チャンスは断らない「前進キャリ」。宝島社北嶋瑛美さんの働き方
「バリキャリ」「ゆるキャリ」……女性の働き方って、本当にこの2つだけなの? 100人いれば100通りの働き方がある。一般企業で働く女性にインタビューし、会社の内側や彼女の働き方を通して、読者に新しい働き方「○○キャリ」の選択肢を贈る連載です。
取材・文:鈴木麻葉/マイナビウーマン編集部
撮影:大嶋千尋
突然ですが、みなさんは毎朝のルーティンはありますか? 私は、出社の日は必ずと言っていいほど、コンビニに寄ってアイスコーヒーとおにぎりを買って職場に向かいます。
早起きして家で朝ご飯……なんて理想的ですが、そんな理想通りにはいかず、もっぱら自席でおにぎりを食べる毎日ですが、私にとって「アイスコーヒー」は絶対に欠かせないもののひとつ。これを飲まないと1日が始まらないというくらい飲むことが習慣化しています。
ただ、アイスコーヒーを飲む時に、ひとつだけストレスがあります。それは、時間が経つとカップが結露して、デスクが濡れてしまうこと。その都度、ティッシュで拭くのが面倒くさい……。同じようなストレスを抱えている方も多いのではないでしょうか?
実はそんな身近なストレスを解消する画期的なアイテムがあることをご存知ですか? 宝島社から発売された「カップコーヒータンブラー」は、コンビニのカップコーヒーをそのまま入れることができるタンブラーで、真空断熱構造のため6時間後も飲み頃の温度をキープしてくれるという優れもの! 累計200万個も売れているヒット商品です。
その大ヒット商品を世に送り出したのは宝島社マルチメディア編集局の北嶋瑛美さん。今回はヒット商品の仕掛け人・北嶋さんをマイナビウーマン編集部が直撃し、商品開発の裏側や北嶋さんの仕事への考え方について、お話を伺いました。
本当は転職する気がなかった!? 宝島社に入社したきっかけ
まず、新卒でスタイリングライフ・ホールディングスという会社に入って、雑貨小売り店「PLAZA」に正社員として配属されました。そして、25歳の時に宝島社に契約社員で転職し、約10年になります。
そうです! 店頭で2年半働いていました。各お店ごとに商品を仕入れるので、お店として売り出したいもの+自身でセレクトした商品を仕入れるお仕事をしていました。
そうですね。関連性ないですよね(笑)。
実は大学時代に2年間、出版社でアルバイトしていたんです。といっても週1、2回行って雑用のお手伝いだったのですが、その経験もあって就活でも出版社を受けていました。
そうですね。行きたい気持ちはあったんですけど、ちょうど就活の時期がリーマンショックのタイミングで、周りも夢を追うよりも安定を取るようになって……。今まで一緒に飲んでいた友達が、銀行や商社を狙ってて、私にとっては衝撃的な出来事でした(笑)。
本当に出版社に入りたかったら新卒で入社しなくても、ライターになるとか契約社員で入るとかあると思うんですけど、周りの空気に呑まれて「私も正社員で入社しなきゃ」と思い、その中でも一番興味のあったPLAZAに入ったんです。
いえ(笑)。PLAZAの仕事は本当に大好きで、正直転職しようなんて気持ちはありませんでした。本当にたまたま「今、宝島社って募集しているのかな?」と思い立ち、検索してみたら、契約社員の募集があったので、軽い気持ちで応募したのがきっかけです。
で、受かっちゃって‥…(笑)。真剣に転職を考えていたわけじゃなかったので、すごく悩みました。
新卒の時は周りに呑まれて正社員を選びましたが、宝島社に受かった当初、まだ25歳だったこともあり、契約社員と正社員の差もそこまで分からなかったんです。大きく金銭的に変わることもないし……。なので、そこは気にしていませんでした。
ただ、PLAZAの仕事が好きだったので、転職は悩みましたね。当時の上司に相談したところ「向いていると思うよ」と背中を押してもらい、転職に至りました。
なので、動機は「勢い」ですね(笑)。若かったし、受かったのは縁なのかなと思って直感で転職しました!
まだ世に知られていない魅力的な商品を広めたい!
転職しようと思って探すよりも、たまたま見つけて受かって……という方が縁を感じますよね。そして、転職した北嶋さんですが、当初から希望する業務に携われていましたか?
入社後、付録つきの本を作る部署(現マルチメディア編集局)に配属されたのですが、どんな仕事をするのか知りませんでした(笑)。でも今思えば、自分のやりたいことにぴったりな部署に入れたと思います。
私自身、「何をしたいか」を考えていた時に、自分が良いと思うものを自分の言葉で伝えていく職業に就きたいと思っていることに気づきました。
世の中にはすごく良いものなのに知られていない商品がたくさんあるんですよね。前職の時、特にそれを感じていて……。100種類あったら1種類が100個売れる世界。残り99種類も魅力的な商品なのに、知られていないことに悲しさを感じていました。
現在の部署では、今まで培ってきた商品知識やヒットする商品を見抜く感覚、PRの重要性を応用していけるので、結果的にぴったりな部署に入れたと思っています!
日常の「ちょっと嫌なこと」がヒット商品のアイデアに
現在はマルチメディア編集部で、ブランドやキャラクターの付録つき本を作る部署にいます。付録づくりはもちろんのこと、商品の企画からブランドへの提案、マルチメディア商品の編集、SNSのPRと一貫して行っています。
私は第4編集部の編集長として、部のマネジメントをしながら、本の制作も行っています。
そうですね。企画力だけでなく、プレゼン力も身につくと思います。毎週行われる部の企画会議に合わせてプレゼンを行うのですが、みんなはそこで話し方を学んでいきます。なので、実際にブランドの方に提案する際には、自然と話せるように成長しているんですよね。
いろいろな方法があると思いますが、私はインターネットでトレンドを調べた後 、自分の目で見て検証しながらアイデアを集めていますね。ネットの情報はすぐ手に入りますが、世の中のみんなが本当に知っている情報かは分からないんです。なので、本当に流行っているのかを街に見に行って確かめています。
洋服の買い物と近いですかね~。ネットで見て「かわいい」と思ったものをお店に見に行く感覚ですね。
ある時、コンビニで販売するマルチメディア商品を企画することになったんです。その時に、自分が一番コンビニで買うものってなんだろうと考えたら、アイスコーヒーをよく買っていることに気づきました。
企画を考える時は、ちょっと嫌なことが改善されるということをポイントに考えていて、コーヒーを買って嫌なことって結露だなと気づいて……。既に男性向けにお酒を飲むようなタンブラーを発売していて好評だったので、女性向けにコーヒーカップごと入れられるタンブラーを作ったら便利なんじゃないか。そして、コーヒーと一緒に買えるコンビニで売ったらいいのでは、と思ったことが発端です。
良い商品を作りたい一心で築いたキャリア
元々契約社員で入社して、現在は管理職としてご活躍されているとおっしゃっていましたが、今の働き方は想定していましたか?
いや、全然(笑)。元々出世したい欲もなかったし、先のキャリアも考えていませんでした。編集長になったのは29歳だったのですが、その時も「え、私……!?!?」と驚いてしまって。でも、みんながみんなこんなチャンスをもらえるわけじゃないと考えたら、ありがたいことだなと思い、お話を受けることにしました。
バリバリ働きたいと思ったことはないです! 目の前のことをこなしていたら今になっていたという感じ(笑)。なので、これから先のことも正直あまり考えていないですが、いただいたチャンスは断らないと決めています。
キャリアというよりは、仕事としていいものを作っていきたいという気持ちはあるので、それを積み重ねていくことが大事だと思っています。ここから自分が「部長になってえらくなるぞ~!!」とは全く思い描いていないですね(笑)。
編集長という立場をいただけてありがたいという気持ちはもちろんあります。でも、やっぱり根底に、良い商品を作りたくてこの会社に入ったのだから、手を抜かないで仕事したいという気持ちが大きいですね。
そうだと嬉しいのですが(笑)。
よくビジネス書とかに「良いところを伸ばせ」と書かれているじゃないですか。でも私がみんなの良いところを決めるなんておこがましくない? と思ってしまって……。価値観は決めつけずに、みんなのやりたいことをやれる環境にできるよう心掛けていますね。
最初は私なんかでいいのだろうか、と悩むこともありましたが、悩んだところでやれることはないと気づきました。それから、逆に若さを武器にできるのではと考えるようになって……。
空気を掻き乱せるのも若い特権ですよね。29歳って社会人としては決して若いわけではないですけど、一番若い立場を29歳でもらえたというのは、またフレッシュな環境をもらえたことと一緒だなと思って、思った通りに突き進むことにしました。
そうなんです(笑)。めっちゃポジティブです!!! 基本的に思い詰めることもないですし(笑)。
客観的に考えるように心掛けています! 気持ちで判断しないようにしていますね。悩んでいる時間はもったいないから。
仕事のことって考えれば考えるほど悩んじゃうこともありますよね。でも、それをプライベートの時間に考えたところで解決することはないと思うので、仕事の時間に集中して考えるようにしています。
仕事に集中できるようにプライベートも楽しむ。プライベートが充実した状態で仕事に挑んだ方が結果的にすべて効率が良くなると思っています!
本当にその通りだと思います! 北嶋さんの仕事に対する熱い思いをたくさん伺えて勉強になりました。本日はありがとうございました。
※この記事は2022年08月26日に公開されたものです