プロに聞いた! かばんのお手入れ、ありがちな誤解4つ
皆さんはお気に入りの「かばん」はありますか? 有名ブランドのかばん、高価なかばんを持っている人も少なくないでしょう。その大事なかばんを長く大事に使うには、どんな点に注意すべきでしょうか。プロ中のプロに、ありがちなNGなどを取材しました。
『かばんと修理の専門店 京都・明石屋』店長の明石真一さんにお話を伺いました。
雨に注意! 革製かばんばかりでなく、ナイロン製品も!
――かばんを長持ちさせるには、どんな点に注意すべきでしょうか。
明石店長 まず雨など、水分に注意すべきですね。特に、革製のかばんは水に気を付けなければなりません。革素材の場合は、雨にぬれて、水分が内側まで染み込んだりします。特に中に入っている「芯」まで達した場合には、放っておくとその芯が劣化します。
芯は、紙、ボール紙などのことが多いのですが、これが水によって浸食されると、弱ってしまい型崩れをまねきます。また、芯がスポンジの場合には、水による腐食で粉状になってしまったりするのです。
――なるほど。革製かばんは雨にぬれることを避けるべきですね。
明石店長 いえ、革製かばんだけではなくて、ナイロン製のかばんなども注意するべきです。また「防水加工」とうたわれている製品もありますが、だからといって雨にぬれてもいい、というわけではないのです。
――それは知りませんでした。
明石店長 皆さん誤解されていることがけっこうあるのではないでしょうか。
かばんの手入れについて「ありがちな誤解」4選
・皮革製のかばんは「革」にさえ注意していれば大丈夫・「防水加工」がされているから水に強い!
・「ナイロン製」のかばんだから水に強い!
・押し入れで大事に保管しているので大丈夫
――確かに考えがちですね。
明石店長 例えば、防水加工の革製かばんであっても、縫い目の部分、またファスナーの部分などがあります。水分はそこから内側に染み込むのです。表面の革さえ大丈夫であれば、ということではありません。
ナイロン製のかばんも同じです。実はナイロンというのは皆さんが考えているよりずっと粗い繊維なのです。日にかざしてみると透けて見えたりしますでしょう? 雨をはじいているように見えても、繊維の間に水が残っていたりします。
また、ファスナーの隙間などがあって、そこから水が染み込むこともあります。
さらに、ナイロン製のかばんであっても、中の構造は革製かばんなどと同じで、芯にはボール紙やスポンジが使われています。水がそこまで浸入すると同じように劣化が起きます。ペットボトルをかばんの中に入れるときなどには気を付けていただきたいですね。
大事に保管するには!?
――大事に保管していたのにトラブルに遭うこともあるのでしょうか?
明石店長 保管していてスポンジが腐食し、粉が吹くこともありますが、一番多いのは、内装の生地は合皮のものが多く、その内装の合皮が湿気などによって腐食し、ベタベタになってしまうのです。
粉が吹くだけであれば、粉を除去すればまだ使えますが、内装が腐食してしまうと、内装を交換するしか修理方法がありません。
――原因は何でしょうか?
明石店長 原因はやはり湿気にあります。例えば、湿気が強すぎる場所に長時間保管しているとベタベタになったり、逆に乾燥し過ぎてしまったりすると、内装がボロボロになったりと、湿気に左右されることがあります。
もちろん、一概に内装の腐食原因が湿気のみにあるとはいえません。経年による劣化などもありますが、なるべく長く内装を持たすには、湿気へのコントロールが大切です。
――保管する際に気をつける点は?
明石店長 まず湿気がこもらないように、新聞紙や乾燥剤などで余分な湿気がこもるのを防ぎます。しかしその状態で長く保管していますと、合皮によってはボロボロになってきます。ですので、1-2カ月に一度外の空気に当ててあげて、風を通し、さらに適度にオイルなどを塗り乾燥を防ぐのがポイントです。
大切なカバンを保管するのに、「大事に箱に入れて、長時間放っておく」というのが一番危険な状態です。
大切なカバンであればこそ、まずは使ってあげる。使うことでカバンの革はその味を出してくれます。そしてしっかりケアをする。保管するのであっても、忘れずに、たまに顔を見てあげてください。
ねじの緩みに気付いたらすぐ対処!
――水分への注意が大事なようですが、他に注意すべき点はありますか?
明石店長 金具には注意していただきたいです。金具は完全に消耗品です。気が付くとねじが1本外れていたとか、ショルダーストラップとかばん本体をつなぐ金具が割れてしまったとか。そういったことはよくあります。うちにもよく持ち込まれることがあるのです。
これらの場合交換が必要ですが……、
ねじが厄介です。かばんのねじというのは、実は特殊なものが多くて、なくなってしまうと、メーカーにもなくて取り寄せられなかったりします。ですから、ねじが緩んでいないかは普段からチェックしておくのが良いと思います。
緩んでいる状態を発見したら、そのときに締めれば、なくなることはありませんからね。
――なるほど。
明石店長 あとはかばんの容量を考えて、詰め込み過ぎ、重い物を入れ過ぎないように気を付けてください。「マチ」の太さ以上の物を入れると破損の原因になりますし、また型が崩れてしまいますから。
――ありがとうございました。
いかがだったでしょうか。防水加工となっていても、またナイロン製のかばんであっても、ぬれることには注意しないといけないようです。まずは水に気を付けて、お気に入りのかばんを大事に長く使いましょう。
⇒『かばんと修理の専門店 京都・明石屋』の公式サイト
http://www.akashiya-kaban.com/
(高橋モータース@dcp)
※この記事は2014年09月15日に公開されたものです