人間関係がうまくいかない。「付き合いベタ」な人とのつきあい方
人間関係の悩みというのは、職場、友人、親族、コミュニティー……と、あらゆるところでつきまといます。そんな人間関係が、いつもうまくいかないというタイプの人がいます。理由としてよく聞かれるのが、場の空気をうまく読めなかったり、協調性がないなど。本人にさして悪気がないのに、コミュニケーションが滞ってしまう原因はなんでしょうか。また、周囲はどんな対応をすればいいのでしょう。心理学者の平松隆円さんにお聞きしました。
コミュニケーションを取るのが苦手という人は、少なくありません。
仕事関係のイベントなどで、どうやって知らない人に話しかけていいかわからない、という人もいるでしょう。他愛もない世間話が苦手で、会話が続かないという悩みを抱えている人もいるでしょう。
こんな人はめずらしくありませんが、なかには知らず知らずのうちに、「空気が読めない」「協調性がない」「無神経」な態度を取っていて、まわりから敬遠されてしまう人もいます。
はたして人間関係がうまくいかない原因はなんでしょうか。そして、周囲はどうのように対応すればいいのでしょうか。
“人間関係がうまくいかない”人の特徴
まずは一般的に、どういった性質が、円滑な人間関係をはばむのか考えてみましょう。
恥ずかしがり屋
人間関係が苦手という人に共通するのは、“恥ずかしがり屋”という特徴でしょう。初めて会う人に話しかけるのが苦手という人は、たいていこの特徴です。
この性質の人は、たとえば会社のイベントで、自分がおもてなし“される”側であっても、「今日はおもてなしを“する”側なんだ」と思って参加してみましょう。すると、初めて会う人に対しても“ひとりにしてはいけない”と仕事のように考えて、自分から話しかけやすくなります。
会話が苦手
会話が苦手という人も、人間関係が得意ではないかもしれません。
男女間の会話でもよく話題になりますが、一般的に、男性は最後まで話を聞かなかったり、結論を求めたりするような会話をしがちなのに対し、女性は共感性を求める会話するっていいますよね。
もちろん異性間に限らず、同性間でも“会話がかみ合わない”ということは頻発します。会話の仕方がうまくいかないと、コミュニケーションはなかなかスムーズには進みません。
自己主張が強い
初対面の人に話しかけることは平気なのに、なぜだか人間関係がうまくいかないという人もいます。そんな人は、自己主張が強いのかもしれません。
人間関係は、協調性が大事になってきます。ですが、自己主張が強い人というのは我を通そうとするので、周囲からはわがままと見られ、距離を置かれてしまうこともあるでしょう。結果的に、自分の知らない間に職場やグループのなかで“孤立している”という状況になってしまうこともあります。
八方美人
コミュニケーション能力が高すぎて、逆に人間関係がうまくいかないという人もいます。相手によって態度がコロコロと変わる“八方美人”な人に多いかもしれません。
ある意味で協調性が高く、周囲にあわせられる柔軟なタイプではあるのですが、人によって言動が変わるため、一見するとうまく周囲とやっているものの、裏では信用されていないとか、陰口をたたかれているなんてこともあります。
空気が読めない
協調性が低い人には、“空気が読めない”人が多いかもしれません。周囲のようすが見えていなくて、“今ちょっとそれはまずいんじゃない”という発言や行動をしてしまうことがあります。
浅くて表面的な人間関係においてはさほど実害はないため、あまり気にならないかもしれませんが、周囲からするとちょっと迷惑な人なので、しっかりとした人間関係に発展することが少ないタイプかもしれません。
人間関係がうまくいかないのは、「発達障害」が要因の場合も
最近、人間関係がうまくいかない原因のひとつとして、「発達障害」が取り上げられることが多いかもしれません。この発達障害とは、一体どのような障害でしょうか。
自閉スペクトラム症
「発達障害」にもさまざまあります。
コミュニケーションとの関連でいえば、「自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorders)」があてはまってくるかもしれません。
自閉スペクトラム症の代表的な障害は、社会的なコミュニケーションと社会的相互作用に困難を生じるというものです。
目をあわせられない、ジェスチャー(=非言語コミュニケーション)ができず、また理解もできない、仲間への関心がない、社会的な対応がうまくできない、感情の共有ができない、などの特徴があるといわれています。
自閉スペクトラム症は、先天性(=遺伝的な)脳機能障害という説や、環境中の化学物質が原因という説があり、まだ発症の原因は特定されていません。
アスペルガー症候群
ところで、社会的なコミュニケーションと社会的相互作用に困難を生じる障害として、「アスペルガー症候群」というのを耳にしたことがあるという人もいるでしょう。
これまで発達障害は、対人関係やコミュニケーションなどが特徴の「自閉症」や「アスペルガー症候群」などと細かく分類されてきました。ですが、2013年に発表されたアメリカ精神医学会による診断基準(DSM-5)で、「自閉スペクトラム症」としてひとまとめにされました。
なので、自閉症やアスペルガー症候群などは、すべて「自閉スペクトラム症」ととらえることができます。
発達障害の人とのコミュニケーションの工夫点
それでは相手が発達障害だった場合、どのようにコミュニケーションを取るのがよいでしょうか。
具体的な指示や表現をする
発達障害の人の特徴として、“あいまいな指示や表現を理解するのが苦手”というものがあります。
たとえば、「花壇の花に“適当に”水をやっといて」と頼んだとします。この“適当”というのがじつにあいまいで、発達障害の人からすると、「どれくらいやればいいんだろう?」と困ってしまうことになります。
また、「のど渇いたよね」という言葉は、通常は「のどが渇いたから、なにか飲まない?」という“同意”と“お誘い”の2つのニュアンスを含みますが、発達障害の人からすれば「のどが渇いたという表明でしかないわけです。
ですから、「言わなくても当然理解できるだろう」と思わず、具体的な表現や指示をすることが大事なんです。
これは、発達障害ではない人にとっても都合がいいことので、発達障害の有無に関係なく、すべての人にそうするほうがいいかもしれませんね。
相手が得意なコミュニケーション手段を選ぶ
発達障害の人にとって、得意なコミュニケーション手段と、そうではないコミュニケーション手段があります。
たとえば会話が苦手だとしても、メールやLINEなどの“文字情報”だと、ちゃんとコミュニケ−ションがとれる場合もあるんです。
「発達障害だからコミュニケーションが苦手なんでしょ」と思い込まず、相手にあわせたコミュニケーションの方法を選んでみてください。
ひとつの個性ととらえ、関係性を築いてみよう
すでにお伝えしたとおり、発達障害はその原因が解明されはいないものの、大人になって急に症状があらわれたり、年を取ったらから消えたりするというものではありません。
ですから、知ってか知らずかはさておき、あなたがこれまで生きていきたなかで、ひとりやふたりは発達障害の人と接してきた経験があるはずなんです。
コミュニケーションが苦手ということを相手のせいにせず、“それもひとつの個性”なんだと思えれば、きっと、もっといい関係が築けるのではないでしょうか。
(平松隆円)
※画像はイメージです
※この記事は2019年08月21日に公開されたものです