冷蔵庫の野菜を長持ちさせる方法は?「リンゴを一緒に保存する」
そろそろ北海道産の新ジャガが出まわる時期だ。冷蔵庫に入れておいたら、知らぬ間に芽が出てしまった!なんて失敗談をよく聞くが、リンゴを一緒に保存すると長持ちするのはご存じだろうか?
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野菜や果物は、自分を追熟(ついじゅく)させるために植物ホルモン・エチレンを放ち、これがほかの野菜にも影響を与える。リンゴは多量のエチレンを放つのがポイントで、ジャガイモを休眠状態にして芽を出しにくくする。
多くの果物には熟す方向で作用するので、リンゴと一緒に保存すると、短時間で「食べごろ」にできるのだ。
リンゴがじゃがいもを眠らせる?
収穫後の野菜や果物も生きているため、呼吸もすれば汗をかくように水分も放出する。同時に自分を熟成させるために、エチレンを放出するのだ。
エチレンは、金属の溶接や切断に用いられる「アセチレン」のいとこのような気体で、工業分野で多く利用されている。特徴をあげると、
・引火点 … 425℃
・爆発する濃度 … 2.7~36%
と火気厳禁の存在だが、冷蔵庫に充満して爆発!するほど放出されないのでご安心を。
エチレンは、じゃがいもやたまねぎを休眠状態にして、芽を出しにくくする働きがある。長期保存ができるのはもちろん、じゃがいもの芽には天然の毒素・ソラニンやチャコニンが多く含まれ、食べると吐き気や下痢を起こすことがあるので、芽が出てしまうと商品価値が下がる。
そのためじゃがいもの貯蔵庫では、低温保存とエチレンで芽を出しにくくしているのだ。
家庭で保存する場合は、
・0~10℃の低温
・光を当てない
・リンゴを一緒に入れておく
だけで長持ちする。リンゴはエチレンの放出量が多いのが理由だが、メロンやアボカドでも同じ効果が得られる。
キャベツとリンゴは共演NG
じゃがいもが休眠状態になるのに対し、多くの野菜や果物はエチレンによって熟成が進む。これをうまく利用すれば、未成熟な果物も、短時間で「食べごろ」にできるのだ。
「青いバナナ」に代表されるように、ほとんどの果物は未成熟のまま日本に輸入される。熟した状態では、傷みやすく害虫もつきやすいので、輸入が禁止されているものが多いからだ。
もちろん未熟なままでは商品にならないので、陸揚げされてから追熟(ついじゅく)がおこなわれる。その際に使われるのがエチレンで、バナナやキウイフルーツ、トマトの定番アイテムとして使われている。ただし追熟=老化なので、やり過ぎると傷んでしまうこともある。
長期間放っておかず、ときどき様子をみるのが良いだろう。
逆に、同居させないほうが良いものもある。ホウレンソウやブロッコリー、キャベツはリンゴの近くに置いておくと、黄ばんでしまうのだ。
多くの野菜も自分を成長させるためにエチレンを放出している。例えばキャベツの場合、葉が丸まる結球が始まると、エチレンの生成量が最大になるというデータがある。リンゴのエチレンで黄ばんでしまうのは、成長を超えて「老化」が加速されてしまうからだ。
熟すのに時間がかかる果物には効果的だが、言い換えればエチレンによって「老化」させているに過ぎない。鮮度が命の野菜には不向きなのも、当たり前の話だ。
まとめ
・りんごは、エチレンの放出量が多い
・エチレンは、引火性の高いガス
・じゃがいもは休眠状態になり、芽が出にくくなる
・バナナやトマトは、エチレンで追熟できる
・キャベツやホウレンソウは黄ばんでしまうのでNG
成長期のホウレンソウにエチレンを与えると、根や葉が早く伸びるというデータもある。
土を使わない水耕栽培やLED照明に次いで、「エチレン菜園」が登場する日を楽しみにしていよう。
(関口 寿/ガリレオワークス)
※この記事は2014年07月21日に公開されたものです