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各国で違う名前の例「日本=山田太郎」「英語=ジョン・スミス」では、ロシアでは?

7月6日付の朝日新聞朝刊に、「親知らずは、なぜ痛む?」という解説が載っていました。

でもこの記事を目にしてあらためて思ったのは、「親知らず」っておもしろい言葉だな、ということ。皆さんもご存知の通り、「親知らず」とは大人の永久歯で一番奥に生えている上下左右の4本の歯のこと。正式名称は「第3大臼歯(だいさんだいきゅうし)」。それなのに、今では誰も「第3大臼歯」とは呼ばず、「親知らず」で話が通じます。

そもそも日本で「親知らず」と呼ぶようになったのは、永久歯のうちで18歳~24歳と一番最後に生える歯であり、昔はその年頃に親が亡くなっていることが多かった、あるいは親も知らないうちに生えたからという説がよく言われます。そのほか、永久歯を乳歯の親と位置づけると、親知らずには乳歯に対応する歯がないために「親知らず」と呼ぶという説もあるようです。

では、外国ではどうなのでしょう?

英語では、なんと「wisdom tooth(知恵の歯)」。「一人前に成長した頃に生えてくる」という意味で、ヨーロッパ諸国でも「知恵の歯」という言い方をします。中国でも同様に、「智歯」「智牙」と言うそうです。ちなみに、韓国では愛を知る年頃に生える歯ということで「愛の歯」という呼び方をするそう。なんともロマンチックですね。

このように、言葉の語源を調べたり、外国語との比較をしてみると、思わぬ発見や楽しみが潜んでいるもの。今回はそんな知っているとちょっとためになる言葉の由来の違いを集めてみました。

黒幕

自分は表に出ずに、他人を操って陰で影響力を及ぼす人のこと。これは歌舞伎由来の言葉で、夜の背景の幕や、死んだ設定の人物を隠すために使用された幕を意味します。

同じ意味を持つ英語の「fixer(フィクサー)」は日本語でも使われますが、英語ではほかに「陰で指図する人」という意味で「a wirepuller」とも言い、これは操り人形師という意味も兼ねています。中国語では舞台裏を意味する「后台(ホウタイ)」と言います。

杞憂

古代中国の杞の国の人が、天が崩れ落ちてこないかと心配したという故事から、取り越し苦労をする、無用の心配をするという意味です。

英語では、「absurd fear(absurd=ばかげた・おかしな、fear=恐れ、心配)」、「needless anxiety(needless=不必要な、anxiety=心配事)」のほか、「If the sky falls we shall catch larks」(空が落ちてきたらヒバリが捕れる)などと言ったりもするようです。

狐の嫁入り

天気雨のこと。晴れているのに雨が降っているという不思議な天気が、狐に化かされているようであることから、この呼び名がついたそうです。

外国でもなぜか天気雨と動物の結婚を結びつける表現が多く、イギリス、イタリア、インドなどは日本と同じで狐の嫁入りと呼ばれています。そして韓国では虎、アラビアではねずみ、アフリカでは猿やジャッカルや豹、ブルガリアでは熊、スペインでは魔女(!)の結婚というそうです。

愚連隊

暴力や不正を行い不良少年の一団のことで、「グレる」「連隊」の合成語です。

「グレる」とは悪の道に入ること、不良の意味。グレハマのグレが動詞化した言い方で、ハマグリをひっくり返したグリハマ→グレハマと転じています。ハマグリは2枚の貝がピッタリ合わさっていますが、ひっくり返すと合わなくなることから、物事の食い違い、不良という意味になりました。アメリカ口語では「(a gang of)hooligans」。フーリガンとはならず者を意味し、一般にサッカーの試合会場の内外で暴徒化した集団のことを言います。語源としてはアイルランド系の一家の姓であるフーリハン(hooligan)に由来しているという説があります。

<番外編>
■山田太郎

「山田」も「太郎」も、男性に多い名前で、文書の記入例としてよく使われます。女性の場合は山田花子となります。

英語圏の男性はジョン・スミス(John Smith)、女性はジェーン・スミス(Jane Smith)。ちなみに身元不明の遺体の場合、男性はジョン・ドゥ(John Do)、女性はジェーン・ドゥ(Jane Do)と呼ばれるようです。

ドイツではハンス・シュミット、韓国ではホン・ギルトン(洪吉童)、ロシアではイワン・イワノヴィッチ・イワノフ、イスラエルではイスラエル・イスラエリなどが記入例になるありふれた名前として活用されています。

こうしてみると、同じ言葉でも国ごとに由来が異なるものもあれば、どの国でもだいたい同じ表現になる場合もあります。ほとんどの国にとって、「親知らず」は「知恵の歯」を意味するなんて驚きですね。あらためて身の回りの言葉にもう少し注意を払ってみると、おもしろいかもしれません。

(東野由美子/サイドランチ)

※この記事は2013年07月08日に公開されたものです

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