人間関係に悩まず生きたいあなたへ。『次につながる対話力~「伝える」のプロがフリーランスで 30 年間やってきたこと~』書評
仕事、結婚、からだのこと、趣味、お金……アラサーの女性には悩みがつきもの。人生の岐路に立つ今、全部をひとりじゃ決め切れない。誰かアドバイスをちょうだい! そんな時にそっと寄り添ってくれる「人生の参考書」を紹介。今回は、『次につながる対話力~「伝える」のプロがフリーランスで 30 年間やってきたこと~(木場弘子/SDP)』を、ライターのミクニシオリさんが書評します。
どんな社会人も「誰かと会話すること」を抜きに働くことはできません。エンジニアだってオンラインの会議には出席するでしょうし、YouTuberだって案件をもらった時には、クライアントと会議することもあるでしょう。
一見自由に見えたり、人と関わる機会が少なそうに見える職業の人にとっても、会話を抜きに仕事をすることは不可能です。組織に属していれば社内の人との会話が増えるでしょうし、組織に属していなくとも、社外の人との会話は発生します。
人生から切り離すことはできない会話ですが、多くの人が自身の会話力についてはどこか、諦めてしまっているようにも思えます。会話が苦手なのは性格や人間性の問題で、努力しても改善できないと考えていませんか?
今回ご紹介するのは、会話に自信が無いとは考えていない人も、読めばもっと会話力が磨かれる本。ビジネスでもプライベートでも生かせるので、すべての社会人必見です。
【この本を読んで分かること】
・毎日何気なくしている「会話」の重要性
・会話上手になるために努力できるポイント
・人に嫌われない会話・好かれる会話のコツ
ビジネスでも、プライベートでも……会話力は誰にとっても必要なスキル
『次につながる対話力「伝える」のプロがフリーランスで 30 年間やってきたこと(木場弘子著/SDP)』を書いた木場弘子さんは、TBSの局アナからフリーキャスターとして独立し、現在は大学の客員教授も務めているキャリアウーマン。37年の社会人生活の中で、常に「伝える」ことを仕事としてきた女性です。
原稿や台本を読み伝える、アナウンサーやキャスターという仕事。一握りの人間しか実践できない職業です。彼女の人生においての「伝える」とは、私たちが普段行っている会話とは比べ物にならないほど、とにかくプロ意識が高い……!
キャスターなんだから当たり前、と思う人もいるかもしれませんが、私たちだって、毎日人と話しています。何十年もやっているのだから、そろそろプロになったって良いはずなのに、放っておいても一生成長しないのが会話力なのです。
私たちは会話無しに生きていくことなど到底できませんから、会話や対話の力を身につけることは、誰にとっても大きなスキルとなります。ただ、毎日何気なく行ってしまうものなので、意識して改善するのが難しいと感じる人が多いのでしょう。
しかしこの本を読んでみると、会話が上手い人がしている努力がどんなものなのか分かる上に、会話が上手いことでどんなメリットがあるのかを知ることができます。初対面の人に好感を与え、ただ話すだけでなく「レベルの高い対話」を実践できれば、どんな立場の人が相手でも信頼してもらえるようになるのです。
会話のプロの語りから何気なくやりがちな「一方通行話」のデメリットを学ぶ
まず気になったのは「伝える・伝わる」の違いについて。自分が常日頃考えていることについて話す際など、いつも異常に饒舌に喋れた時や、相手に反論の余地を与えないような一言を話せた時、快感を覚えた経験がありますが、自分が気持ちよくしゃべっているからといって、相手に伝わっているかといえばそうではない、と木場さん。
会話には常に相手がいるので、自分にとって都合が良いだけの会話では、相手に伝わりきらないことがたくさんあるのです。「こんなに言ってもなんでわかんないかな」と思うことは日常に多々ありますが、これは自分が「伝わる会話」を実践できていないからなのだと、思い知ります。
「相手の理解力が弱いんじゃない?」と言われればそれもあるのかもしれませんが、自分が話し手になる時に気をつけられるのは、自分の伝え方のみです。
自分が気持ちよく喋れても、相手に納得してもらえなかったり、共感を得られないと、孤独やイライラを感じたりします。会話のプロである木場さんの会話に対する姿勢や考え方に触れていく中で、普段何も考えずに話すだけでは、本質的には会話と呼べないのかもしれないと思い知りました。
それに本の中では、伝え方だけでなく聞き方についても触れられています。会話中は常にどちらの立場もくり返すことになるので、話し方を鍛えるだけでも、聞き方を鍛えるだけでもだめなのだとも分かりました。
会話を学べば人に好かれ、人間関係で悩まなくなる
木場さんにとっての会話とは、常に相手を思いやったものであるように感じます。性格が優しいからそうしているというよりも、レベルの高い会話を実践するために、常に相手の立場や感情の動きを捉えながら話しているのだといいます。
本の中では、木場さんが使いこなしている会話テクが、エピソードを交えながら紹介されていきます。すると、自分が話している時には気づかなかったことに気づかされるのです。
たとえば複数人で話していると、「よく話す人」に出会うことがあります。話し好きにもいろいろいて「よくしゃべっているけど、相手に気を使わせてしまう人」もいれば「よくしゃべり、みんなを笑顔にする人」もいるわけですが、この両者は何が違うのかが分かったのです。
せっかく会話上手になるなら、後者を目指したいもの。もちろん、木場さんもみんなを笑顔にする話し手です。この本は会話力の本ですが、一歩引いてみると「人に好かれる方法」についての話でもあると感じました。
私たちはコミュニケーションを通じてさまざまな人と関わっています。コミュニケーションが上手ければ自然と人に好かれますし、誰かに嫌われることも少なくなります。
一般人である私たちが会話についてしっかりと学べば、プライベートも仕事も上手く回り、人間関係における悩みが少なくなるのだろうと感じました。
挨拶、笑顔、スピード、話す順番、会話の掘り下げ方など、テクニックで努力できる点から、ついついやりがちなマウント、お話泥棒、知ったかぶりなどのちょっとしたミスのデメリットなど、本の中には木場さんの金言が盛りだくさん。読み終われば必ず、自分の会話における欠点が見つかるでしょうし、どう改善したら「コミュ強」になれるのかも、分かるはずです。
読み終わりに感じたのは、木場さんを始めとするコミュ強たちは、どんなシーンでも周囲の会話を掌握するゲームマスターのような存在であること。口を開けば周囲の好感を集め、誰かの話を親身に聞くこともできる、時に場の空気を刷新することもできる、そんな存在。
会話について学び続けたら熱狂的なファンも周囲にできちゃいそうだし、この世で一番強いのは会話の上手い人なんだ、と思い知らされました。
実際に目指すかどうかは置いておいて(笑)、私たちが考える以上に、会話力の高さは人のレベルを底上げしてくれると確信しました。読んだ人、読まない人で、きっと大きな差が生まれます。今の自分を客観的に知るためにも、会話のプロの話に耳を傾けてみてください。
(ミクニシオリ)
※この記事は2024年06月06日に公開されたものです