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サッカーとは違う? ラグビーの反則とゲーム再開方法 #ラグビーにわか女子入門

いくえちゃん

2020年1月からジャパンラグビーのトップリーグ開幕。この連載では、ラグビー大好きライターいくえちゃんが、にわかでもラグビー観戦を楽しむためのポイントを教えます!

前回のコラムでも説明したが、ラグビーのルールの基本は「前にボールを投げてはだめ」。それさえわかれば十分なのだが、サッカーなどのルールを知っていると、「なんで?」なんて思う規則が多い。

特にゲームが途切れたときの「試合の再開方法」が、余計にラグビーのルールをわかりにくくしているのではと思う。

たとえば、サッカーだとピッチからボールが外にでたとき、ボールを外に出していないほうのチームがピッチにボールを入れて、つまりスローインして再開するけれど、ラグビーだと必ずそうともいえない。

今回はそんな頭がこちゃごちゃになっている人に向けて、反則やフィールドの外へボールが出たりして試合が中断したときの「試合の再開方法」について少し解説します。

まずは反則を知ろう。反則によってゲームの再開方法はちがう

ラグビーの反則は「軽い反則」「やや重い反則」「重い反則」「かなり重い反則」に分けることができる。どの反則にあたるかによって、再開方法がちがってくる。

「軽い反則」

ボールを前に落としたり、前にいる人にパスしたりするなど「ミス」レベルのもの。ハンドリングエラーという。再開方法は「スクラム」。審判のかけ声でスクラムを組み、反則を受けたチームがスクラムの中にボールを入れて再開する。くわしくは記事の後半で説明しよう。

「やや重い反則」

「やや重い反則」といっても、そんなに重くはないんだけれど。たとえばラインアウトのとき敵との間を1m空けなかった、スクラムのとき審判のかけ声よりも早く組んだなど、気をつけていれば防げた反則。

この反則をしたときの再開方法は、スクラムか、キックのいずれかを選ぶことができる。ただしキックの場合、ゴールポストを狙って蹴ることはできない。

「重い反則」

ボールを持っている選手よりも前にいる味方プレイヤーがプレイをした、ボールを持ってない相手の邪魔をした、ボールを持っている人がタックルを受けて、地面に倒れたときにボールを離さなかったなど。

「重い反則」をしたあとの試合の再開方法は、反則を受けたチームのスクラムかキック。「やや重い反則」とちがって、キックではゴールポストを狙って蹴ることができる。これを「ペナルティキック」という。ゴールキックが成功したら3点がもらえる。

「かなり重い反則」

「かなり重い反則」とは、「それ死んじゃうんじゃない?」とか「いやいやそれはないよね」というレベルの反則。これを連発したり、かなりやばいプレイをしたりすると、サッカーでいうイエローカード、「シンビン」(ラグビーの場合は10分間の一時的な出場停止)を食らうことになる。

たとえば昨年のW杯ラグビーの決勝トーナメント、日本対南アフリカ戦。“ガッキー”こと稲垣啓太をタックルしたあと、そのまま持ち上げてしまった南アフリカの1番ムタワリラがシンビンになり、目に涙をためて試合を見ていた姿は記憶に新しい。再開方法は「重い反則」と同じ。

どの反則なのかは「審判の笛の長さ」で判別

ほとんどの場合は、「軽い反則」か「重い反則」。だから、この2つを覚えておくといい。

審判が「ピッ」と短く笛を吹いたら「軽い反則」、「ピーッ」と長く笛を吹いたら「重い反則」。

ちなみに、サッカーでよくあるアドバンテージがラグビーにもある。反則が生じたときに、反則を受けた側が有利になっている場合に、そのままゲームを続けることだが、ラグビーはサッカーよりもアドバンテージが多用される。

審判が片手を横にあげているときはアドバンテージの合図。反則を犯したチームが有利になると、反則が生じた地点に戻って、ゲーム再開となる。これがまた、ラグビーをわかりづらくしている。

「スクラム」で試合再開

反則について理解したところで、試合の再開方法「スクラム」と「キック」についてもっとくわしく見ていこう。まずはスクラムから。

「スクラム」にも決まった並び順がある

スクラムとはラグビーで、敵味方が8人ずつで押し合う場面。1列目が3人、2列目が4人、3列目が1人と、列ごとに人数が決まっている。

“グーくん”こと具智恩や、“ガッキー”こと稲垣、ドレッド堀江が1列目のポジションに当たる。それぞれ1、2、3番の背番号をつけているからわかりやすい。

スクラムの組み方を見ると、1列目の選手の股の間から、2列目の選手の手が伸びて、1列目の選手のお腹あたりのジャージを掴む形になり、女子的には「ちょっと……!」と思ってしまうが、そこは紳士のスポーツということで、冷静に。

「スクラム」は押し合い勝負

スクラムでゲームが再開される場合は、ほぼ反則があった場合だが、反則後のスクラムにボールを入れるのは、反則を受けた側のスクラムハーフ、背番号9番だ。

1列目の真ん中、背番号2番の選手が、そのボールを足で掻いて、自陣側にボールを入れる。そのボールをスクラムの最後尾、8番の選手の足の間からボールを出し、次にパスするのも9番の役割。

一見、決まったパターンのプレイだけど、スクラムには大きな意味がある。ゲーム中によく解説者が両チームの合計体重を比べたりするが、スクラムは基本的に力比べなので、押し勝ったほうが勝ちみたいなところがある。

スクラムを組む前の場所より相手陣地に近い場所で、プレイを再開したい。だから押し合う。押し合いがうまくいかず、押し負けそうになると、つい変な体勢になって、スクラムを壊すということになる。これも立派な重い反則になる。

押し勝てれば前に進める。ゴールライン際でスクラムを押しきれば、そのままトライ(5点)だってとれるし、相手が何回もスクラムを壊すと、ペナルティトライなんてこともある。

それに何より、スクラムに押し勝てば、チームの士気が一気に盛り上がり、試合に勝てる気になる。スクラムを組む選手たちがスクラムの練習を繰り返す理由も納得できる。

「キック」で陣地を進める

ゲーム再開のキックにはいくつかの種類が考えられる。

ボールを前に進めるキック

単純にボールを前に進めるためのキックは、サッカーとあまり変わらない。自陣を進めるために使ったり、押し込まれて逃げたりするときに使う。

“ちょん蹴り”のタップキック

タップキックは、急いでプレイを再開したいとき使う。ボールを一度地面につけて、足をちょんとボールにつけてから、蹴った本人がボールをパスしたり、ボールを持って走ったりする。

どうでもいいが、私はこのタップキックをしている司令塔キッカー・田村が実は一番好きだ。私は自宅でも、売りもののボールでも、イベントに置いてあるボールでも、ボールを見ると、すぐにタップキックをしたくなる。

外に蹴り出すタッチキック

ボールを外に蹴り出すのはタッチキック。ただ、これがかなり複雑。

サッカーだと、ボールがピッチの外に蹴り出されたとき、蹴り出したほうと逆のチームがスローインしてスタートするが、ラグビーはそう単純じゃない。ラグビーのラインアウトでボールをフィールドに入れるのは、蹴り出したほうと逆とは限らないからだ。

また、フィールドにボールを入れる場所も、フィールドを出た場所とは限らない。これを決定する要素は、「ペナルティ」つまり「重い反則」後のキックかどうか、22mラインよりうしろか敵陣側か、バウンドして外に出たかどうかの3つ。

「重い反則」後のタッチキック

「重い反則」後のタッチキックだったら、「重い反則」を受けたチーム、つまりボールを蹴ってフィールドの外に出したチームのボールでラインアウトがスタートする。ここ、赤線を引くところ。ボールを入れる場所は、ボールが出たところ。

ゲーム中のタッチキック

ゲーム中のタッチキックでフィールドを出た場合は、「22mライン」というのが大きく関わってくる。ゴールポストからゴールポストの間は100mくらいだから、22mのラインは自陣から全体の1/4くらいのところ。

22mラインより自陣側で蹴ったキックが外に出た場合は、バウンドしようがしまいが、外に出したほうと逆のチームのボールで、ボールが外にでた地点からスタートする。

また、22mラインより敵陣側で蹴ったキックが外に出た場合は、フィールド内でバウンドするかどうかで、スタート地点は変わる。外に出したほうと逆のチームのボールでスタートするのは変わらない。

22mラインより敵陣側から蹴ったボールがフィールド内でバウンドして外に出れば、ボールが外にでた地点からスタートする。22mラインを少し超えたあたりで、このタッチキックが決まれば俄然有利になる。

ただし、バウンドするというのが条件。バウンドせずに、つまりノーバウンドでフィールドの外に出てしまえば、外に出したほうと逆のチームのボールで、蹴り出した地点の横からスタートする。これをダイレクトタッチという。つまりミスキック。

ゴールキック

ゴールキックは、ゴールポストに向かって蹴り、2本のポールの間を通せば3点入る。重い反則を相手が犯したときにのみ選択できるやつだ。反則が発生した場所からうしろにさがったところなら、どこからでもキックできる。

「ラインアウト」はジャンプがすごい

さっきから頻繁に出てくる「ラインアウト」。すっかり説明を忘れていたが、フィールドの外にボールが出て試合が中断されたときの再開方法で、サッカーでいうスローイン。どちらがボールを入れるかは、さきほどくわしく説明したので、もう必要ないと思うが。

ボールをフィールドに投げ入れる選手は、2番フッカーの選手。ボールをキャッチするのは、4番から7番までのロックやフランカーの選手であることが多い。

ボールを投げ入れるタイミングを狙って、キャッチする選手を持ち上げるわけだが、実は「持ち上げている」というのは正確ではない。ジャンプするのを補助しているのだ。到達点は4mになるらしい。

持ち上げていると言うと、リフティングという立派な反則になる。オトナは難しいのだ。

スクラムorキック、どっちを選ぶ?

2015年のW杯ラグビーで、日本が南アフリカに歴史的勝利を決めたゲームでは、重い反則を犯した南アフリカに対して、日本がゴールキックを選べば、調子がよかった五郎丸のペナルティゴールが決まって同点で終わったはず。

しかし、キャプテンのリーチはスクラムを選択。南アフリカチームのスクラムに押し勝って、スクラムの中にあるボールを前に進めることができ、いい位置でパスしてトライに持ち込むことができ、日本はゲームに勝てたのだ。もし、このとき、スクラムに負けていたら、同点どころか試合に負けていた。

このように、場面に応じて、スクラムを選ぶか、ゴールキックを蹴るか……などの選択が重要になってくる。チームの力が拮抗していれば、トライをとることがむずかしくなるので、ゴールキックで点数を稼ぐ方法もあるのだから。

トップリーグの試合になると、キッカーが真ん中よりの自陣に近い位置で、ペナルティキックを蹴ってそれがゴールキックになり、感激させられることもある。ボールが長い距離を飛んで、ゴールポストに吸い込まれている風景は何より気持ちいい。

ルールはざっくり覚えておくだけでいい

正直に白状すると、今回の解説を書くために、ルール本やネットの記事を読んだり、ラグビー好きに質問したりと、たくさん確認した。

そうすると、偉そうに解説している私も、勘ちがいをしていたところをみつけてしまった。そして実際はもっと細かなルールがあったりする。こりゃ、選手だってよくわからないんだろうな、と思う。

この解説を読んでいる方の中には、「ちがうんじゃない?」なんていろいろと言いたいこともあろう。逃げるようで申し訳ないけど。これ、ざっくり覚えておくくらいで十分楽しめますよ。

(文:いくえちゃん、イラスト:mame)

※この記事は2020年03月01日に公開されたものです

いくえちゃん

ラグビーとサッカーが大好き。自分はイタリア人だと思っている。並外れたコミュニケーション力と積極性が魅力であり、欠点。

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