メーカー勤務とパートタイマーを経て、独学で動画クリエイターに!? 竹原めぐみさんが一年で独立できた理由
いつしかコロナ禍の生活に慣れてしまった私たちですが、そろそろ本格的にウィズなコロナに変わってきそうな予感。そんなホントの意味での新生活を迎えられそうな今年の春、私たちは何をすべきでしょうか。今回はパート勤務から独学でフリーの動画クリエイターに転身した竹原めぐみさんにインタビュー。動画制作スキルを身に着けようと思ったきっかけから、現在どのようなお仕事をしているのかまで深掘りしました。
世は副業時代なんて言うけれど、結局そんなの超優秀な人だけができることでしょ……と諦めていませんか? 物価高も相まって、副業をして毎月少しでもいいからお小遣いを増やしたい、貯金を増やしたい……そう考える人の数は増えています。
けれど、OLをしながらバイトもするなんて身も心も持たないし、ネットで出てくる「割のいい副業」はどれも特別なスキルが必須。本業だけだって心的にはいっぱいいっぱいなのに、新しいことを勉強する余裕なんてありません。
けれど、実際に副業を経て独立した人の話を聞いてみると、みんな口をそろえて「そんな大したことじゃないよ」と言います。では実際、どうしてそう感じるのか、聞いてみることにしました。
結婚して家庭の事情から退職し、地元で子育てしながらパートで働いていた竹原めぐみさん。彼女が動画クリエイターとして副業を始め、フリーランスとして独立できたきっかけは「気になるスキル」を学んでみたことでした。
趣味感覚の「子どもの動画編集」をスキル獲得のきっかけに
――まず、竹原さんのご経歴を簡単に教えてください。
大学では、水産関係の勉強をしていました。同期のほとんどは水産関係の食品メーカーや研究所などに就職していくので、私も地元を離れ、関東の食品メーカーで商品企画や開発の仕事をしていました。
しかし、結婚、出産を経て、家庭の事情により地元に戻ることになり、自身は会社を辞めざるを得なくなりました。地元で前職のスキルが活きる仕事を探すのは難しく、研究補助員としてパートで働き始めました。しかし、時給は決して高くなく雇用も不安定。奨学金を返済しながら子育てもしていく現状に、不安を感じていました。
――結婚や子育てを理由にキャリアを突き詰めることができなくなる女性の声は少なくないですが、竹原さんにもそういった悔しさはありましたか?
商品開発の仕事は楽しかったですし、与えられた仕事を淡々とこなすだけの研究補助員の仕事にはあまりやりがいを感じられませんでした。やっぱり、もっと自分のプレゼンテーションなどのスキルを活かして働きたいという思いはありましたね……。
コロナ禍で幼稚園の休園日が増えてしまい、いよいよ出社して働くことが難しくなってきた頃、真剣に自身の働き方について考え始めました。
――実際、動画編集を勉強し始めたのはその頃ですか?
そうです。学生時代はデザインツールを触ったこともありませんでしたが、メーカー時代はパワーポイントで資料を作るのが得意だったので、動画をまとめることならできるのではと考えました。
きっかけはシンプルで、副業を紹介するブログに動画編集は稼げると書いてあったから(笑)。もともと子どものホームビデオ編集が趣味だったので、やってみたいという気持ちだけを原動力に、動画編集に耐えるハイスペックなPCを買って、アドビのクリエイティブソフトであるAdobe Creative Cloud(※)のコンプリート版をダウンロードし、実際に手を動かしながら、独学で勉強していきました。
※Adobe Creative Cloudは、写真、デザイン、ビデオ、web、UXなどのための20以上の デスクトップアプリやモバイルアプリ、サービスを提供している。その中には画像編集ソフトのPhotoshop、デザインソフトのIllustrator、動画編集ソフトのPremiere Proなどが含まれている。
――PCや動画編集ソフトという先行投資を先にすることに、不安はありませんでしたか?
逆に、形から入った方ができる時もあると思います。その当時はワクワク感が勝っていたので、PC代の投資に不安はありませんでした。
趣味のホームビデオ編集も苦に感じていませんでしたし、その成功体験があったのも大きかったかもしれません。実際にアドビの有料ソフトを使い始めると、スマホの無料ソフトでは到底できないような高度な編集ができるので、勉強も苦に感じず楽しめました。
――もともと、資格やスキル習得のための勉強がお好きでしたか?
社会人になってからは、勉強なんてしたことがありませんでした(笑)。正直、会社と子育てだけで手一杯と思っていましたが、アドビのツールの勉強は楽しかったですね。趣味の延長でしたし、チュートリアルも分かりやすいので、特別なテキストも必要ありませんでした。
コミュニティでの繋がりが情報収集のきっかけに
――趣味の延長から、どうやって仕事を獲得していったのですか?
最初はクラウドソーシングの「ランサーズ」に登録して仕事を探したのですが、最初の仕事の手取りは27円でした(笑)。クラウドソーシングにはランク制度があって、ランクの高い人に仕事が集中しやすいシステムになっているんです。
せっかくPCに先行投資したのに仕事が取れない時期もあって、心が折れそうになったこともありました。
そんな時、ランサーズで『新しい働き方LAB』というコミュニティが立ち上がったんです。自分の働き方を変えたい人がSlackでつながって、スキルアップを報告し合うコミュニティだったのですが、そこでの経験が仕事獲得の大きな一歩になりました。
――コミュニティでの活動を詳しく教えてください。
まず、それぞれがスキルアップのための計画書を作り、計画に合わせて新しいクリエイティブ課題にチャレンジしていきました。『新しい働き方LAB』にはアドビも協賛していて、参加者にAdobe Creative Cloudコンプリート版も提供いただきましたので、それまでは実際に触ったことがなかったソフトを勉強するきっかけにもなりました。
それまで一人黙々と作業しているだけだった私ですが、コミュニティの仲間たちと情報共有もできるようになりました。副業歴の長い人も多く、クラウドソーシングでの上手な仕事の取り方や、お互いに得意なスキルを活かした仕事を紹介しあったりもできるようになりました。
――たしかに、一人で仕事を探すよりも受注効率が上がりそうですね。
実際、クラウドソーシングでは実績も重要視されるので、仲間から紹介してもらう仕事もあえてランサーズを通して発注してもらうことで、紹介できる事例を増やしていきました。7件ほどこなしてからは、ランサーズ上でも他企業から声をかけていただけるようになり、副業としても安定し始めました。
――現在も、クラウドソーシングを通して仕事を受けることが多いですか?
今は知り合いのツテで仕事をもらえることも増えてきています。コミュニティで知り合ったフリーランス歴の長い方から教わった、自分のこれまでの経歴の活かし方や新しい稼ぎ方なども実践しています。
実際、副業が軌道に乗ったタイミングで第二子を妊娠したので、クライアントからの仕事が受けづらい時期もありました。その時には、コミュニティの繋がりで知った『Udemy』というオンライン講座のeラーニング配信を始めました。
審査に通れば誰でも講座動画をアップロードできますし、ストックビジネスなので興味を持ってくれる人がいる限りはお金が入ってきます。
――そう考えると、働き方っていろいろありますね。
そうなんです。クラウドソーシングの話をすると「大変そう」「時給が安そう」と言われることもありますし、もちろんそういった仕事を受けている人もいると思います。
副業は自身で情報を集めていかないと効率を上げることは難しいですが、私の『Udemy』講座では、初心者向けのクラウドソーシング受注で、陥りがちな悩みに寄り添った内容の動画もアップしています。
私自身、コミュニティに参加していなければストックビジネスについて知ることもなかったかもしれません。しかしコミュニティ内では、自身では集めきれなかった情報も、誰かが共有してくれます。クライアントがいなくてもお金を稼ぐことはできることもしれましたし、副業を始めたことで、自身の仕事の選び方を考えるきっかけもできました。
モヤモヤしていた時の自分より、今の自分が好き
――実際、副業や独立は誰でもチャレンジできることだと思いますか?
大変じゃない、というと語弊があるかもしれないのですが……私の場合は興味のあることから始めたので、副業のハードルを高いとは感じませんでした。せっかくなんでも始められるなら、一番やってみたかったことからやってみると、大変さを感じづらいと思います。
ちなみに私の場合、子育てとの並行しやすさを考えて独立という選択肢を取りましたが、副業が軌道に乗れば独立は比較的しやすいと思います。
――初心者が副業を始める時のコツがあれば教えてください。
副業をする人の数は増えていますし、より安い時給で働く人もいることを考えると、生き残り戦略を考えていくことは大切だと思います。だからこそ、自分のこれまでの職歴やそこでのスキルに加えて、いくつかの新しいスキルをかけ合わせていくことも大切です。
私の場合はAdobe Creative Cloudでいくつかの編集クリエイティブツールを使いこなせるようになったことも、仕事の取り方が広がるきっかけになったと思います。
――最後に、これから副業を考えている女性にメッセージをお願いします。
私が研究補助員として働いていた時は、仕事や自分の生活に違和感がありました。自分が納得さえしていれば、パートでの暮らしを幸せと思えたかもしれないけど、毎日「なんか違うなあ」と思い続けるのがしんどくて、そんな生活を変えたいという思いだけが原動力でした。
今は家で学べる方法が多いからこそ、子育てをしてパートで働きながらでも副業をし始めることができましたし、パートだった頃と比べて自分を肯定できるようになって自信もつきました。
皆さんそれぞれの環境があると思いますが、環境に合わせた働き方もたくさんあります。やり始めてしまえば、自然と回る歯車もありますよ!
(取材・文:ミクニシオリ、編集:錦織絵梨奈/マイナビウーマン編集部)