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イプシロンロケットって何?何がすごいの?

画像はイメージです

2013年9月14日、鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所において、2度の延期を経てようやく打ち上げに成功した「イプシロンロケット」。

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テレビのニュースでも大々的に取り上げられていましたので、記憶にある人も多いのではないでしょうか。

ところで、このイプシロンロケットは何をするために打ち上げられたものなのでしょうか。そこで今回は、このロケットが担っている大切な役割についてご紹介したいと思います。

イプシロンロケットって何?

イプシロンロケットは、JAXA(宇宙航空研究開発機構)を中心に開発を進めている小型人工衛星打ち上げ用の固体燃料ロケットです。今回はその試験機で、2006年に廃止された「Μ-Vロケット」の後継機として、2010年から本格的な開発が進められています。

気になる「イプシロン」という名前ですが、これはギリシア文字の「イプシロン(Ε)」から取っています。
過去、日本で開発してきたロケットには、カッパ(Κ)・ラムダ(Λ)・ミュー(Μ)などのギリシア文字が使われていたことから、その流れでイプシロン(Ε)が採用されました。

なお、公式には「Evolution & Excellence(技術の革新・発展)」、「Exploration(宇宙の開拓)」、そして「Education(技術者の育成)」が由来であるとされています。
また、「いいロケット」から「Eロケット」→「イプシロンロケット」になったという逸話もあります。

何がすごいの?

ところで、このロケットの特徴やすごさはいったいどこにあるのでしょうか。

まずは、何と言っても世界初の人工知能搭載ロケットである点でしょう。
イプシロンロケットには「ROSE(Responsive Operation Support Equipment:即応型運用支援装置)」と呼ばれる人工知能が搭載されていて、ロケット自身が機器を点検するための「自律点検機能」を持っています。

この機能があるおかげで、従来は1カ月以上もかかっていた打ち上げ準備期間を、わずか1週間程度へと大幅に短縮できるようになりました。

それとあわせて、たった数台のパソコンによるロケットの管制が可能となっています。原理的には、ネットワークで接続されていれば世界中のあらゆる場所で管制を行うことができるため、この仕組みを「モバイル管制」と呼んでいます。

次に注目すべき点は、その打ち上げコストで、従来のH2Aロケット(Μ-V)が約75億円かかっていたのに対して、今回のイプシロンロケットはその70%の約53億円となっています。さらに、将来的にはH2Aロケットの50%を切る30億円以下を目指すとされています。

イプシロンロケットが果たす役目とは

このような仕組みを持ったイプシロンロケットの最大の目的は、打ち上げの仕組みを簡単にすることにあります。

小型衛星を低コストかつ短期間で打ち上げられれば、宇宙に向かう敷居を下げ、宇宙開発をより活性化させることができるでしょう。

また、惑星分光観測衛星「ひさき」(SPRINT-A)を人工衛星軌道上に投入することも、その目的の1つです。

「ひさき」とは、世界初の惑星観測用宇宙望遠鏡で、金星や火星といった地球型惑星の大気が宇宙空間に逃げ出す仕組みを調査する役割などを担っています。

もし、このメカニズムが解明できれば、かつて初期の太陽系で地球と同じような大気を持っていた金星や火星が、なぜ現在のような生物が住めない過酷な惑星になってしまったのか、その理由が分かる日が訪れるかもしれません。

まとめ

将来的な打ち上げの簡素化を目指している「イプシロンロケット」。その目的は、打ち上げの仕組みを簡単にして早く安く行うことで、宇宙開発に対する敷居を下げることでした。

今回は打ち上げ成功で盛り上がりましたが、この本来の目的が達成される時代が到来すれば、ロケットの打ち上げそのものが一大イベントではなく、日常的な出来事に変わっていくのかもしれませんね。

(文/TERA)

著者紹介

小さい頃から自然科学に関心があり、それが高じて科学館の展示の解説員を務めた経験も持つ。現在は、天文に関するアプリケーションの作成や、科学系を中心としたコラムを執筆している。

2014年1月13日本文の一部に修正がありました。

※この記事は2014年01月07日に公開されたものです

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