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「子どもがいない専業主婦」は何も持ってない? 地方都市の“子育てコミュニティ”で抱いた疎外感と不安

“子どもを持たないこと”を選択した既婚女性への匿名インタビュー連載「母にならない私たち」。その決断をした理由や、夫との関係性、今の心境など……匿名だからこそ語れる本音とは?

結婚するかしないか、子どもを産むか産まないか。女性に選択肢が増えたからこそ、悩んでしまう時代。本連載では、子どもを持たないことを選択した既婚女性に匿名インタビューを実施。 「どうして子どもを持たないことを選択したの?」「パートナーとどう話し合った?」「ぶっちゃけ、後悔してない?」……などなど、顔出しでは言えないような本音まで深掘りします。聞き手は、自身もDINKs(仮)のライター・月岡ツキ。

大手企業の本社や繁華街もあるような地方都市に住んでいる小山友梨奈さん(仮名/27歳)は、3歳年上で医療系専門職の夫と暮らす専業主婦で、今年で結婚4年目。

もともと保育士をしていた友梨奈さんだが、結婚を機に退職。不妊治療に励んでいた時期もあったが、とある理由から現在は治療をお休みしている。

「子どものいない専業主婦」として生きることへの複雑な気持ちを聞かせてもらった。

「ワーママ」や「バリキャリ」の話に馴染めない

私は、この地方都市で生まれ育ちました。大学も地元で、主人と出会ったのも地元。私の両親も主人の両親も近くに住んでいて、学生時代からの友達もほぼ地元に残っています。

周りの子はほとんどが結婚して子育て中で、地元の家族ぐるみのコミュニティが子供の頃からずっと続いているような地域です。

この「母にならない私たち」の連載や月岡さんのPodcastはよく見聞きしていて、共感する部分はたくさんあったのですが、子どものいない専業主婦の私にとって、いわゆる「ワーキングマザー」や「バリキャリ」系の女性の話は、どこか自分とは違う世界の話だと思っていました。

だから、今回「子なし専業主婦の方の話を聞きたい」という月岡さんのインスタの募集を見て、「私のことだ!」とすぐにDMしました。誰かに私の話を聞いてほしいと、ずっと思っていた気がします。

「子どものいない専業主婦」って本当に少ないんですよね。平日の昼間にご近所で見かけるのは、子連れのお母さんか、お年寄りばかり。

「私、どっちでもないな……」って、属するところのない疎外感を感じています。

「子どもがいない専業主婦」は何も持っていない?

専業主婦の道を選んだのは、幼い頃から漠然と「結婚したら、おうちでゆっくり家のことをして過ごしたいな」と思っていたからです。

最近は『対岸の家事』という、専業主婦が主人公のドラマが話題になっていましたが、私も主人公と同じく、複数のことを両立するのがすごく苦手なタイプで。一方で、掃除や料理を時間をかけて丁寧にするのは、とても好きなんです。

主人も「友梨奈が家にいてくれた方が、生活にゆとりを持てるから安心する」というタイプみたいです。結婚前から私が専業主婦になることはお互いに合意していて、今年で結婚4年目になりますが、二人で楽しく暮らせています。

だけど、やっぱり世間の多くの意見は「結婚して、出産して、子どもがいることで家族が完成する」というものなんだな……とも感じています。

私は、結婚はしたけどまだ子どもはいなくて、別にキャリアがあるわけでも、夢や目標があるわけでもない。ふと「私ってなんなんだろう」って思ってしまうんです。「ただ、ぼーっと生きてるだけなのかな?」って。

ハンドメイドやフィットネス系などの趣味に手を出してみたりするものの、「これって、私がやりたくてやってるんじゃなくて、子どもがいない専業主婦を選んでる自分を『何も持っていない』って思いたくないからやってるんじゃない?」という考えがよぎってしまうこともあります。

元保育士だからこそ「子どもを持つのが怖い」

結婚前は保育士として働いていました。やりがいのある仕事でしたが、子どもと関わる仕事だからといって「自分がお母さんになりたい」と強く思っていたわけではなかった気がします。むしろ、保育士としての経験が、子どもを持つことへの「怖さ」を抱かせるきっかけになりました。

保育園にはいろいろな子どもがいます。それぞれの特徴は違うけど、集団生活の中での決まった行動が難しく、戸惑ってしまう子もいて。そういう子がパニックになったり癇窶を起こしたりするとき、保育士一人では手が足りず、何人かで対応することもよくありました。

保育園という、子どもを見るための専門職が複数人いる特殊な環境だから対応できたけれど、もし自分の子どもが同じような特性を持って生まれた場合、私は受け入れて対応できるのだろうか……と、すごく心配になったんです。

私個人の感覚としては、自分にもそういう未来が来るかもしれない、って想像すると怖くて。だから、結婚してもずっと妊娠を避けていました。

また、主人の親族に障害を持っている方がいて、その方の親から「幼い頃からすごく苦労して、手をかけて育ててきた」という話を聞いたんです。保育の現場とは違って、親ひとりにすべての負担がのしかかる。そう考えるうちに、自分にはまだ覚悟が足りず、子どもを迎える自信を持てなくなっていきました。

でも、そんなネガティブな気持ちを伝えたら、主人や主人の身内を傷つけてしまいそうで、ずっと言えませんでした。

でも、今回のインタビューを機に、思い切って主人に正直な気持ちを言ってみたんです。そしたら、主人は「本当は自分も同じ不安がある。でも、それを口にすると『そういう子どもは望んでない』という意味になってしまうから、言えなかった」と。

普段は仲の良い私たちですが、こういう話は全然できていませんでした。

「子なし」のまま保育士に戻るのはつらい

私が「子どもを持たない専業主婦」としてドンと構えていられないのは、「人は社会の中で、仕事か子育てなど“何か”をやっていないといけない」という空気を感じているからだと思います。

「じゃあ仕事をすればいいじゃない」と言われると思うのですが、保育士に戻る選択肢は今のところ考えていません。

というのも、保育園は「子どもと、その家族」が集まる場所だから。もし私がこのまま子どもを持たない人生を歩むとなったとき、自分が選ばなかった方の人生を毎日職場で見続けなければいけないのは、正直キツいかなと思って……。

他の仕事も探してみようと思い、主人に内緒でハローワークに行ったこともありました。でも、そこで「保育士の資格を持っていても、他業種への転職は高卒と同じ扱いだよ」と言われてしまったんです。

こんなに厳しいのか……私の資格や経験って意味ないのか……とすごく落ち込みました。「働く」というルートが潰されたような気持ちになってしまい、それ以来は踏み出せていません。

そんな思いを抱えながら、私たちは今年から不妊治療を始めました。それもまた、周りの「結婚して子どもを持つことが当然」という雰囲気に飲まれてしまったからです。

しかし、不妊治療を進める中で、私たちは新たな壁にぶつかることとなります。

(後編につづく)

子育てや自分の生き方に対する不安を抱えながらも、不妊治療を開始。そこで待ち受けていた現実とは? 後編は8月7日(木)に更新予定です。

(取材・文:月岡ツキ、イラスト:いとうひでみ、編集:高橋千里)

※この記事は2025年08月06日に公開されたものです

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