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『100日間のシンプルライフ』から考える“本当に必要なモノ”

#金曜夜の映画トリップ

トモマツユキ

映画のなかにはいろいろな人生が存在し、自分では経験することができない世界がたくさんあります。そんなめくるめく映画の世界を、映画好きイラストレーターのトモマツユキさんが紹介。金曜夜は、映画の世界にトリップして、非日常を体験してみてはいかがでしょうか?

こんばんは。イラストレーターのトモマツユキです。

近づいてくる春に向けて、春服を買おうと出掛けたのに、冬物セールをしていて、必要ないものまで買っちゃった……なんてことはありませんか? もったいないと分かっていても衝動買いが止まらない方や、買い溜めしておかないと不安という方もいますよね。

今回は、そんな買い物中毒な人にぜひ観て欲しい映画『100日間のシンプルライフ』をご紹介します!

所持品ゼロ!? あなたなら何を取り戻す?

『100日間のシンプルライフ』の主人公は、人工知能搭載アプリ「NANA」を開発し、「NANA」におすすめされた物はなんでも買ってしまうスマホ依存症のパウロ(フロリアン・ダービト・フィッツ)と、コンプレックスの塊でルックスを磨くためのアイテムが手放せないビジネスパートナーのトニー(マティアス・シュバイクホファー)。

二人は幼馴染で兄弟のような関係なのですが、考え方や行動が全然違うので、些細なことですぐにけんかになってしまいます。

ある日、二人はパウロが開発したアプリ「NANA」をアメリカ企業へ売り込むプレゼンに挑みます。

パウロは使う人が「幸せになることを考えてアプリを作った」とアピールするのに対し、トニーは「アプリを使って得た情報で大儲けすることができる」とアピール。

結果、興味を持った実業家にアプリを買い取ってもらえることになり、プレゼンは大成功しますが、「NANA」を金儲けだと主張したトニーを、パウロは許せません。

そして、アプリが売れたお祝いパーティーの最中に二人は大げんか! お酒の勢いもあって、パウロはトニーにある勝負を吹っ掛けます。

それは、“服や家財など、全ての所持品を倉庫に預け、1日に1つだけ必要なものを取り戻して、お金を使わずに100日間生活する”という勝負だったのです。

果たして二人は何も持たない状態から100日間乗り切ることができるのか? 「本当に必要なモノ」とは何なのかを見つめ直すストーリーです。

実はこの『100日間のシンプルライフ』は、フィンランドのドキュメンタリー映画『365日のシンプルライフ』を大胆に脚色した映画です。

『365日のシンプルライフ』は、監督のペトリ・ルーッカイネン自身が、彼女に振られたことをきっかけに、自分の部屋はモノだらけなのに全く幸せではないことに気づき、所持品を全て倉庫に預けて、1日に1つだけ取り戻すという実験をして、自分が何を求めているのかを見つめ直すドキュメンタリー作品。

フィンランドの雪が積もる冬空の下、裸一貫で倉庫までコートを取りに行くところから始めるという徹底ぶりがすごいです(笑)。

一方、『100日間のシンプルライフ』の方は、パウロとトニー、二人の主人公の求めるモノが全然違うので、どちらかに感情移入をしながら観ることができるし、フィクションなのでコメディーとしても面白い映画です!

仲が良いんだか悪いんだか分からない、パウロとトニーの関係がとても微笑ましいし、ドラマティックな展開も用意されているので、楽しむならこちらがおすすめ。

どちらも「心の奥底にある自分の欲求」を見つめ返すことのできる作品で、なんとなく買い溜めしてしまっていたり、衝動買いがやめられない人は必見の映画です。

自分の本当の欲望とは?

パウロが開発した人工知能アプリのNANAは、持ち主の趣向や行動に合わせて会話ができ、ぴったりな商品をおすすめしてくれる、「siri」に学習機能がついたような高機能なスマホアプリです。

とっても便利なんですが、パウロは彼女と別れてからスマホ依存症になり、NANAに言われたらなんでも買うようになってしまいました。そして、買うことで自らの欲求を満たすだけなので、部屋には履いてないスニーカーなど、放置された物の山が……。

一方のトニーは、特定の彼女は作らず、何にも依存せずに生きていて、目的のためなら手段も選ばない完璧主義者なんですが、35歳にして頭皮が少し寂しくなってきたことを気にして育毛剤が手放せないし、さまざまな美容グッズを使って念入りに身嗜みを整えます。

そうやって自分の欲求をモノによって満たしていた二人が、一度全てのものを手放して、何から順に取り戻すのか……。そこからさらに二人の性格が見えてきます。

パウロ自ら決めることを恐れて何かに依存し、トニー本当の自分を隠して強く見せているんですよね……。

私はこの映画を観るまで、買う事について深く考えたことがなかったのですが、「欲しい」という感情の奥底には、自分の満たしたい欲望が隠れていることに気づかされました。

大切なのは「モノを買わない!」と我慢することではなくて、何のために必要なのか考えること

買う前に一度考えてみると、衝動買いしてしまう理由が見えてくるかもしれませんね。

物語自体がコミカルでとても面白いですし、細マッチョイケメンの二人が裸で疾走するシーンは必見ですよ〜♪ この映画を見て、自分の物欲も見つめ直していきましょう!

(文・イラスト:トモマツユキ)

※この記事は2022年02月18日に公開されたものです

トモマツユキ

デザイナーとして働きながら、イラストレーターとして活動。映画やアニメなど物語が大好き。ブログにておすすめの作品紹介や絵日記を公開しています。

https://yukiillustration.com/

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