悩めることは素敵なこと。鈴木愛理流の幸せの見つけ方
あこがれの人、がんばってる人、共感できる人。それと、ただ単純に好きだなって思える人。そんな誰かの決断が、自分の決断をあと押ししてくれることってある。20~30代のマイナビウーマン読者と同世代の編集部・ライターが「今話を聞いてみたい!」と思う人物に会って、その人の生き方を切り取るインタビュー連載。
取材・文:ねむみえり
撮影:大嶋千尋
編集:照井絵梨奈/マイナビウーマン編集部
仕事がすごく好きだ。
でも時々、仕事以外の生活をないがしろにしていないだろうか、と思う時がある。仕事と自分、どちらも大切にする方法はないかと考えているタイミングで、この仕事の依頼がきた。
鈴木愛理さんの連続ドラマ初主演作となる『ANIMALS-アニマルズ-』。宣伝ビジュアルに書かれている「恋も仕事も弱肉強食」という強いコピーに衝撃を受けつつも、同時に公開された特報を再生すると、鈴木さん演じる「海」は仕事に忙殺されて、自分のケアは後回しになりボロボロになっている。
何かを頼まれたら、つい自分のことを後回しにして引き受けてしまう、という人は少なくないのではないか。
「そういう方からしたら、このドラマは本当にど真ん中で響くところがあると思います。でも、そういうタイプの人って意外と多いのかもしれません」と話す鈴木さんもまた、昔はそういうタイプだったのだと言う。
大好きな「歌」を仕事にして、6月で20周年を迎える鈴木愛理さん。好きなことを仕事にし続けている彼女は、どうやって仕事も自分も大切にしてきたのかが気になった。
仕事とプライベートは分けられる?
『ANIMALS-アニマルズ-』で演じた鹿森海は、自分と似ているようで少し違うという鈴木さん。
演じてみて、「今回に関しては、自分の中にある海ちゃん要素をすごく広げて海ちゃんにしていくタイプだったかもしれない」と振り返りながらも、「一番似てるなと思うところは、人にお願い事をされたら断れないところです」と続けた。
「プライベートとかでも、頼られると嬉しくなっちゃって、やりたいって思っちゃうタイプなんです。『忙しい』とか、『できなさそう……』みたいなのを、一旦横に置いて、やれる隙間でやりたいって言っちゃうというのは、ちょっと前の私にすごい似てるなって思いました」
しかし、仕事もプライベートも、頼られたことをすべて受け入れていたらどうしても犠牲になってしまうのが、自分の時間。
鈴木さんに、仕事を頑張ってきた中で自分の時間を後回しにしたことはあるのかどうかを聞くと、「そればっかりですね」と返ってきた。
「プライベートを犠牲にしてるつもりがないと思いながら、実際は犠牲にしまくってました。でも、プライベートも青春も削って、みんなに夢を与えるっていうのがアイドルという仕事なので。学校の放課後に遊ぶとか、花火大会に行くとか、そういう経験はないんですけど、自分の好きなことをさせてもらっているし、仕事も充実していたし、マイナスな意味で削っていた感覚は無いんです」
「犠牲にした」「削った」という文字だけ見ると、無理に我慢をしたような印象を受けるが、目の前で話す鈴木さんの顔からはそういう様子は伺えなかった。
「お仕事を一生懸命しすぎて、プライベートで何をするにも仕事に向けてやっちゃうというのはありますね。例えばご飯に行くにしても、なんで鶏肉を選んだのか考えると、タンパク質が多いと体が締まるからだ、とか。仕事が0のプライベートの時間ってあんまりないかもしれないです。でもそれも嫌いじゃないっていうのが怖いんですよね(笑)」
彼女の話を聞きながら、これは仕事が好きな人には特に分かる部分もあるのではないかと思った。常に頭の中のどこかに仕事があって、無意識のうちにプライベートで起きたことも仕事に紐付いている……というような。
彼女は「もし仕事を0にしたら、戻ってこれないと思います。プライベートを充実させるために、プライベート100になっちゃうから。だから自分には今のままで向いていると思います」と続けたが、今は唯一仕事のことを考えない時間があるという。
「料理してる時と、スーパーにいる時は、唯一仕事のことを考えない時間なんです。今日はこの魚がある! ってルンルンして家に帰って料理して、美味しいものを食べて、あぁ幸せ……っていう時間まではオフにしたいです」
なんとなく、仕事とプライベートの境目をきっちり分けて生活するほうがいいのだろうかと思っていたけれど、仕事とプライベートを織り交ぜて生活したっていいのだと肯定された気持ちになった。
仕事は好きだけど、好きだからつらい
楽しく仕事をしている人が直面する問題として、「疲れた」「つらい」というようなネガティブな感情を出しにくいというものがあるのではないかと思っている。
鈴木さんも「つらい」と思ったことがあるのか聞いてみると、「何度もありました」と答えてくれたことに少し驚いた。
「好きなことを仕事にするからこそ、それを評価されることってすごく苦しかったりします。仕事を否定されると、自分をまるごと否定されてる気持ちになっちゃったりする時もあって。
仕事はやめたくないけど、歌は好きだからこそやりたくないとか。℃-uteからソロになる時も、一人で歌を歌う自信が無かったから、℃-uteの頃の自分を更新できないならやりたくないと思って、やりたくないって言った時期もあったし、結構自信無いんですよ」
明るくてポジティブなイメージの彼女から、「自信が無い」という言葉が出たのは意外だった。
「ネガティブをポジティブに変えるのは得意なんですけど、大事な決断の時はいつも悩んじゃいますね。学生の頃までは、自分のことをめちゃめちゃポジティブな人間だと思ってたんです。でも、元々はすごく悩みやすくてネガティブだったのを、母がそれをポジティブに変換する訓練を日々してくれていたんです。
だから、“ネガティブをポジティブに変える”っていう作業が上手なだけで、根っからのポジティブではないんです。ただ、悩んだことがあるからこそ、誰かが悩んでいる時にポジティブに考え方を変えるお手伝いをしてあげられる力はつきました。ネガティブをポジティブに切り替えて考えていくことが結構大事かなと思うので、悩めることってすごい素敵だなと思います。悩むことで切り替えが生まれるので」
悩むことは時間の無駄だという言説を聞くたびに、「こんなことで悩んでしまっているから自分はダメなんだ」と凹むことが多くあったが、鈴木さんの「悩めることはすごく素敵」という言葉で、まさしくネガティブからポジティブへの切り替えをすることができた。
悩むことは悪いことではない、という鈴木さんの考え方は、一度立ち止まって物事を考える時間を取りにくくなっている今の時代だからこそ、大切にしたいと強く思った。
自己満足は一番幸せな状態
最後に、「将来こういう状態になったら幸せ」という状態はあるかどうか伺うと、「今もすごい幸せなので、明日が今日よりもまたちょっと幸せだったら幸せだなって思うようにしてます」と返ってきた。
「10年後とかにこうしたいとかっていうのは考えますけど、細かく決めすぎると自分に圧がかかりすぎてダメになるタイプなんです」と話す彼女は、日々絶対に乗り越えられる目標を設定して、それをクリアすることで幸せを感じて暮らしているそう。
「モーニングルーティンの理想とかはあるんですけど、多分私は3日ぐらいでできなくなっちゃうと思うので、ちゃんとできることをルーティンにしてます。
例えば白湯を飲むにしても、理想をいえばちゃんとやかんでお湯を沸かして白湯を作りたいけど、ウォーターサーバーでお湯と水を割って、『これが私の白湯!』って決めて(笑)、それを飲んでるからそれは達成しているとするとか。『自分はやったよ』っていう自己満って本当に大事だなって気づきました。誰にも迷惑をかけないし、自己満足っていい意味に捉えたら一番幸せじゃないですか」
彼女の話を聞いて、「幸せ」ってこんなに手の届くところにあったのかとハッとした。人それぞれの幸せのカタチがあるはずなのに、自分が周囲と比較して「幸せ」を定義していたことに気付いた。
「笑顔が増えるといいなって思うけど、笑顔だけが幸せじゃないことも確かだし、充実感というか、心の満たされ度が高い毎日を過ごせたら、それはもう幸せなのかなって思います」
周りと比べなくても、自分自身が充実感を感じていたらそれは幸せなのだ。そう思うと、仕事と生活への向き合い方が変わっていくような予感がしている。
『ANIMALS-アニマルズ-』
放送日程:2022年6月23日(木)夜9時45分〜(全8話、2話目以降毎週木曜夜10時~放送)
放送チャンネル:ABEMA SPECIALチャンネル
第1話放送URL: https://abema.tv/channels/abema-special/slots/AFstCph1ugws3d
「ABEMA」公式YouTube番組予告映像URL:https://youtu.be/SlqXpQ_4rVI
※この記事は2022年06月23日に公開されたものです