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雑学 生活

トキワ荘プロジェクトからプロ漫画家が次々誕生!その秘密は!?

「トキワ荘プロジェクト」をご存じでしょうか? 漫画家を志す人に、安価にシェアハウスを提供し、プロ漫画家になるために支援するプロジェクトです。

藤子・F・不二雄先生や石ノ森章太郎先生が住んだ、伝説の『トキワ荘』の名を冠したこのプロジェクトは2006年8月に開始され、着実に成果を上げて、今新たな局面に入ろうとしています。


■2012年にはプロを12人輩出!

トキワ荘プロジェクトの成果は着実に上がっています。2006年8月に始まったこのプロジェクトには、現在まで約260人の漫画家の卵が参加し、約6年半で31人がプロ漫画家としてデビューしました。

特筆すべきは2012年の成果です。上記31人のうち12人が2012年度にプロデビューしたのです。この驚くべき成果は、「ノウハウの蓄積によってプロの漫画家になるために何をしなければならないか」が明確になったため、とのことです。

では、その「明確になったこと」とは何でしょうか?

NPO法人『NEWVERY』理事/事務局長 トキワ荘プロジェクト・ディレクターの菊池 健さんにお話を伺いました。

※……ここではプロ漫画家を、「自分の名前で(商業)雑誌に作品が掲載された、あるいは自分の名前で単行本が刊行されたことのある漫画家」と定義します。

■トキワ荘プロジェクトの概要

――トキワ荘プロジェクトの概要を教えてください。

菊池さん トキワ荘プロジェクトは、「本当にプロになりたいという漫画家を志す人」に安価にシェアハウスを提供するものです。21棟116部屋を用意しておりまして、現在はほぼ満室状態ですね。男子荘に若干の空きがあります。

――人気があるのですね。

菊池さん はい。女性の空き室待ちは60人ぐらいおられます。

――入居するのは何歳ぐらいの人でしょうか。

菊池さん 平均25歳ぐらいですね。30歳までという年齢制限があります。

――30歳より上だと入居できないのですか?

菊池さん いえ、本人の状況によっては入居OKです。現在38歳の人も入居しています。ただし原則3年入れ替え制です。3年以内にプロになって出ていってくださいね、というのが基本条件です。

ただし、3年を過ぎても入居を継続することが、本人のプロを目指す活動にメリットがあると面談で判断した場合のみ、1年ごとの更新をしています。

――3年以内ですか……。厳しい感じもしますね。

菊池さん はい、業界でもおよそ3年くらいが、志望者がプロ漫画家に向いているかどうかという見極めをする一つの目途といわれています。私たちのキャッチコピーは「あなたの才能に必要なのは、締め切りです」というものなのですが、この締め切りは結果的に志望者のためになることだと考えています。

■トキワ荘プロジェクト入居条件

・本当にプロ漫画家になりたい人であること
・30歳までの男性、女性
・入居から3年をめどに入れ替え制(期限内にプロになること)

■トキワ荘プロジェクトの意義とは?

――漫画家を志す人が「トキワ荘」に入居するメリットは大きいでしょうか。

菊池さん まず地方在住のプロ漫画家になりたい人は東京に出てこないといけないですね。漫画出版の90%以上が東京で行われていますので。そこで一番問題になるのは住むところです。具体的に言えば「家賃」です。月々の金額だけでなく、敷金、礼金、不動産屋の手数料などの初期費用がとても掛かります。

――そうですね。

菊池さん 当然最初から漫画の仕事があるわけではありませんので、アルバイトで生活することになります。食費や娯楽費を切り詰められても、家賃や光熱費、水道代を切り詰めることは難しいと思います。

――確かにそうです。

菊池さん 漫画家になりたいんだけど、食べるためには働かないとならない。そうなると当然アルバイトを一生懸命やらないといけなくなって、気が付くと10年たって、アルバイトのままで、しかも漫画家としてもまだ芽が出ていない、なんてことになりがちです。

――よく聞く話ですね。

菊池さん 東京は家賃が高いですから、その負担を減らせば、その分アルバイトをする時間が減って漫画に専念できるわけです。部屋が安いだけで意味があるということですね。

――シェアハウスというメリットもあるんでしょうね。

菊池さん 「プロ漫画家になりたい」という同じ志を持っている人が一緒に住んでいることのメリットはとても大きいと思います。情報を共有したり、助け合ったりできます。何よりも、プロを目指している自分が、周囲のデビュー済みの人間と比べ、自分の位置を知り、自分に何が足りないのか気付けることが大きいと思います。

■トキワ荘プロジェクトの標準的家賃

・標準6畳間例:家賃48,000円/月
(水道光熱費、インターネット料金込み)
・入居費:30,000円
共有備品:洗濯機、冷蔵庫、電子レンジ、炊飯ジャー、ガスレンジ、FAX電話、ホワイトボード
共用設備:お風呂、トイレ、キッチン水回り、ダイニング、玄関、ADSL回線
※エアコン、テレビ配線は部屋ごとに条件あり(見学時説明)
※更新料なし、火災保険料込み

■プロの「地力」を付けることが最重要!

――2012年には一気に12人がデビューしていますが、素晴らしい成果ですね。

菊池さん 12人のうち、4人は入居して即デビュー、4人は入居して1・2年でデビュー、4人は入居して3年でデビューという内訳でした。

――トキワ荘プロジェクトで蓄積したデータが生かされていますか?

菊池さん はい。私たちに「プロ漫画家になるための最低条件」が分かってきたことですね。トキワ荘プロジェクトを始めたころは、家賃を安価に設定して、皆さんに部屋を提供することが主な業務でした。

しかし、業界の人とお話ししたり、プロの漫画家さんからお話を聞いたりしてだんだん状況が分かり、また独自にリサーチやインタビューをして「プロの漫画家になる方法」とは何かを考えてきました。

――その上で分かったことは何ですか?

菊池さん 18歳-63歳までの350人のプロ漫画家にアンケートしたデータがあり、これを『漫画家白書』という書籍にまとめました。いろいろなことを聞いたのですが……。例えば、何ページの原稿をプロデビューするまでに描きましたか、というデータがあります。

連載経験のある作家がデビュー時までに描いていた原稿枚数は、平均で240ページ。そのうち約半分くらいの方が、毎月一本の原稿を制作するスピードを持っていました。これは、普通の志望者には早いペースです。


――なるほど、つまり……。

菊池さん 当たり前のようですが、「たくさん早く原稿を描くということ」が王道です。志望者にはこれがなかなかできません。「1,000ページ描けばプロになれるよ」という漫画業界で古くから言われている言葉がありますが、図らずもそれを立証できたわけです。

――そういうデータはなかなかないですよね。

菊池さん はい、このような定量化されたデータを明らかにしたことは、私たちの活動にとって大きかったです。私たちは入居者には「たくさん描くこと」を推奨しています。月に1本作品を上げられることを「地力」と私たちは呼んでいます。この地力を付けることがまず最初のハードルですね。

――ほかにもいろいろなノウハウがあると思うのですが、それらも入居者に伝えるのでしょうか。

菊池さん はい。新入居した同期を集めて、入居後の目標設定や、作品を見せ合うなどの入居時オリエンテーションを、毎月行っています。また入居者には、最初の年には年2回の面談、あとの2年は年1回の面談を行っています。

それぞれの目標をどうやって実現するかといったことを、事務局と入居者で話し合いますね。

また、毎月各所から頂く、マンガの仕事やアシスタントの紹介連絡なども、入居者やOB/OGには、かなりの量の情報提供をしていますし、それをきっかけにデビューしたり、作品がTVドラマ化するなど、実績につながっています。書籍発刊や、マンガ制作の講習会などにも力を入れています。

■京都は漫画教育の集積する都市!

――トキワ荘プロジェクトで新たな取り組みはありますか?

菊池さん 今年から京都版トキワ荘事業を開始します。漫画出版社のほとんどは東京にあるのですが、しかし地方でトキワ荘プロジェクトができるとしたら「京都」なのではないかと考えています。

――なぜ京都なのでしょうか。

菊池さん 京都市は今、漫画教育の集積場所になってきていると思うのです。京都精華大学では、それまで「学科」であったのが「マンガ学部」になり、またほかにも市内の2校にマンガ学科があります。

――そこで学びたいという学生さんも多いのでしょうか。

菊池さん 京都市では1,000人超の大学生、大学院生がマンガを学んでいます。東京以外では、漫画に関してこのような集積がある場所は京都しかありません。昨年度から、マンガ出張編集部やマンガに関する講習会を行っていますが、どれも東京と変わらない、かなりの手応えでした。

――京都でそんなことが起こっているんですね!

菊池さん はい。京都は「漫画教育におけるボストン」になれるのではないかと思っています。ですので、2013年8月に京都の町屋に一軒家を借りて、そこから京都版のトキワ荘プロジェクトを開始します。

インフラを整備して、できれば海外からの留学生も受け入れて。「京都で漫画について学ぶ」という形を作ることは長期的に、マンガ業界の底上げになると考えています。


いかがだったでしょうか。2006年8月に始まったトキワ荘プロジェクトはクリエイターの支援・育成というその役目を果たしながら新たな展開を模索しています。この先がとても楽しみではないでしょうか。


⇒トキワ荘プロジェクトの公式サイト
http://tokiwasou.dreamblog.jp/

⇒京都版トキワ荘事業の公式サイト
http://www.tokiwa-so.net/kyoto/


(高橋モータース@dcp)

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