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夢の解読精度70%以上。もしも見たい夢が見られたらどうなる?

2013年4月2日、株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)が、見ている夢の解読に成功した。精度は70%以上というから、将来的には夢の録画もできそうだ。

逆に応用すれば、見たい夢を見ることができるのだろうか?夢は起きている間に感じているストレスを発散させる役割もあり、言うなれば心の鎮痛剤だ。毎日好きな夢だけを見続けたら麻薬のように夢に溺れ、精神のバランスを崩すことになりそうだ。


■自作自演のごほうび

夢分析の権威であるジークムント・フロイトは、夢は潜在的な願望を充足させるものと表現している。欲しい/なりたいと強く願う内容はもちろん、気づかないうちに感じている不満やストレスも夢の題材となる。願望や不満を夢に映し出すことで心に充足感を与え、ストレス発散をおこなっているのだ。

夢は、身体は眠っているが脳が活発に活動しているレム睡眠時に見るというのが通説だが、実は脳もぐっすり休んでいるノンレム睡眠時にも見ている。

レム睡眠時の夢は内容が複雑なのに対し、ノンレムの夢はシンプルなものが多く、映画のシーンが現れたり、昼間に会った人が登場したりと、起きている時の体験がモチーフとなったものが多い。脳の活動が夢の複雑さに直結しているのだ。

おもしろいのは、夢は幻覚の一種に過ぎないことだ。あたかも映像のように感じる夢も、記憶の断片をつなぎ合わせたイメージが視覚神経に伝えられたに過ぎない。

脳が記憶の整理をする一環で夢が生まれるという説もあるが、発生メカニズムには解明されていない部分が多い。確実に言えるのは、夢は記憶のつなぎ合わせだから、未来や未体験の出来事が映し出されることはない。

予知夢(よちむ)など神秘的な話も聞くが、意識していない記憶や考えが、夢の中ではっきりと映し出された、と考えるのが順当だろう。

ATRの夢解読には機能的磁気共鳴画像(fMRI)装置が使われ、脳活動を計測し、そのパターンから夢に現れている物体を知ることができるという。

つまり、夢=脳が作り出したイメージと考え、活動している部分と働き具合から、頭に浮かんでいる物体を割り出す仕組みだ。本やクルマなど20種類ほどのカテゴリから一般的な物体が解読でき、7割以上の精度というから、どんな夢だったのか概略を知るには十分過ぎるスペックだ。

この装置は精神疾患の診断にも期待が寄せられている。幻覚や想像を解読し、何を感じているのかが割り出せれば、不安や恐怖を和らげることができるからだ。

夢に溺れる

この装置を応用したら、見たい夢が見られるのだろうか?脳の活動パターンからイメージしている物体が分かるのなら、同じパターンで脳を刺激すれば、物体をイメージさせることができるかも知れない。欲しかった物や好きな光景、意中の異性と毎晩夢で逢えれば、バラ色の人生が送れそうだ。

ただし、夢のストーリーはどうやって決めるのだろうか?夢には理論性がなく、奇妙なところが多いのは、理論をつかさどる前頭葉(ぜんとうよう)の活動が低下しているからだ。
そのためドアを開けたら海が広がっていたり、話し相手が急に変わったりと、行き当たりばったりでつじつまの合わないことが多発する。文字通り非現実なのだから何が起きても不思議ではないから、やっと手に入れた物が壊れたり、好きな異性にフラれるなんて結末にもなりそうだ。

せっかく良い夢を見ていたのに、起きた瞬間に忘れてしまった、なんて話を良く聞く。逆に嫌な夢はしっかりと覚えているのはなぜか?

夢を忘れるのは起きるタイミング、つまりレム/ノンレム睡眠のどちらで目覚めるのかによっても異なるが、もっとも大きな要因は、重要性を感じているかどうかだ。

記憶は、感情を伴うような強い印象がないとすぐに薄れる傾向がある。楽しかった思い出は比較的すぐに忘れてしまうが、嫌な出来事はいつまでも忘れられないのもこのためだ。

せっかく見たい夢が見られても、起きたらすぐに忘れてしまい、また見たくなる。節度を持って接しているうちは良いだろうが、依存してしまうと酒と同様に身を持ち崩すことになりかねない。

夢は自分へのごほうびのようなものだから、例え好きな夢が見られるようになっても、ほどほどにしておくのが良さそうだ。

まとめ

現在は、夢に出てくる物体が何かを知るのが限界だが、将来的には映像として残せる日が来るのかもしれない。

悪夢を録画したホラー映画や、素敵な夢を売りますなんて商売が始まったら、夢にも著作権問題が生まれてしまわないか心配だ。

(関口 寿/ガリレオワークス)

※この記事は2013年05月12日に公開されたものです

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