「頂いたメールで恐縮ですが」の意味と使い方は? 例文・言い換え表現を解説
「頂いたメールで恐縮ですが」は、メールの返信で別件について触れる時に使う言葉ですが、ビジネスシーンでの使用は好ましいのでしょうか? 今回は、「頂いたメールで恐縮ですが」の意味や言い換え表現について、ライティングコーチの前田めぐるさんに詳しく教えてもらいました。
「頂いたメールで恐縮ですが」という言葉を目にしたことがありますか?
これは、メールを受け取った側が別の用件を伝えたい時に使う表現です。
今回は、「頂いたメールで恐縮ですが」の意味と使い方のポイントをマスターし、自信を持ってこの言葉を使えるようになりましょう。
「頂いたメールで恐縮ですが」の意味
「頂いたメールで恐縮ですが」は、メールをくれた相手への返信で、自分からも伝えたいことや聞きたいことを書く時に使われるフレーズです。
「頂いた」は「いただいた」と読み、「もらう」の謙譲語「いただく」の過去形で、相手への敬意を示す働きがあります。
いただく【頂く】
(4)謙譲の意を表す語。(ア)「もらう」の謙譲語。賜る。頂戴する。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)
「恐縮」は、身も縮むほどに恐れ入るという意味で、相手に対して申し訳なく思う程の感謝や謝罪、依頼の気持ちを示す言葉です。
きょうしゅく【恐縮】
身もちぢまるほどに恐れ入ること。
感謝や謝罪や依頼のことばとしても用いる。
(『広辞苑 第七版』岩波書店)
以上のことから、「頂いたメールで恐縮ですが」は「頂戴したメールで、非常に恐れ入りますが」という意味になります。
「頂いたメールで恐縮ですが」を使う時の注意点
ビジネスメールでは、1通につき用件は1つとするのが一般的です。
それには、次のような理由があります。
・長文メールはスクロールが多くなり読みにくい
・相手が送ったメインの用件に別件を添えると見逃されやすい
・複数の用件を詰め込むと、返信する相手を困らせることがある
・書き方によっては、論旨が混乱することがある
別件に関する連絡をしたい場合、まずは返信メールと分けて送ることを検討しましょう。
それでも「頂いたメールで恐縮ですが」を使うのであれば、いくつか注意するポイントがあります。
(1)わざわざメールを分けるほどではない場合に使う
別件を1通のメールにまとめることで長文になったり、論旨が混乱したりすることは避けたいものです。
しかし、わざわざ分けるほどの用件ではないのであれば「頂いたメールで恐縮ですが」を使っても良いでしょう。
メールを受け取る側の気持ちになって、文章が長くなりすぎていないか、メインである用件が埋もれてしまわないかといった点に考慮して使ってみてください。
(2)冒頭で予告して、読み逃しを防ぐ
相手の心境を考えれば、自分が送ったメールの返信内容を読んだ時点で、そのメールは役割を終えています。
そのため、最後まで読んでもらえず、こちらからの用件の記載に気付かない恐れもあるでしょう。
そこで、冒頭のあいさつの中で別件があることを簡単に予告しておき、相手の注意を引くような工夫をするのがおすすめです。
(3)「頂いた」は漢字で書く
「頂いた」は「頂戴した」という意味です。
「読んでいただいた」のように謙譲の意味を示す補助動詞ではないため、漢字で書きましょう。
「頂いたメールで恐縮ですが」の使い方と例文
「頂いたメールで恐縮ですが」の意味や注意点が分かったところで、次に使い方と例文を紹介します。
(1)「頂いたメールで恐縮ですが、〇〇の件について……」
日頃から共通の話題であったり、相手から質問を受けていたりして、お互い気になっていると推察される件について使える表現です。
例文
頂いたメールで恐縮ですが、先般〇〇様からお尋ねいただいた〇〇の件について、後半でご回答のみ申し上げます。ご確認いただけましたら幸いです。
(2)「頂いたメールで恐縮ですが、〇〇様にお伺いしたいことがございます」
簡単な質問があり、わざわざメールを分けると仰々しくなりそうな場合に使います。
例文
頂いたメールで恐縮ですが、〇〇様にお伺いしたいことがございます。本件の後に付記しておりますので、ぜひご確認いただきますようお願いいたします。
(3)「頂いたメールで恐縮ですが、ぜひお伝えしたいことがございます」
いつメールを読んでもらえるか分からないほど多忙な相手でも、自分が送ったメールの返信であれば、開封してくれるはずです。
とにかく、機会を逃したくない、ぜひ伝えたいことがある場合に使うと良いでしょう。
例文
頂いたメールで恐縮ですが、ぜひお伝えしたいことがございます。本メールの最後に書き添えておりますので、お目通しくださいますようお願いいたします。
「頂いたメールで恐縮ですが」の言い換え表現
「頂いたメールで恐縮ですが」は、時と場合に応じて言い換え表現を活用するのもおすすめです。
(1)「頂いたメールで誠に申し訳ございませんが」
申し訳ない気持ちを明解に表したい場合に使えるフレーズです。
例文
頂いたメールで誠に申し訳ございませんが、私からも別件についてお伝えしたいことがございます。
(2)「別件で恐縮ですが」
別件を書き添えることに対して恐縮する気持ちをストレートに表す言い換えです。
例文
別件で恐縮ですが、私からもお知らせしたいことがございます。
(3)「別件で誠に恐れ入りますが」
「誠に」を加えて、恐縮する気持ちを強調した言い方です。また「恐れ入りますが」は「恐縮ですが」を柔らかく言い換えた表現です。
例文
別件で誠に恐れ入りますが、私からもお伺いしたいことがございます。
「頂いた電話で恐縮ですが」を使う時の注意点
余談ですが、電話でも同じような状況があり、「頂いた電話で恐縮ですが」という表現がよく使われます。
リアルタイムでやり取りする電話では、タイミングを逃すと大事なことを次に持ち越してしまう可能性がありますよね。
そこで、せっかくの機会なので自分から伝えたかったり、聞きたかったりしたことを相手の用件が終わった後に話すわけです。
通話時間も長くなり、料金は相手が負担するので、メール以上に恐縮する状況でしょう。しかし、手短に伝えられるなら、かけ直す手間と時間が省けてお互いに効率的だとも考えられます。
メールでも電話でも本来の用件と別の話をする場合は、相手の状況も考慮しながら判断するのが良いでしょう。
「頂いたメールで恐縮ですが」はメールの返信で別件について触れる時に使う言葉
「頂いたメールで恐縮ですが」は、相手からもらったメールへの返信で、別件について触れる際に使う言葉です。
ビジネスメールでは、分かりやすく効率的でありつつも礼を失しないことが重視されます。そのため、基本的には1通につき1案件とし、別件があれば分けて送るのがおすすめです。
ただし、要点を簡潔にまとめることができ、1通で済ませた方が良いと判断できる場合には、気を付けたいポイントを押さえて「頂いたメールで恐縮ですが」を使うと良いでしょう。
(前田めぐる)
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※この記事は2023年05月29日に公開されたものです