執着を手放す方法とは? 執着の原因や正体についても心理カウンセラーが解説
執着を手放すためには、傷ついた自分を労わり、執着を手放した後にどうなっていたいのか、具体的な目標を定めることなどが大切です。本記事ではそもそも執着とは何なのか、どうして執着してしまうのか、そして現状や終わった恋愛への執着を手放す方法について、心理カウンセラーの沼田みえ子さんに教えてもらいました。
恋人や仕事・地位・お金・趣味の時間など、どうしても手に入れたいものがある、または今持っているものを失いそう、そして失ってしまったという時に、「執着心」が生まれる場合があります。
それは私たちの心を苦しめ、束縛し、選択の自由を奪ってしまう、とてもつらい感情です。今回は、なぜ私たちは人やものに執着してしまうのか、そしてその執着をどう手放していけばいいのか、心理カウンセラーの立場からお伝えしようと思います。
そもそも執着とは
執着というのは、心が何かにとらわれている状態のことです。例えば「間違いなく、この人が運命の人だ」「私が幸せになるためにはこれが必ず必要」などと思い込み、「何があろうと手に入れるぞ」「絶対に離さないぞ」としがみついている状態を指します。
そして執着している対象を求める気持ちが強ければ強いほど、逆に「この人なしでは、私は幸せになれない」「これを逃してしまったら、もう2度と手に入らない」といった恐れに心が支配されてしまうことになります。
自分が欲しいものを手に入れるために努力するのは良いことです。しかしそれが行きすぎて視野が狭くなったり、本来の目的を見失ったりして「執着」になってしまうと、他の選択肢がなくなって、成功する・幸せを手に入れるという確率が低くなってしまうといえるでしょう。
何かに執着する原因
私たちが何かに執着する大きな原因は、意識的にしろ無意識的にしろ、マイナスな感情を抱いているということが考えられるでしょう。では、それは具体的にはどのような感情なのでしょうか? 下記で代表的なものを見ていきましょう。
(1)「これを逃すと幸せになれない」という不安感や恐れ
例えば、もう相手への気持ちが完全に冷め切っているのに離婚できないとしたら、「離婚したら私はもう幸せになれない、生きていけない」などという感情から、結婚に執着している可能性があるでしょう。
それ以外にも「この会社を辞めたら、もう仕事は見つからないのではないか」「この人を逃したらもう結婚できないのではないか」などと感じ、他の選択肢では幸せになれないという不安感を抱いているので、今、目の前にあるものに執着してしまうと考えられます。
(2)寂しさや惨めさ
これは特に恋愛に多く見られるケースですが、大切な人やものを失った時、その寂しさや惨めさを紛らわせようと、執着してしまうという場合もあるでしょう。
具体的には、別れた恋人をなかなか忘れられず「何とか復縁できないだろうか」「あの時、あんなこと言わなければよかった」などと、ずっと元カレや元カノについて考え続けて、自分の中に居座り続けさせるといった状況です。
失ったものに執着してそれについてだけ考えていれば、「もう終わった」という現実を心の中で受け入れなくて済む状況を一時的につくることができ、気持ちを少しでも紛らわせられるのでしょう。
(3)変化への恐れ
「転職したらまた一から人間関係を構築しなくてはいけない」「結婚したら自由がなくなるから独身のままがいい」などのように、変化に自分が対応できないのではないかと恐れを感じたり、ネガティブな影響を大げさにとらえ過ぎたりして、現状に執着する場合もあるでしょう。
(4)怒り
「あの人が私を振ったせいで、私は傷ついた」「あの時に邪魔が入ったせいで、プレゼンに失敗して受注できなかった」などのように、誰か、またはある出来事のせいで自分は傷つけられて不幸になったのだと怒りを感じる時、その人や出来事に執着してしまう場合があります。
もしも執着を手放してしまうとそれらを許してしまうことになり、まるで負けたような気持ちを感じるのではないかと、恐れているのかもしれません。
(5)今の自分は昔に比べて価値が落ちているという思い込み
例えば「学生時代はモテていたけれど今はモテない」「昔はもっと稼げていた」など、現状が昔と比較して悪い状況になっていると感じる時、私たちは過去の栄光に執着してしまうことがあります。
現状を素直に認めたり、違う部分で価値を見いだしたりできないと、今の自分は価値が落ちていると思ってしまい、思い出にすがってしまうのでしょう。
執着を手放す方法
執着する対象は、その人が「とても価値があるものだ」と思っている存在である場合が多いです。ですから執着を手放すという行動に対して、抵抗感が出てくるのも自然なことでしょう。
しかし、執着に別れを告げると、より幸せな現実が手に入るというケースはよくあります。そこで、ここでは順を追って執着を手放す方法をお伝えしていきます。
(1)今の傷ついた自分を受け入れる
何かに執着する時は、現実に何がしかの問題、例えば失恋・恋人の浮気・リストラなどが起こった状況だというケースが多いでしょう。それにより寂しさや怒り、不安感など、ネガティブな感情を抱いている状態だと考えられます。
この感情は執着を生むだけでなく、放っておくとどんどん大きくなって心を疲弊させ、執着を手放す気力を損なうことにもつながるでしょう。
そこでまずは「傷ついている自分」「うまく行っていない自分」を受け入れ、「うんうん、寂しいよね、不安だよね。その気持ち、分かるよ」と、自分に寄り添ってあげるといいでしょう。
(2)自分には生きる力があることを知る
何かに執着してしまうのは、「これを手に入れなければ自分には幸せになる術がない」「これを失ったら自分には成功する力がない」といった、自信のなさが原因でもあります。
そこで、過去から今までの中で、成長したことやできるようになったことを振り返ってみましょう。私たちはつい「できている人のできている所と、自分のできていない所」を比べるなどの、公平でない比較をしてしまいがち。しかし「自分の中で」という視点がとても大事です。
日々成長するあなたは、たとえ執着する対象を手放しても、問題を乗り越える力がちゃんとあるはずだと知りましょう。
(3)「執着を手放した後にどうなりたいのか」という目標を考える
執着を手放すだけでなく、その後にどうなりたいかを考えることが、執着を手放す過程において、一番の肝になる部分だといえます。なぜならこの目標が「手放す意欲」の原動力になるからです。
例えば「魅力的な人間になって、お互いを尊敬し合える人との新しい恋を見つけたい」「もっとやりがいのある仕事につきたい」などの目標を立てます。
この時、もともと執着していた対象の奥にある「自分が本当に求めていたものは何なのか」を分析し、目標に入れ込むことがポイントです。
(4)決意(コミットメント)する
その人にとって、執着する対象は価値を感じるものである場合が多いので、少なからず諦めることに抵抗感を抱きがちです。これを乗り越えるには、腹をくくることがとても大事になってきます。これは心理学用語では「コミットメント」と言います。
ですから先ほど立てた目標を、ぜひ心の中で高らかに宣言しましょう。
(5)感謝する
何かを失うことや、傷つけられたことに執着していたのなら、元恋人や今までお世話になった会社など、執着の対象に感謝するのも大切です。
「あなたと一緒に過ごした時間は幸せでした、本当にありがとう」「多くのことを学ばせていただきました、ありがとうございます」のように、心の中で唱えましょう。
感謝するのは、負の感情を乗り越え、その上のステージから物事を見られているということ。また、執着の対象に対して怒りを感じていた場合は、その人や状況を選んだ過去のあなた自身を許すことにもつながります。
だからこそ感謝は、あなたの心の痛みを癒やし、手放しを完了させる強力な手法といえるでしょう。この感謝に行き着くまでには、今まで紹介したプロセスを何度か踏んでいくことが必要になるかもしれませんが、焦らず取り組んでいきましょう。