【医師監修】妊娠初期に食欲が減る・増えるのはなぜ? 原因と対処

【医師監修】妊娠初期に食欲が減る・増えるのはなぜ? 原因と対処

妊娠したばかりのころ、吐き気などのつわりに悩まされる妊婦さんは多いものです。つわりは食欲不振になるだけでなく、食べることで落ち着く場合もあり、人それぞれ。栄養補給や体重管理も含め、妊娠初期の食欲の変化をどう乗り切るか学びましょう。


この記事の監修ドクター
浅川恭行先生
平成5年 東邦大学医学部卒業、同東邦大学大学院医学研究課入学、横須賀聖ヨゼフ病院を経て平成21年より東邦大学医療センター大橋病院 産婦人科講師。平成23年より医療法人 晧慈会 浅川産婦人科 理事。平成28年より同産婦人科、理事長、院長。医学博士、日本産科婦人科学会専門医、日本内視鏡外科学会技術認定医、日本産婦人科医会幹事、日本産科婦人科内視鏡学会理事、日本女性医学会 評議員

減った?増えた?妊娠初期の食欲変化はなぜ起こる?

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ごく軽いものも含めると、大半の妊婦さんが経験するといわれるつわり。なぜ起こるのか詳細は不明ですが、「今は妊娠初期の大事な時期ですよ!」という赤ちゃんからのサインと捉え、無理をしないことが大切です。

妊娠初期の食欲変化は、つわり症状のひとつ

妊娠が成立したころから起こる食欲の変化は、つわりの症状のひとつ。「もしかして妊娠?」と、自分で気づくサインになることもあります。つわりにはいろいろな症状がありますが、妊婦さんの多くが経験すると考えられています。

つわりの症状と期間

つわりの症状は「食欲不振」、気分が悪くなる「悪心」、食べたものや胃液を吐く「嘔吐」が代表的です。持続する悪心、繰り返す嘔吐などで食事の摂取が困難になり、栄養・代謝障害によりさまざまな症状が出て、治療が必要な「妊娠悪阻」に発展する場合もあります。

食べ物のにおいに敏感になったり、好みが変わることもあります。また、食べると吐き気がするつわりとは逆に、食べないとムカムカする「食べづわり」と呼ばれるものもあります。胃の中に何か入っていないと気持ちが悪くなり、絶えず何かを食べていないと気分がすぐれないため、結果として食欲が増進します。

つわりの症状は、妊婦それぞれで違うもの。全く症状が出ない人、軽い人、食べ物のにおいを嗅いだだけで嘔吐したり、水さえ飲めなくなる人などさまざまです。

つわりは、早い人では妊娠5~6週ごろの妊娠成立直後から始まります。一般的には胎盤が完成する妊娠12~16週頃には症状が落ち着いて、以降は自然と症状がなくなります。

つわりが起こる仕組み

つわりの原因ははっきりとは解明されていませんが、「妊娠初期に胎盤から多量に分泌されるヒト絨毛性ゴナドトロピンというホルモンの働きによる」という説や、「妊娠に伴って増える女性ホルモンのプロゲステロンが胃腸の運動を低下させ、消化不良や胃酸の逆流などを引き起こすため」という説などがあります。

妊娠によって体のホルモンバランスや代謝が変化したりすることが原因のひとつと言われていますが、心理的なことからつわりが軽くなったり重くなったりすることも知られています。また、精神的な要素も大きく、ストレスが強い人ほど症状が重くなるともいわれています。

つわりで食欲がない時、どうしたら食がすすむ?

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つわりで食欲がない時、無理に食べる必要はありません。栄養のことはあまり考えず、食べたいと思うもの、食べられるもの、好きなものを食べれば問題ありません。

ただ、ほとんど食べものが喉を通らない、水すら飲めないという場合は自身の体のことも、赤ちゃんの栄養不足も心配になります。どのようなことに気をつければよいのでしょうか?

食べても嘔吐してしまう。赤ちゃんも栄養不足になる?

つわりの症状がひどい人の中には、食べてもすぐ嘔吐してしまう人もいます。「こんなに食べられなくて、赤ちゃんが栄養不足になったらどうしよう」と心配する人も多いですが、妊娠初期の胎児は小さく、母体にもともと備わっている栄養で十分なため、このころはつわりがひどくても赤ちゃんの発育にはあまり影響はありません。

水も飲めない場合はどうすればよい?

つわりで食欲がなくても心配ない場合がほとんどですが、食べるものに気をつけたり、食事の回数を増やすなどの対策をしているにもかかわらず、水すら受け付けないような時は注意が必要です。妊娠前より5%以上体重が落ちている場合[*1]、重度のつわりである「妊娠悪阻」の可能性があります。

妊娠悪阻と診断された場合は、水分や栄養、電解質を点滴などで補ったり、薬剤による治療もあり、場合によっては入院になることもあります。血液検査で血液濃縮や電解質バランスの変動を調べたり、尿検査でケトン体の数値を調べ、判断されます。

水もとれずみるみる体重が減っていくような場合は、かかりつけ医療機関で相談するようにしましょう。

吐き気止めを飲んでも支障ない?

「妊娠悪阻」では、吐き気止めの薬が処方されることもあります。薬の服用による赤ちゃんへの影響を考えてためらう人もいますが、医療機関で診察を受けて処方された場合は、妊婦さんの状態を見て、薬を飲んだほうがメリットがあると総合的に判断されたから出されています。必ず医師の指示に従うようにしましょう。

ただし、自己判断で吐き気止めを飲むのはやめましょう。そう多くはありませんが、赤ちゃんに先天異常や流産を引き起こす薬もあります。かかりつけの医師または薬剤師に相談しましょう。

なお、持病で飲んでいる薬が赤ちゃんに及ぼす影響が心配な場合や、自己判断で薬を飲んでしまった場合は、国立成育医療研究センターの運営する「妊娠と薬情報センター」でも相談を受け付けています。ホームページには、よくある質問も記載されているので、確認してみましょう。

妊娠と薬情報センター:相談内容・方法 | 国立成育医療研究センター(外部リンク)

https://www.ncchd.go.jp/kusuri/process/index.html

妊娠中の薬剤使用に不安を持つ女性への安全情報の提供や、集積した相談者の服薬データと妊娠転帰データからのエビデンスの創出を目的に、2005年に「妊娠と薬情報センター」を開設しました。当センターの作成した回答書をもとに、主治医や拠点病院に設置された「妊娠と薬外来」で情報提供を行っており、相談数は年間約2000例で年々増加しています。さらに、欧米のネットワークにも参加し、情報交換や共同研究を行っています。

妊婦さんの多くが経験するつわりと異なり、「妊娠悪阻」を発症する人は全妊婦の0.5~2%ほどとかなり少ないです。重症化するケースは少ないので、必要以上に怖がる必要はありません。

食欲が湧かない時の食事のタイミング

通常の食事の時間に食欲がなくても心配しないで。好きなときに、好きなものを食べれば大丈夫です。食べやすくする工夫を次の項で紹介しますが、どうしても食べられない人は試してみるとよいでしょう。

つわりは早朝の空腹時に症状が出やすいので、欧米ではmorning sicknessとも呼ばれています。空腹になると嘔吐しやすいので、1日3食にこだわらず、5~6食など食事を小分けにしてとるのもよいでしょう。

食べものを取り入れやすくする工夫

つわりでも食べやすいものは、妊婦さんによってまったく異なりますが、水分の多い果物や野菜、お粥やスープなどであれば口にできることも多いようです。嘔吐をしてしまう時は、体が水分不足になっているので、水分の多いものを積極的にとるとよいでしょう。

他に、腹持ちのよい炭水化物、口の中をスッキリさせるミントなどの飴やガム、ゼリーやアイスクリームなどの冷たいもの、意外ですがソース味など味の濃いものが食べやすい人もいます。

また、においや精神的な影響で気分が悪くなることもあります。においのきつい食べ物は避けたり、冷やすことでにおいを感じにくくなるので、冷蔵庫で冷やしてから食べるのもおすすめです。気分がすぐれない時は家族に作ってもらったり、外食を利用したり、無理せずに済む環境を整えることも大切です。

つわりで食欲が増している時、どうしたら抑えられる?

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つわりで食べものを受けつけなくなる人がいる一方、食欲が増したり、食べていないと気分が悪くなる場合もあります。そんな時はどうしたらよいのでしょうか?

食べづわりの時、食欲とどう付き合う?

妊娠すると女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の分泌量が右肩上がりで増えていきますが、これらのホルモンは体中の細胞にエネルギーとして血糖を取り込ませるインスリンの効き方に影響を与えることが知られています。

エストロゲンはインスリンの効きを良くし(つまり血糖値が下がりやすくなる)、プロゲステロンは効きを悪くする(血糖値が下がりにくくなる)と考えられています。

妊娠中、エストロゲン、プロゲステロンともに分泌量は増えますが、エストロゲンの影響がより強いときには低血糖に傾きがちとなり、空腹で気分が悪くなる場合もあるかもしれません。

空腹を感じやすく、食欲が増す「食べづわり」にはエストロゲン分泌量の変化が影響しているのかもしれませんね。食べづわりの場合、食べると楽になるので、食べたいものを食べてかまいません。

ただし、つわり症状が落ち着いてくる妊娠中期には食べ過ぎないよう徐々にセーブし始めましょう。できるだけローカロリーなものを工夫すると良いですね。つわりがなく、食欲旺盛な場合は、妊娠初期から食べすぎに気をつけて、バランスのよい食事を心がけましょう。

知っておこう! 妊娠中の体重増加について

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つわりの時期を過ぎると、食欲が回復します。また、赤ちゃんの生育も進みますので、体重の増加は必要で自然なこと。ただし、体重が増えすぎるとそれにより引き起こされるリスクもあります。

つわりの反動で食欲が増すことも

つわりがだいたい治まってくる妊娠中期以降は、食欲が回復することが多いでしょう。つわりがひどく、食べものをあまり受けつけなかった人は、反動で食べ過ぎてしまうこともあります。

体重が増えすぎることで起こるリスク

赤ちゃんや妊婦さんのためにも、ある程度の体重増加は必要なものですが、増えすぎると危険が伴います。主に次の5つのリスクが考えられます。

妊娠高血圧症候群

妊娠中に血圧が上昇し、尿に蛋白が出たりむくんだりする病気で、妊娠20週以降に起こります。胎盤にも影響があり、赤ちゃんの発育が悪くなります。重症化すると痙攣が起こったり、出産より先に胎盤が剥がれることもあります。

初産や高齢出産、以前の出産で妊娠高血圧症候群になった人、高血圧や腎臓病、糖尿病などの持病がある場合もかかりやすいので注意しましょう。

前期破水

体重の増加量が多すぎると、陣痛が来る前に破水が起こる前期破水も起こりやすくなります。

難産、帝王切開、出産の際の出血過多

妊娠していないときから肥満であったり、妊娠中に体重が増えすぎた場合、出産の際、陣痛が弱くなることがあります(微弱陣痛)。また、陣痛が弱すぎると、赤ちゃんがなかなか生まれてこない「遷延分娩」になります。

こうした難産になると赤ちゃんに悪影響を及ぼすため、多くは緊急帝王切開により分娩することになります。吸引や鉗子分娩といった方法が採られることもあります。

また、体重の増えすぎには、出産時の出血量が多くなる傾向もあります。

巨大児、羊水の異常

体重が増えすぎることで、巨大児や羊水の異常を引き起こすリスクも高くなります。さきほど紹介した微弱陣痛のほかに、胎児が大きくなりすぎることでも難産になりやすくなります。

出生時体重が4000g 以上となる巨大児は、お母さんが肥満であったりママあるいはパパの体格が大きいなどの場合に発症のリスクが増えます。

巨大児の場合は、出産の際、ママの恥骨あたりに肩が引っかかってしまう「肩甲難産」となったり、大きすぎる赤ちゃんによって子宮が伸びすぎたことで胎盤が出たあとの出血がなかなか止まらなくなる「弛緩出血」といった異常を引き起こすとされています。

腰や膝への負担増

妊娠中は、大きくせり出したお腹のせいで腰や膝に負担がかかりやすくなります。体重の増えすぎでその負担はさらに大きくなり、慢性的な痛みを引き起こすこともあるでしょう。

体重はどのぐらいまで増えてよい?

では、妊娠中は具体的に何kgぐらい増えてよいのでしょうか?

日本肥満学会の判定基準に伴い、妊娠前の身長・体重から計算するBMI(体格指数)に従って目安を割り出してみましょう。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

下記、妊娠前のBMIに当てはまるところをチェックしてみましょう。
どのぐらい体重増加を目指せば良いかの目安になります。

□BMI18.5未満(やせ型):9~12kgの増加
□BMI18.5以上25.0未満(普通体型):7~12kgの増加
※低体重に近い場合は、増加量の上限側に近い範囲を、肥満に近い場合は下限側に近い範囲を推奨することが望ましい
□BMI25.0以上(肥満型):個別対応
※おおよそ5kgを目安として、BMIが25.0を著しく超える場合は個別に対応

なお、妊娠中期~後期には、BMIが「やせ」、「普通」の場合は、週に0.3~0.5kgを目安に増量すると良いと言われています(肥満の場合は、個別対応)。妊娠初期についてはデータが乏しいことなどから1週間あたりの推奨体重増加量の目安は示されておらず、つわりなどの状況を見ながら対応するとされています。

妊婦さんの痩せすぎや体重の増えなさすぎも禁物。増加量がとても少ないことによるリスク

元々やせすぎだったり、妊娠期間中、体重の増加量があまりにも少なすぎるのにも注意が必要です。つわりが終わっても痩せすぎている場合、お腹の中での赤ちゃんの発育が遅かったり、低体重で生まれてしまう場合もあります。痩せすぎによるリスクは以下の4つです。しっかり栄養をとって、適正体重をキープしましょう。

胎児発育不全

この場合、妊娠37週以降の正期産の時期になっても、妊娠週数に見合った発育が見られません。染色体異常など赤ちゃん側に原因がある場合もありますが、お母さんの栄養障害により引き起こされることもあります。胎児発育不全により出生時の体重が軽いほど、また発育不全の程度が大きいほど、赤ちゃんのその後に及ぼす影響は大きくなります。

低出生体重児

2500g未満で生まれた赤ちゃんを低出生体重児と言います。低出生体重の理由は、早産であったり、さきほど紹介した胎児発育不全の場合もあります。胎児機能不全の場合を含む低出生体重児では、将来、冠動脈疾患や高血圧症、脂質代謝異常、糖尿病などの、いわゆる生活習慣病を発症する頻度が高くなることが指摘されています。

生活習慣病だけでなく、低出生体重児では免疫機能や内分泌機能に異常が生じやすく、精神疾患とも関連しているといわれています。

切迫流産・切迫早産

切迫流産は妊娠22週までの時期に流産の可能性がある状態のこと、切迫早産は妊娠22週以降37週未満の時期に、早産の可能性がある状態のことです。ともに、妊婦さんの痩せすぎにより引き起こされる可能性があるとされています。

貧血

妊娠中はもともと鉄欠乏性貧血になりやすいものですが、体重が少なすぎる妊婦さんではさらに貧血になるリスクが高まります。

体重管理のポイント

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つわりが終わると、反動で食べすぎ、急激に体重が増加してしまう妊婦さんは多いものです。体重が増えやすいタイミングを知って、適正範囲内の体重に管理しましょう。

妊娠中に体重が増えやすいタイミング

生活リズムが変わる産休や里帰り中、臨月に入ったころは、体重が増えやすいでしょう。妊娠初期、つわりが終わったころも要注意です。

食事面から体重を管理するには?

体重管理の基本は食事です。バランスの良い食事が理想ですが、量を食べられない時は、お米など腹持ちのよい炭水化物を、食欲が増している時は低カロリーのもの、など調整しましょう。

体重管理のためだけでなく、食事では妊娠中に不足しがちな栄養素を積極的に摂ることも大切です。妊娠初期(妊娠3ヶ月まで)は、赤ちゃんの神経管閉鎖障害のリスクを減らすため、葉酸を多く摂取するように心がけましょう。

また、鉄分豊富な赤身肉などを食べて貧血を予防する、授乳などでも失われがちなカルシウムを意識してとるなど、主菜で補えない栄養素は副菜で補っていきましょう。

体重管理に最適な運動は?

適度な運動を行うことで、体力をつけながら体重を維持できます。また、ストレスを解消できる点でもおすすめです。

妊娠中におすすめの運動は、ウォーキングやマタニティスイミング、マタニティビクスのような、有酸素運動で全身を動かすもの。ただし、腹部が圧迫されるもの、瞬発力が求められるもの、転倒や相手と接触するものは避けましょう。

まとめ

妊娠初期に多くの妊婦が経験するつわり。つわりでは食欲が減る場合に加え、増える場合もあります。食欲が減るタイプでも、つわりが終わる時期にはそれまで満足に食べられなかった反動で食欲が増し、体重が必要以上に増えてしまう場合も。体重の増やしすぎは良くありませんが、逆にあまり増えないことも妊婦さん自身や赤ちゃんの負担となります。食事や運動で工夫しながら、上手に体重をコントロールしていきましょう。

(文:西谷友里加/毎日新聞出版MMJ編集部、監修:浅川恭行先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]病気が見えるvol.10産科, p84, メディックメディア, 2017

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

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