なぜ霊柩車を見たら親指を隠すのか? 理由や意味・由来を解説
霊柩車を見た時に「親指を隠せ」と言われた経験はありませんか? ではなぜ、霊柩車を見たら親指を隠す必要があるのでしょうか。今回はこの古くからの言い伝えについて、理由や意味、由来を解説していきます。
近年では車の上部に装飾のない霊柩車が一般的になってきましたが、ひと昔前は金色の豪華な飾りつけがされた霊柩車がよく通っていましたね。
霊柩車を見かけた際、親や祖父母などの年長者から「霊柩車を見たら親指を隠せ」と言われた人も多いはず。しかし、なぜ親指を隠さなければいけないのか、その理由を知っている人は少ないのではないでしょうか?
この記事では、霊柩車を見たら親指を隠す理由や意味、由来について解説します。
なぜ「霊柩車を見たら親指を隠せ」と言われているのか?
霊柩車を見たら親指を隠さなければならない理由は、現在のところ明確にはなっておらず、諸説存在します。
ここでは、特に代表的な3種類の説を紹介していきます。
(1)親の死に目に会えないから
霊柩車を見た時に親指を隠す理由として最も一般的なのが、「親の死に目に会えない」というものです。
親は当然子どもより早く歳を取るので、親の方が先に亡くなることが多いでしょう。
親の死に目に会えないというのは、親が死んだ際に傍に居られない意味もありますが、自分が親より先に死んでしまうという意味が本来だとされています。
つまり、霊柩車を見た時に親指を隠さないと、「親より先に自分が死んでしまう」と信じられていたのです。
それは自分にとっても不幸ですが、何より親にとって不幸な出来事になります。そのため、親は子どもが幼くして亡くならないよう、霊柩車を見たら親指を隠すように諭していたのだと考えられます。
(2)親が早死にするから
霊柩車を見ると「親が早死にする」と言い伝えられている家庭や地域も存在します。
先ほどの「親の死に目に会えない」と同様に「親」がキーワードになっていますが、これらは親指が両親を連想させることから生まれた説だと考えられています。
いずれにしろ、親を大切に思う気持ちから、霊柩車を見た時に親指を隠す風習が広まっていったのでしょう。
(3)縁起が悪いから
霊柩車を見ると親指を隠すのは、単純に「縁起が悪い」からというのも説の1つです。
親指とは魂が出入りする神聖なものという伝承がありました。そのため、縁起が悪いイメージのある葬式に遭遇した際は、親指を隠して悪い気が入らないようにしていたのです。
同じような理由の言い伝えとしては、「親指を握ると疫病にならない」や「親指を隠すと夜道でキツネに化かされない」などもあります。
親指を隠す意味と由来
そもそも、「親指を隠す」という行動にはどのような意味や由来があるのでしょうか。
ここでは、親指にまつわる2つの言い伝えをもとに、親指を隠す行動に込められた意味や、その背景にある由来を詳しく解説していきます。
(1)親指は魂の出入りする場所
先述の通り、古来より親指は霊気が出入りする場所であり、他人の霊魂も親指を介して身体に入ってくると信じられていました。
葬式では、亡くなった故人の霊やその他の浮遊霊が周囲を彷徨っていて、生きた肉体へと戻ろうとしているため、葬式を象徴する霊柩車を見た際は、親指から死者の霊が入ってこないよう親指を隠すようになったという説もあります。
実際、霊柩車が生まれる以前から、死者の火葬を見送る儀式である「野辺送り」の最中は、親指を隠すことが習わしだったといわれています。
(2)親指を隠すのは最高位の敬意の表れ
仏教の礼法に「叉手(さしゅ)」という所作があります。
叉手は、握った片手をもう一方の手で覆う所作ですが、その際に片方の親指を握るようにします。これが由来となり、霊柩車を見た時には親指を隠すようになったともいわれています。
叉手は、神仏など最高位の相手に対して行う礼法です。霊柩車で運ばれる故人に敬意を表して叉手をしていたのが、親指を隠す行為として簡略化されたと見ることもできます。
この説の派生として、霊柩車を見た後は運気が上がるといわれることもあります。このように、霊柩車は必ずしも不幸や不吉の象徴ではないようです。
霊柩車で親指を隠すのは自分や親を守るため
昔から「霊柩車を見ると親指を隠せ」と言われている背景には、親指が親を連想させるために「親の死に目に会えない」「親が早死にする」などの理由があります。
また、親指が霊気の出入り口とされているため、死者の霊が親指から入ってこないよう、親指を隠してガードするという意味合いもあったようです。
霊柩車を見たら親指を隠す行為を迷信と片付けることもできますが、何かしらスピリチュアルな意味が込められた言い伝えとも考えられます。
同じ親指を隠す行いも、意味や由来を知っているかどうかで意義が大きく変わってきます。
現代では霊柩車を見る機会も減ってきましたが、古くからの言い伝えとその背景について知識として知っておくのも無駄なことではないでしょう。
(LIB_zine)
※画像はイメージです