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ドラマ『モテキ』から考える。「完璧な美女」が恋愛で苦労する理由

#恋愛ドラマ考察

高橋千里

あなたには、夢中になった恋愛ドラマがありますか? 泣いて、笑って、キュンキュンして、エネルギーチャージした、そんな思い出の作品が。この企画では、過去の名作を恋愛ドラマが大好きなライター陣が、当時の思い出たっぷりに考察していきます。

※この記事にはドラマ『モテキ』結末のネタバレが含まれます

「完璧な美女ほど恋愛で苦労する」という説がある。

2016年から2020年にかけて連載されたWebマンガ『美人が婚活してみたら』では、恋愛・婚活に難航する美人な主人公の姿が描かれ、実写映画化もされるほど反響を呼んだ。

私も美人な友達に「自分に自信のあるオラオラ系か、既婚の男性からしか好かれない」という相談をされた時、美人にも美人の悩みがあるんだ……と初めて気付いた。

彼女たちが恋愛で苦労する主な理由として、高嶺の花になってしまう、釣り合う男性がなかなかいない……などが挙げられると思うが、「相手の求める理想像を押し付けられる」というケースも多いのではないだろうか。

まさにそれに当てはまる恋愛苦労型ヒロインが、『モテキ』の土井亜紀だと思う。

冴えない男子に想いを寄せる美女、土井亜紀

『モテキ』は2011年に映画が大ヒットしたので名前を聞いたことがある人も多いだろうが、実はこの1年前、2010年にドラマも放送されている。

ドラマは原作漫画『モテキ』(イブニングコミックス)のストーリーを再現した実写版。ちなみに映画はその後の続編であり完全オリジナルストーリーなので、原作やドラマの内容とはまた異なっている。

ドラマ『モテキ』は言わずもがな、主人公・藤本幸世(森山三來)が複数の女性から突然モテまくる物語。土井亜紀(野波麻帆)は藤本に想いを寄せる女性の1人として描かれる。

藤本が働いていた派遣先の職場で出会った土井亜紀。音楽の趣味が合うという点で急接近したが、当時はフェスで手をつなぐ程度の進展で止まっていた。それから3年越しに土井亜紀からライブの誘いが来たことで、2人の関係は再び動き出す。

口下手で冴えない印象の藤本とは対照的に、土井亜紀は美人でコミュニケーション能力が高く、仕事も家事もテキパキこなす。さりげないスキンシップや好意の匂わせも得意で、藤本が「男を喜ばせる特殊な訓練でも受けているのか!?」と悶々とするほどだ。

完璧な美女、土井亜紀が抱える恋愛トラウマ

一見すると完璧な土井亜紀だが、実は誰よりも恋愛に苦戦している苦労型美女だと私は考える。

というのも、自己肯定感の低い藤本を好きになってしまったが故に、せっかく2人の距離が近づいても「土井亜紀が俺なんか選ぶはずがないよな……」と心を閉ざされて、距離が開いてしまうシーンが何度かある。

そして土井亜紀も、自分自身に多少なりともコンプレックスを抱えている。藤本と仲の良い年下の女の子・いつかちゃん(満島ひかり)の存在を知ると、途端に自身の年齢を気にし始め、藤本に強く当たってしまう。

そういった態度が悪いわけではないし、女性としてごく自然な行動だと思う。

しかし土井亜紀のように「完璧な美女」というイメージが強すぎると、それに惹かれて寄ってきた男性にとっては「こういう子だったの?」と理想と現実の(悪い意味での)ギャップが生まれてしまうことがある。

ドラマ版では若干カットされているが、原作に以下のような土井亜紀のモノローグがある。

「今までの男は私に勝手に期待して勝手に失望して。必ず男の方から『別れよう』って言われてきたわ。そして自分が自信を持てる女に落ち着く。私だって自信ないのよ? 言わなきゃ気付かないの?」

このモノローグから、彼女の過去の恋愛が垣間見える。

間違いなく、土井亜紀はモテる。だけど付き合ってからは自分を繕うばかりではやっていけない。相手にイライラする日もあるし、不安が募る日だってある。

それらを全部見せた時、相手が「こういう部分もあるんだな」と受け入れてくれるか、お互いに歩み寄れるかどうかで、2人の未来が決まるのではないだろうか。

土井亜紀の「完璧な美女」という要素だけに惹かれ、過度に期待値を上げて付き合ってしまった過去の恋人たちには、それができなかったのだろう。

藤本幸世と土井亜紀の未来は?

藤本と土井亜紀は素の自分でぶつかり合い、何度も喧嘩をする。

いつかちゃんへの嫉妬や不安、そして土井亜紀が漫画家のオム先生(浜野謙太)にプロポーズされた事件などから、2人の関係は荒れに荒れるが、最終的にはお互いに素直な気持ちを伝えて付き合うことになる。

しかしその後しばらく経って、土井亜紀は電話で「私たち、別れた方がいいと思うの」と告げる。彼女に何があったのか、その後2人はどうなったのか、具体的なエピソードは原作でもドラマでも描かれていない。

ドラマの数年後を描いた映画版では、藤本に恋人はいない設定なので、おそらく土井亜紀とは別れたのだと思われる。

土井亜紀にはもっと条件のいい男性がたくさんいるだろう。だから、単純に藤本では物足りなくなったのかもしれないし、他に好きな人ができたのかもしれない。

だけど、付き合う前に自分を全てさらけ出せた藤本とはもう少し続いてほしかったな……と個人的には思う。それがなかなかできないから、やっぱり恋愛は難しい。

(文:高橋千里、イラスト:タテノカズヒロ)

※この記事は2021年04月24日に公開されたものです

高橋千里

高橋千里(たかはし ちさと)

2016年にマイナビ中途入社→2020年までマイナビウーマン編集部に所属。芸能人インタビューやコラムなど、20本以上の連載・特集の編集を担当。2021年からフリーの編集者・ライターとして独立。女性向けジャンル(恋愛・美容・エンタメなど)を中心に活動中。女子アイドル、恋リア、コスメ、お酒が好き!

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