下のような流れで行われます。そのやり方は施設によって多少異なるので、事前に確認をしておきましょう。通常は同意書に記載してあることが多いです。

分娩誘発・陣痛促進の流れ

(1)子宮頸管熟度の判定

赤ちゃんが出てくるときに必要な、子宮口の開き具合や子宮の出口にあたる子宮頸部の柔らかさなどを内診で確認します。開き具合や柔らかさが足りないときは、人為的に子宮口を広げたり、子宮頸部を柔らかくする処置をしたりします(2)。

【医師監修】産科で「子宮口、3センチ」と言われたら? お産は近い?

https://woman.mynavi.jp/kosodate/articles/8263

妊婦健診などで主治医から「子宮口、3センチ(cm)」と言われたら、それはどんなことを意味しているのでしょうか。長かったマタニティライフが終わりに近づいていることは間違いありません。その言葉の意味を分娩までの経過とともに紹介します。

(2)子宮頸管熟化(分娩誘発時のみ)

(1)の判定で子宮頸管の熟化が進んでいないと判断された場合、水分を吸収して膨らむ細い棒状の器具(ラミナリア)や、水を入れて膨らます風船のような器具(メトロイリンテル)を挿入して、子宮口を拡げていきます。
陣痛促進の場合は、頸管が熟化していないことはほとんどないので、この処置は行いません。

このほか、「卵膜用手剥離」を行う場合もあります。

卵膜とはおなかの中で赤ちゃんを覆っている薄い膜のことで、通常は陣痛の前後にこれが子宮から自然とはがれ、産徴(おしるし)と言われる出血があります。卵膜用手剥離では、子宮頸管熟化を促すために医師が指を使って子宮下部から卵膜をはがします。同時に子宮口を内側から指を使って拡げます。

卵膜用手剥離によって、卵膜が刺激されることに加え、物理的に子宮口が拡げられることによって子宮頸管熟化を促すホルモンの産生も促進されます。

この卵膜用手剥離によって、自然な陣痛が起こり、薬を使わずに分娩になる場合もよくあります。

(3)子宮収縮薬の投与

子宮収縮薬(主にオキシトシン)を用いて陣痛を人工的に起こしたり(分娩誘発)、弱い陣痛を強くしたり(陣痛促進)します。薬の効き方には個人差が大きいので、陣痛の周期や状態を見ながら少量ずつ点滴の量を増やしていきます。

(1)~(3)を行っても陣痛が進まないときには卵膜を鉗子などで破って、わざと破水させる「人工破膜」が行われることもあります。

人工破膜の時に、赤ちゃんより先にへその緒が出てしまったり、子宮内感染を起こしたりするリスクもあるので、実施される場合は赤ちゃんの頭の位置などを確認してから行われます。

お産の時間はどう変わる?

子宮収縮薬の効き方は個人差が大きいため、すぐに陣痛が始まって分娩にいたるママもいれば、数時間後にようやく陣痛が始まるというママもいます。

一般的には子宮収縮薬を使うと分娩時間は短くなりますが、個人差が大きく一概には言えません。

分娩誘発・陣痛促進した場合の費用は?

子宮収縮薬の投与量によっても変わりますが、通常の分娩にかかる費用に加えて、入院が1日追加されるたびに、薬剤費が1万円弱と入院費や個室代などで1~2万円程度が追加される施設が多いようです。

妊娠高血圧症候群などの病気や、微弱陣痛などの異常分娩が理由で分娩誘発や陣痛促進を実施する場合は健康保険が使えることがありますので、施設の事務スタッフに聞いてみるとよいでしょう。

子宮収縮薬が使えないケース

具体的には、使用する薬剤への過敏症(アレルギー)がある、過去に帝王切開や子宮切開をしたことがある(回数や方法にもよる)、骨盤狭窄、前置胎盤、横位(お腹のなかで赤ちゃんが横になっている)、常位胎盤早期剥離、重度胎児機能不全などの場合は使えません。

分娩誘発や陣痛促進によるリスクはあるの?

分娩誘発や陣痛促進のリスクや、気になる分娩時の痛みについてはどうでしょうか。

分娩誘発や陣痛促進のリスクとベネフィット

さまざまな情報がインターネットで収集できる今。分娩誘発や陣痛促進で検索するとさまざまな情報を目にすることができます。そんなことから、抵抗感を抱く妊婦さんもいるかもしれません。分娩誘発や陣痛促進にはどんなリスクがあるのでしょうか。

一番の問題は、薬が効きすぎて過度な陣痛を起こす「過強陣痛」です。

子宮の収縮が必要以上に強まることで胎盤の血の流れが悪くなり、それが続くことで胎児の状態が悪くなるリスクがあります。また強い収縮に耐え切れずに子宮や産道が裂けてしまって、多量に出血することもあります。

子宮収縮薬は効き方が個人で大きく変わるので、こうした問題が起こりやすいとされています。

そのため、このような問題が起こらないよう、医師はママやおなかの赤ちゃんの状況を分娩監視装置で観察しながら薬の使用量(投与量)を細かく調整しています。

どんな薬にもベネフィット(利益:効き目)とリスク(副作用)があります。子宮収縮薬にこうしたリスクがあるのは確かですが、このようなリスクがあったとしても使用した方がママや赤ちゃんのために有益と判断された際に使用されます。子宮収縮薬を使用した分娩よりも帝王切開の方が有利と判断された場合には、途中で帝王切開に切り替えられます。

陣痛の痛みは自然な陣痛とは違うの?

もう一つママが気になるのは、分娩誘発や陣痛促進によって痛みが強まるかどうかという点でしょう。
ただ、痛みの感じ方は人によって違いますし、初産か2度目以降の出産かどうかでも痛みの程度は異なると考えられますので、何とも言えないというのが正直なところ。自然な陣痛でも非常に痛いと感じる人もいますし、人工的な陣痛でそれほど痛みを感じない人もいます。あらかじめ考えてもわからないことですから、怖がり過ぎないようにしたいものです。

分娩誘発すると言われたら

医師から「分娩誘発が必要」と言われたら、自然に陣痛が来ることを想像していたママは戸惑ったり、ショックを覚えたりするかもしれません。

しかし、それは医師がママとおなかの赤ちゃんの状況から、メリットとデメリットを考慮した上でベストな方法を判断した結果です。

大切なのはどう産むかではなく、ママと赤ちゃんの命を守るお産であることです。分娩誘発を勧められたら、医師の説明をしっかり聞きましょう。特に、なぜ自然な陣痛を待つよりも薬を使って分娩を進める方が有利になるのかを必ず聞くようにしましょう。また、他に有利な選択肢がないのかを確認しておきましょう。

説明以外にも疑問や不安に思うことがあれば遠慮なく医師や看護師に確認し、落ち着いた気持ちで出産の日を迎えるようにしましょう。

この記事の監修ドクター
産婦人科医 太田寛先生
アルテミスウィメンズホスピタル産婦人科(東京都東久留米市)勤務。京都大学電気工学科卒業、日本航空羽田整備工場勤務。東京医科歯科大学卒業後、茅ヶ崎徳洲会総合病院、日本赤十字社医療センター、北里大学医学部公衆衛生学助教、瀬戸病院を経て現在に至る。日本産科婦人科学会専門医、日本医師会認定産業医、医学博士、インフェクションコントロールドクターICD)、女性のヘルスケアアドバイザー、航空級無線通信士

(文:山内リカ、監修:太田寛先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]公益社団法人 日本産科婦人科学会, 産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版, 198p, 2018.

※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

※本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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