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火星を狙う、さそり座の物語 ~2014年9月28日の競演~

さそり座といえば、星占いでお馴染みの12星座にも登場する有名な星座です。
実際の夜空では夏の星座の代表格ですが、そのさそり座が今年(2014年)の9月末にかけて、火星を狙っています。

【宇宙空間はいったい何度?「-270℃」】

火星に対抗する星

さそり座は夏の南の空、それも低い位置に見える星座です。目印となるのは、赤く輝いている1等星の「アンタレス」です。その少し左側でS字の釣り針のような形の星の並びが、サソリのしっぽにあたります。明るい星が多く、特徴的な形をしていますので、比較的簡単に見つけられるのではないでしょうか。

アンタレスは、その位置と色からサソリの心臓にも例えられています。また、アンタレスという名前にはギリシア語で「アンチ・アレース(Anti-Ares)」、つまり火星(アレース)に対抗する(アンチ)ものという意味があります。

これは赤く輝く様子が火星に似ているところから来ています。

赤くて巨大な1等星「アンタレス」

星がさまざまな色で輝いているのは、その表面温度の違いによるものです。表面温度が高いほど青白っぽく、低いほど赤っぽく光ります。そして、アンタレスが赤く見えるのは、その表面温度が天体としては低めの3,800℃ほどしかないためです。

私たちの普段の感覚からすると、3,800℃でも十分高いように感じるかもしれませんが、恒星の中には10,000℃を超えるようなものも数多くあるのです。

また、アンタレスは赤いだけではなく、とても大きな天体としても知られています。地球から550光年(光の速度で550年かかる距離)以上も離れていると推定されていますが、太陽のおよそ700倍もの大きさがあり、明るさに至っては太陽の1万倍にもなることから、遠く離れた地球からでも、1等星という輝きを放って見えるわけです。

火星とアンタレスの競演

9月28日に最接近する火星とさそり座の1等星「アンタレス」との競演は、日没直後から南西方向の空の低い位置で見ることができます。地平線に近い位置になるため、ビルや山などの少ない、開けた場所で見ることをおススメします。

また、20時過ぎには地平線の下へと沈んでしまうため、競演が見えるのはわずかな時間となります。ただし、この日を逃しても前後の数日間は同じような条件で見ることができますので、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

ちなみに、その明るさは火星が0.8等であるのに対して、アンタレスは1.1等であるため、火星の方がアンタレスよりもやや明るく見えるはずです。

オリオンを狙うサソリの物語

今回は火星を狙うさそり座ですが、ギリシア神話の中では冬の星座として有名なオリオンを狙っていました。
最後にその物語をご紹介しましょう。

海の神ポセイドンの息子だったオリオンは、たいへん強い体を持った腕のよい狩人でした。しかし、その自らの強さにうぬぼれた彼は、「誰もこの自分にはかなわない」といって周囲に自慢を始めてしまいます。この発言に怒った大神ゼウスの妻ヘラは、1匹のサソリを送り込みます。

サソリはそのしっぽでオリオンを一刺しすると、さすがのオリオンも猛毒によってあっという間に息絶えてしまいました。

やがて、このサソリもオリオンもともに天に上げられて星座となりましたが、今でもサソリを恐れるオリオンは、サソリが東の空に昇ってくるころには、西の空から地平線の下へこっそりと逃げていくのです。

まとめ

夜空を代表する赤い星、火星とさそり座のアンタレス。今年の9月末にはこの2つの星が接近して、赤さを競い合う様子を見ることができます。

地球から見ると、火星の方がアンタレスよりも明るく輝いて見えますが、アンタレスは私たちの想像を超える大きさと輝きで、はるか遠くからその光を届けているのです。

(文/TERA)

●著者プロフィール
小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

※この記事は2014年09月23日に公開されたものです

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