お使いのOS・ブラウザでは、本サイトを適切に閲覧できない可能性があります。最新のブラウザをご利用ください。

果汁100%の炭酸飲料―100%なのに炭酸って入る余地あるの?

暑くなると手放せないのが冷たい飲み物。「果汁100%」で「炭酸入り」なんて商品を見かけるが、混ぜものが入っても100%なのは濃縮還元という技術が使われているからだ。

【たったの10円でできる!? 自家製炭酸水を使った贅沢洗顔法とは】

「100%」の表示から「自然」をイメージするものの、水分以外が減っていなければ100%果汁と名乗れるどころか、甘さや酸っぱさに基準が定められた立派な加工食品だ。「果汁入り」になると原材料が10%以上あればOKなので、最大90%は「別のなにか」を飲んでいることになるのだ。

果汁100%=「生」とは限らない

果汁100%には大別して、「ストレート」と「濃縮還元」の2種類がある。ストレートは文字通り「そのまま」の意味で、酸化防止剤などの食品添加物を加えることも禁止されている。何もたさない、何も引かない。ウィスキーのCMではないが、自然な状態のものだけがストレートと名乗ることができる。

対して濃縮還元は、果汁らしい成分が減るのは許されないが、水分は不問となる。そこで、しぼった果汁の水分を減らす「濃縮」から始まり、成分はそのままでも体積が減るので、自然界には存在しない果汁200%を作ることもできるのだ。

これに水を足してもとの状態に戻すのが「還元」で、成分の割合が下がらなければ100%と表示できる。食塩水の濃度は、

・食塩水の濃度(%)=食塩の重さ(g)÷(食塩と水)の重さ(g)×100

で表現されるので、水が加わった時点で「100%食塩水」はあり得ない。ところが濃縮還元は、果汁らしい成分が減らなければOKなので、何かを加えても100%と名乗ることができる。自然なイメージとは裏腹に、炭酸入りや栄養機能食品も存在する。

うどんで有名な地域のみかんジュースも、料理やカクテルに人気のレモン汁も、濃縮還元と表示された製品は「加工食品」と考えるべきだ。

濃縮還元のメリットは?と問われれば、それは大人の事情といえるだろう。例えば10倍に濃縮すれば10分の1の容器で済むし、水分が減って軽くなる。保管/輸送コストは大幅に下げつつも、行き先で水を加えれば100%に戻せるので、商業的には非常に理にかなった方法なのだ。

酸っぱくなければ「レモン」じゃない?

濃縮還元の原理はわかったが、水分以外は自然な状態なのか? 残念ながらNoで、甘さ/酸っぱさに基準が設けられ、それをクリアしないと「還元果汁」を名乗ることができない、かなり人工的な品物だ。

農林水産省の「果実飲料品質表示基準」から、濃縮または還元果汁に必要な甘さ/酸っぱさの基準は、

●甘さ(糖用屈折計示度)

・オレンジ … (濃縮)20以上 / (還元)11以上

・りんご … (濃縮)20以上 / (還元)10以上

・ぶどう … (濃縮)30以上 / (還元)11以上

●酸っぱさ(酸度)(%)

・レモン … (濃縮)9%以上 / (還元)4.5%以上

・ライム … (濃縮)12%以上 / (還元)6%以上

・うめ … (濃縮)7%以上 / (還元)3.5%以上

少々乱暴な言いかたをすれば、甘くなければオレンジジュースと表示できないし、レモンジュースは酸っぱければOKの意味になる。少々残念だが、水分を含めた「自然らしさ」よりも、味が優先されているのが現実だ。

「果汁入り」になるとハードルはさらに下がり、還元果汁が10%以上100%未満の果汁が含まれていればOKだ。もっとも少ない10%なら、9割は「別のなにか」を飲んでいることになり、もちろん不健康な成分が含まれているはずもないが、ある意味で度胸を試される飲み物といえよう。

まとめ

・果汁100%は、「しぼったままの果汁」とは限らない

・水分を減らした「濃縮」と、水分を戻した「還元」でも100%と名乗れる

・自然な状態よりも、甘さ/酸っぱさが重要

・「果汁入り」は、果汁以外が9割入っていてもOK

100%=自然な状態と思っていたのが、みごとにくつがえされた。

本当の100%果汁を味わいたければ、「自宅+ジューサー=生ジュース」が近道のようだ。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2014年06月27日に公開されたものです

SHARE