※このコラムは「バチェロレッテ・ジャパン」シーズン3最終話までのネタバレを含みます。
■亜樹さん緊張から男性パートをうっかり全部話してしまうの巻
バチェロレッテきっての才女・武井亜樹さんの運命の相手を探す旅のラストに残ったのは物理化学者兼うどん職人・櫛田創さんと、エレベーターで理性を失う内科医・実業家の坂口隆志さん。最後のデートは恒例のバチェロレッテの親御さんとの対面です。
今回は亜樹さんのお母様とのリモート対面。表情を大きく変えず、どっしり構えて淡々と話すお母様は大御所政治家みたいなすごみがあり、男性陣が亜樹さんのどんなところが好きなのか、亜樹さんとの相性はどうかを面接のように投げかけていきます。
亜樹さんも緊張しているのか、男性陣に話させるのではなく、男性の大まかなプロフィールは亜樹さんがほぼぼぼ全部話し切ってしまい、男性の話す内容を奪ってしまっていました。「まずちゃんと男性の前提を説明しなくては!」という、亜樹さんの生真面目さを感じます。
■バチェシリーズの必勝法は就活マニュアルを読め
過去シーズンと違い、撮影期間の圧倒的な短さといったハードルがあったこともあり、実際のところ亜樹さんも、男性2人の気持ちもお互いに向き切っていない今シーズン。特に、亜樹さんは「櫛田さんの気持ちに火がつけば飛び込みたい!」と思っている中で、櫛田さんは「ローズをもらったらお友達から始めたい」とはっきり宣言しています。
その状況で、お母様の「亜樹はアメリカナイズされてる部分があって、ストレートな物言いや突き詰める傾向あるけど、そういうの好き? 大丈夫?(意訳)」というお言葉。「まだスタートラインだから! 懸念点になるような情報はまだ言わないで!」と視聴者もヒヤヒヤし、亜樹さんの顔も曇りまくります。
坂口さんは自分からも質問を考えてきていたところが好印象でしたね。新卒の就活でも「何か最後に質問はございますか?」で質問を用意していけ、とよく言ったものですが、バチェシリーズにおいても同様。質問があるだけで前向きな気持ちが見えるのがいいですよね。
前回のグループディスカッションさながらの2on1の話し合いしかり、バチェシリーズ制覇には就活マニュアルを熟読して望むのが必勝法なのかもしれません。
■櫛田さんと亜樹さんの相性の悪さ
顔合わせの後は2人きりのラストデート。櫛田さんとは念願のうどん作りデートです。櫛田講師の指導のもと、料理教室のごとく無駄のないうどん作り指南を受ける亜樹さん。
小姑的に唯一気になったのは、湯切りの瞬間、くっしーが火を止めずに流しに水を切りに行ったところですね。危ないから火を止めてから湯切りに向かってください! 帰国したはずの元消防士・梅谷さんが再度助手席に座って出動する羽目になります!
おいしいうどんを食べながら、話を弾ませる2人。「価値観や結婚観が合う!」と亜樹さんは条件的な面で櫛田さんを評価するのですが、言葉の紡ぎ方が不器用で誤解を生みやすい櫛田さんと、頭の回転が速いがゆえに相手の言いたいことを先読みしてしまう癖があり、時に否定的に捉えてしまう亜樹さんは、コミュニケーションにおいてはあまり相性が良くないように見えます。
■おはぎ問題もコミュニケーションが違えば解決していた説
今回も、「亜樹さんを食べ物に例えるとおはぎ」と言っていた櫛田さん。おはぎと言われて女子が喜ぶのは、多分おはぎが最新スイーツだった江戸時代あたりぐらいなんですが、もちろん亜樹さんも困惑。1,000歩譲って亜樹さんが米農家の娘であることを米で表現し、それがあんこに包まれてかわいくなったねって表現でおはぎなのか? と、視聴者もグルグルと想像を膨らませる中、その答えは「あんこが好きだから亜樹さんを褒めたかった」というもの。
でも亜樹さんはすかさず「くっしーマジで口下手だよ! 生まれて初めて出会ったくらい口下手!」と櫛田さんの答えにど直球で不満を表します。
でもこれも、コミュニケーションの形が違えば、「本当はおはぎではなく、あんこと言ったつもりだった」というスタジオトークでの本音もその場で引き出せて、「私のことを遠回しに好きと伝えてくれようとしたのね」に変わっていたはずなのです。
あと、あんこはこしあんかつぶあんかでも意味がだいぶ変わってくるぞ? くっしーどっちだ??(新たな火種を投げ込む)
■櫛田さんのコミュニケーション負のループ
櫛田さんは普通事件のトラウマもあり、「下手なことを言わないように」と言葉を選びすぎたり、「亜樹さんの琴線に触れてしまった」と感じると焦ってさらにコミュニケーションがうまく運ばなくなったりするループに陥っているようにも見えます。
「なんかもうちょっとないの? 今日最後のデートだよ?」というのも、亜樹さんが本音を出してくれているのですが、この旅で言葉にコンプレックスを抱えて慎重になっている櫛田さんには、ちょっと強すぎてしまったようにも思います。
亜樹さんも櫛田さんの気質を受け入れて、「言い方を変える、先読みしない、真意を探るための対話をする」といったことをすれば、もう少し2人の心が通ったのかもしれません。
そのままで相性のいい人を見つけるか、相性が少し悪くても、お互いが理解して歩み寄りながら櫛田パズルを合わせていくか……。それが相性でありご縁ということでもあるのかもしれませんが。
■亜樹さんの自然体を引き出す坂口さんのコミュ力
一方「正解正解! 坂口パズル大正解です!」でお馴染み、坂口さんとのデートはお互いが自然体。亜樹さんも「今まで付き合ってきた人に近い」というだけあって、リラックスしながら素を出せているように見えます。
ただこれって坂口さんの柔軟性のおかげで亜樹さんがこうなっているんですよね。うっかり失言もしてしまう人間味のある坂口さんですが、基本的なコミュニケーション力が高い。
交際後の男女の交友関係の話題でも、亜樹さんと坂口さんの論点が合っていないことをやんわりとツッコミつつ、言ってないことを先読みする亜樹さんの癖を指摘して「飛躍しすぎ。言葉通りに受け取って欲しい」と伝え、折れるところは折れるなど、彼のコミュ力によって亜樹さんの対話の癖がいい感じにいなされているように見えます。
■亜樹さんをバチェロレッテにしてくれた坂口さん
赤いドレスに青いシャツでトイレのピクトグラムにしかみえない亜樹さんと坂口さんが向かったのはヘリデート。「亜樹さんはヘリ初めてみたいで……」と坂口さんは過去に別の女とすでにヘリ経験済みであることを匂わせながらのデート、からのドライブとチル。
終始亜樹さんはイキイキしていて、カップルらしさが一番見えたデートでした。こっちのデートを見てしまうと、櫛田さんとのうどん作りが、実直な職人にうどん習いに来てただけに見えてきます。
坂口さんの最後の手紙も良かったですね。彼の存在が亜樹さんをバチェロレッテにしてくれました。「いつ落ちるかわかんないから旅の途中で書いた」も言わなきゃ分かんないから全然言わなくていいのに、正直に言っちゃうのもマジで坂口さんだし、それを聞いて「なんだそっか。今日書いたわけじゃないもんね」と、言わなくてもいい素直な本音を漏らしてしまうのもマジで亜樹さん。嘘のない感じで進んでいくのが2人のコミュニケーション、と言った感じです。
■亜樹さんのメンタルを主治医として最後まで支えた坂口さん
「飛び込みたいけど、お友達からの博打ローズ」櫛田か、「気持ちをある程度見せてくれた安牌ローズ」坂口か。どちらに将来をかけるのか、亜樹さんの選択が迫ったローズセレモニー。岩下の新生姜みたいなものに四方を大量に囲まれた、柔らかなピンク色の会場で、2人の男性と最後の挨拶を交わす亜樹さん。彼女は表情にめちゃくちゃ出る人なので、この段階ですでにローズを渡す人がはっきりしていましたね。
亜樹さんの出した結論は坂口さん。確かにこの状況で、櫛田さんに飛び込むのはかなりの勇気がいること。彼女の置かれた過酷な状況を思うと、納得の結論でした。
櫛田さんとのお別れの挨拶では、間に遠近法で小さく立っている小人坂口がシュールすぎて、彼の姿を指で隠しながら見ないと話が入ってこないことだけが気になりましたが。
途中一気に下降したけれど、最終話に向けてどんどんと上昇していった坂口ジェットコースター。笑顔で指輪を渡し、抱きしめてくれる坂口さんの姿に胸がじわっと温かくなりました。
色々なことがあったこの旅。そのせいで最後に自信を失っていた亜樹さんを、坂口さんは主治医として旅の最後まで支え続けてくれました。
からの、まさかこの後に2人のジェットコースターの続きがあったとは……。
■本気と実直さとリアルが生んだ結末
スタジオトークでの「2人はすでに別々の道を歩いている」というまさかの告白。
バチェロレッテという番組柄、ラストの幸せな2人の姿や放送後の各メディアでのカップルインタビューも醍醐味の一つなので、この結果に正直なところ、残念な気持ちを抱いた方も多いことでしょう。ただ、ここでは表面的に成立させて、後からお別れの報告をすることもできたのに、それをあえてしないところに、今回のバチェロレッテの実直さやリアルが詰まっていました。
最初から自分の好みのタイプはあえて伝えず、亜樹さん自身も等身大で臨み、お互いが自然体の姿で相性の合う、将来のパートナー候補を見つけたいという、気概と本気さを感じたこの旅。
だからこそ、最後まで嘘のないストーリーになったのでしょう。その勇気と実直さに拍手を贈りたいです。
■心ではなく頭で恋をしようとしたバチェロレッテ
今回のバチェロレッテの旅は感情でぶつかる場面が少なく、亜樹さんの会話を見ていても、恋をロジックや条件で考えているように見受けられました。「なんとなくドキッとした」というような説明のつかない感情よりも、「あなたは○○だから私と合うと思う」という条件や理屈で自分の心を奮起させている感じ。
感情よりも理性で恋を始めようとしているようで、恋愛というより婚活感が強かったように思います。恋をしたいけれど条件から入ってしまい、心ではなく頭で恋をしようとしてしまう婚活あるある。そんな、新たな形のバチェロレッテ像を生み出してくれました。
■同志発言でまさかのオカン伏線回収
亜樹さんのお母様が櫛田さんに言っていた「そんなに突き詰めて話をしなくてもというのがお好みであれば、あれ? って思うかも」という言葉が、スタジオトークの「坂口さんの同志発言」で伏線回収されていたのも笑いました。
MCの吉村さんが、亜樹さんと坂口さんの関係を「同志」と表現したことに対し、同志ではないと主張し、坂口さんが折れた後も周囲を巻き込んで、同志の定義を突き詰めようとしていた亜樹さん。
「番組を一緒に作った同志」ではなく、「あくまでパートナー候補」であるという、バチェロレッテとしての亜樹さんのプライドだったのかもしれません。
従来とは違う、1カ月という短期間かつALL海外ロケという条件の違う場で、今までのシリーズとは違った難しいことや過酷な場面もあったことかと思います。そのような中で、勇気ある決断とリアルな恋愛を見せてくれた亜樹さんを始めとした出演者の方々に感謝をしたいですね。また次回はバチェラー考察で会いましょう!
(やまとなでし子)
『バチェロレッテ・ジャパン』シーズン3概要
『バチェロレッテ・ジャパン』シーズン3
配信開始日:2024年6月27日(木)20時より独占配信中
話数:全9話
6月27日(木)20時 第1話-第4話
7月4日(木)20時 第5話-第7話
7月11日(木)20時 第8話-第9話
作品ページ:https://www.amazon.co.jp/dp/B0D3TTMLKX
製作:Amazon
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