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好きな選手を追うと見えてくる「ポジション」解説 #ラグビーにわか女子入門

【連載】ラグビーにわか女子入門

いくえちゃん

この連載では、ラグビー大好きライターいくえちゃんが、にわかでもラグビー観戦を楽しむためのポイントを教えます!

営業先の男性からいきなりラグビーの話を振られたことがあった。

前にも書いたが、私はずっと文化系だし、当時はラグビーを知らなかったので、話を振られて困った。聞くと、彼は中学時代からラグビーをやっていて、ちょうど前日に社会人のラグビーチームを引退したばかりだという。

「私もラグビー観たいです」とつい、言ってしまった。下心アリアリ。私の予想では、次に彼が「では次回、ご一緒しましょう!」と言うハズ。

その日、仕事からの帰りにラグビーのルール本を数冊買い込み、次のシーズンからはひとり、ラグビーの観戦に通いはじめた。これが、私のラグビー生活のスタートだった。

ルール本を読んだとはいえ、なんの解説もなくラグビーを理解するのは難しい。最初はおもしろさも、プレイ一つひとつの意味もわからなかった。

で、思いついたのが「ポジションをちゃんと理解すること」。中学生のころ、吹奏楽部に所属していたとき、各楽器の音色を覚えたのだが、そのおかげでオーケストラが俄然楽しめるようになったことを思い出したから。

各ポジションの選手が、いつ何をしているのかがわかるようになると、プレイの一つひとつがわかるようになったと一緒に、ラグビー自体がおもしろいと思えるようになった。

ということで、今回は改めて各ポジションの解説をします。

フォワードとバックス。まずは2つの分類から

連載の第3回でも書いたが、「フォワード」と「バックス」の役割が、ラグビーとサッカーでは反対になる。

スクラムを組むフォワードは、基本的に守備やボールを奪う役割。バックスはボールを持って自由に走り回り、攻撃する役割だ。

フォワードは1番から8番。スクラムのほか、縦一列に並んでボールを取りに行くこともある。グチャグチャになりながら、ボールを取るのも主にフォワード。力自慢が揃う。

一方、バックスは9番から15番。華麗なパスや走り込んでトライを取る姿に、うっとりする女子も多いことだろう。

ラグビーはポジションごとに役割がしっかり分かれていて、各ポジションの背番号が振ってあるので、選手を追うのは案外楽チン。

まずは贔屓の選手がどこのポジションか確認してみよう。

フォワードの8人はごっつい男子揃い。力で勝負!

前列8人のフォワードは「フロントロー」「セカンドロー」「バックロー」の3つに分けることができる。スクラムのときの、1列目、2列目、3列目だ。

【1番・2番・3番】フロントロー

「フロントロー」は、スクラムでは前の敵からも押されるが、うしろの味方からも押される。いわば板挟みのポジション。餃子耳、首が太い、などの特徴が顕著に見られる。

一番前なので、敵を威圧するためにヘラヘラしない人が多い。“笑わない男”稲垣、南アフリカの“ビースト”こと、稲垣を投げ飛ばしてペナルティを受けたムタワリラを思い浮かべてほしい。

私のイメージでは格闘技の悪役風。ただ、実際は気が優しくて力持ち的な人が多いそう。

スクラムをコントロールする「プロップ」

フロントローの中でも1番と3番は「プロップ」といって、スクラムをコントロールしている。左右のプロップが力加減を上手にコントロールしないと、スクラムが回ったり、潰れたりして、反則を取られることも多い。

ジャパンでは稲垣のほか、具くん、“イヤポイ”の中島イシレリなんかがこのポジション。

自陣側にボールを送る「フッカー」

2番は「フッカー」。スクラムからボールを足で掻いて自陣側にボールを入れるから、フッカーという。スクラムをコントロールしつつも、ボールを確実に自陣へ送らなくてはならないので、比較的に器用な人が多い。

ほかにもラインアウトのときに、ピッチにボールを入れる役割を持つ。ボールをキヤッチする側とタイミングを合わせる必要もあり、投げる技術のほか、リズム感的なものも必要だ。

ジャパンではドレッド堀江や、ごついガタイなのにおめめクリクリの坂出などが務める。また、“北出丼”で一躍有名になった北出もフッカー。

【4番・5番】ロック

4番と5番のロックは背が高いのが特徴。でもがっしりもしている。

先日引退した“トモさん”ことトンプソン・ルークと、顔が前に高いイケメンのジェームス・ムーアだ。どちらも身長195cm超えで「デカ!」って感じかもしれない。そのせいか、ジャパンでも海外出身の選手が多い。ラインアウトのときにジャンプして、ボールをキャッチする姿が印象的だ。

私のイメージでは、ロックはバレーボールのアタッカー。ニュージランドでは子どもが一番憧れるポジションらしい。

ボールが高く蹴り上げられたときなど、空中戦がロックの見せ場。それ以外では地味で目立たないが、実際はかなりハードワークをしている。

【6番・7番・8番】バックロー

スクラム3列目の「バックロー」は、仕事大好きな、なんでも笑顔で受けてくれる営業マン的存在。その中でもいくつかのポジションに細かく分かれている。

困ったときのなんでも屋「フランカー」

バックローの中で、6番・7番は「フランカー」という。「側兵」とか「側方部隊」とかいう意味だそうで、スクラムで側面にいる。

スクラム後、すぐに敵に攻撃や守備ができる位置にいて、ピッチを走り回り、タックルで敵の走りを阻止。ラインアウトのときはロックを支えたり、自身もキャッチしたりする。とにかくハードワークが求められるポジション。ジャパンではキャプテン・リーチマイケルのほか、“ラピース”こと南アフリカ出身のラブスカフニなどがフランカー。

私のイメージでは、困ったときに現れる、正義の味方のような“なんでも屋”である。

フォワードをまとめる「ナンバー8」

ナンバー8は8番。スクラムの最後尾にいて、フォワードをしっかりまとめている。先ほどのフランカーと同じ仕事だったりする。

ジャパンのキャプテン、リーチマイケルはジャパンではフランカーだけど、東芝ラグビー部ではナンバー8。こんな選手はわりと多い。

ただ、フランカーとの大きなちがいは、マイボールスクラムで、フッカーからフランカーを通ってきたボールをバックス(次で説明します)に繋げること。自身で持って敵に突っ込むこともある。

フランカーよりひと回り大きいイメージ。ジャパンでは“ジャッカル”姫野がナンバー8だ。

バックスの7人は、おいしいところを持っていく

バックスはうしろの7人。スクラムにもラインアウトにも、多くはモールにもラックにも参加することがない。

フォワードがボール争奪戦をやっているうしろでぼーっと立っているイメージもあるかもしれない。でも、トライをとるのはほとんどがバックス。おいしいところを持っていくポジションだ。

【9番・10番】ハーフバックス

9番・10番は「ハーフバックス」といい、フォワードとバックスをつなぐ、バックスでは特別な存在。彼ら2人のアイデアがゲームを決める。

身長の高さやごつさを求められることは少ないが、クレバーさは必須。頭のよさ、と言えば聞こえはいいが、悪く言うと「ずる賢さ」。

恋愛も同じく、駆け引きをするタイプだと思われ、惚れちゃいけない男子だろう。でも、この危険な感じが私は大好物である。

ボールを出す「スクラムハーフ」

9番は「スクラムハーフ」。スクラム、ラックなどから、とにかくボールを出す役割。ボールを出さなくてはいけないときには、必ず9番がいる。

ジャパンの9番といえば、小さいコンビ、流大と“ふみふみ”こと田中史朗だが、2人はプレイスタイルがまったくちがう。どんな場面でも、ボールを出す役割に徹している流に対して、田中は自分でもボールを持って走る。そんなふうに個性が出るポジションだったりする。

ボール捌きでゲームが決まる「スタンドオフ」

10番は「スタンドオフ」。この連載で毎回ラブを送り続けているジャパンのキッカー田村のポジションだ。

9番からパスされたボールを10番がどう捌くかで、ゲームが決まったりする。フォワードにパスすればモールで進み、バックスにパスすれば走ってトライを狙う。キックでラインアウトを狙ったり、陣地を進めたり。まあ、そんな単純ではないんだろうけど。

【12番・13番】センター

バックスの中で12番・13番を背負う「センター」は、ちょっと地味ぎみ。均整のとれた濃いめのイケメン・ラファエレや、1:9分けの髪型が印象的な中村亮士などだが、なかなか通好みな感じである。

タックルする機会が多く、守る時間も長い。ただ、スタンドオフを補佐するポジションであり、フランカーに次いでタックルがうまくなければできないポジションでもある。

その上、走る速さも求められる。2番手だけど、なんでもできなければいけない、陸上の近代5種の選手みたいだ。

初戦のロシア戦で、田村がセンターを担当したように、スタンドオフの選手がセンターを務めることもある。レジェンド平尾誠二さんはスタンドオフだったが、現役時代の後半はセンターに入っていた。

【11番・14番】ウイング

ラグビーの花形「ウイング」。11番と14番だ。松島幸太郎、福岡堅樹、笑いもとれるレメキなど、ジャパンメンバーの名前を挙げるだけで、花形だとわかる。

足が速くて、ステップが踏めて、ボールをキャッチすれば、必ずトライを決めてくれる。スーパーマンみたいな存在だ。

【15番】フルバック

ラグビーでゴールキーパーと言われるのが「フルバック」、15番だ。ジャパンではくるくるヘアに口ひげ、あごひげの山中亮平がいるが、松島が担当するゲームもある。

でも日本で一番有名なフルバックは、五郎丸だ。ゴールキーパーなのに、走ってトライを取ったりもするし、自陣にボールを蹴リ込まれたとき、キャッチしてくれたりもする。

前に行くか、行かないか。テニスやバドミントンに似てると思うのは私だけか。

キッカーは誰がやる?

最後に、キッカーは誰がやるのか。ルールでは誰がやってもいいことになっている。

ただ、スタンドオフやフルバック、スクラムハーフなどの場合が多い。キッカーじゃなくても、ゲーム中にボールを蹴る機会が多いからだ。キックは一番うまい人が蹴る。理にかなっている。

ラグビーは多様性を重視するスポーツ

ということで、あなた好みのポジションはいましたか?

今回のコラムで、長々とポジションの解説をしたのは、好みのタイプを見つけて、それをずっと追っかけてもらいたいから。好きな男子なら、いくら眺めても飽きない。

「試合中なのにぼーっとしてる」とか、「踏み潰されて痛そう」「なんであんなところに走るんだろう」と考えて見ていると、自然とルールがわかるし、その奥のおもしろさもわかる。

ラグビーは、こういう人が向いているというのが、ほかのスポーツに比べて案外少ない。ラグビーをやろうと思えば、誰にでも向いているポジションがある。

体が大きかろうが、小さかろうが、十分に務められるポジションがあるし、特技を活かせるポジションもある。これがラグビーの多様性。

当然、いろいろな男子がいる。ここも魅力だったりもする。

ちなみにまだ、最初に書いた営業先の人からはラグビーに誘われていない。彼のポジションは「スタンドオフ」だったそうだ。

(文:いくえちゃん、イラスト:mame)

※この記事は2020年03月21日に公開されたものです

いくえちゃん

ラグビーとサッカーが大好き。自分はイタリア人だと思っている。並外れたコミュニケーション力と積極性が魅力であり、欠点。

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