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おにぎりとおむすびはなにが違う?

日本人のソウルフードとも呼べる「おにぎり」。地域によっては「おむすび」と呼ばれたり、たわら型や三角などバリエーションが豊富だが、どんな違いがあるのだろうか?

平安時代に初めて日本に伝わったおにぎりは、儀式に使われる捧げ物から始まり、やがて武士の携帯食として重宝される。ルーツや言葉づかいを考えると、まるい「おこわ」が「おむすび」、それ以外は「おにぎり」になりそうだ。

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捧げ物から携帯食へ

おにぎりの原型は屯飯(とんじき)と呼ばれ、中国最古の料理書とされる「呂氏春秋(りょししゅんじゅう)」にも「魚や鳥獣の干し肉を添えた携帯食」として記されている。この本が完成したのは紀元前239年、戦国時代まっただなかであることから、短時間で手軽に済ませられる「戦闘糧食」として生まれたと考えるべきだろう。

屯飯が日本に伝わったのは平安時代で、宮中儀式に用いられる屯食(とんじき)となった。これはもち米やうるち米などの強飯(こわいい)を蒸したもので、現代の「おこわ」の原型となる。

平安後期になって武士が活躍する機会が増えると、本来の携帯食としての姿を取り戻す。素材の「ごはん」も釜で炊いた姫飯(ひめいい)へと変更され、これにおかずを加えた「おにぎり弁当」が誕生する。

世に広まったのは江戸中期で、泰平の世となり芸能がさかんになると、芝居のあい間に食べる弁当として爆発的にヒットした。これが「幕の内弁当」で、歌舞伎(かぶき)の幕と幕のあいだ=芝居の切れ間に食べられる、がネーミングの由来とされている。

幕末に発行された貞丈雑記(ていじょうざっき)によると、屯食は「強飯を握り、鳥の玉子のようなだ円形」と記され、コンビニなどで見かける三角形ではなく、たわら型に近い。現代の幕の内弁当のごはんに切れ込みが入っているのは、たわら型・おにぎり弁当のなごりといえよう。

炊くと「おにぎり」、蒸すと「おむすび」?

「おむすび」と「おにぎり」はなにが違うのか? 歴史的な背景を考えると、

・おむすび … 丸・蒸す・捧げ物

・おにぎり … 三角・炊く・携帯食

と考えるのが自然だ。

どちらも語頭の「お」は表現をていねいにするための意味しかない。これはのちの室町時代に確立された女房(にょうぼう)言葉で、先頭に「お」+やたらとていねいな言葉が使われ、身分の高いひとたちから鰹節をおかか、田楽(でんがく)をおでんといった表現が生まれた。

日本では最初は宮中儀式用だったことを考えると、「握り」よりていねいな「むすび」が使われ、屯食=丸い「おこわ」=おむすびがつながる。

たわら型や三角形などの「形」の違いはなにを意味するのか? 東日本では三角、西ではたわら型が一般的と言われているものの、持ち運びに便利な三角は「携帯食」向けに生まれたという説が強い。

円やたわら型では隣との隙間が生まれ、たくさん運ぶのには不利だし形も崩れやすい。対して三角形なら隙間なく収納できるし、並べたときも座りが良い。ひとときに大量に必要となる「軍用食」に適した形状なのだ。

三角は普段用、たわらは慶事向けなんて話も耳にするが、地域によっては逆の場合もあるので、形と目的を結びつけるのは難しい。三角が主流の関東でも「お葬式用」とされている地域もあれば、九州ではその逆のエリアもある。

ルーツを考えれば、

・たわら型(もしくは円型)

・蒸した「おこわ」

こそが慶事向けの「おむすび」となるので、炊いたごはんなら形を問わず「おにぎり」と表現すべきだろう。

まとめ

・おにぎりのルーツは、中国の屯飯(とんじき)

・日本に伝わったのは平安時代

・神への捧げ物として、宮中儀式に使われていた

・幕の内弁当の原型は「おにぎり弁当」

・三角おにぎりは軍用として誕生した説が強い

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年11月02日に公開されたものです

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