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“複数推し”でも、そこに優劣はない。3カテゴリの推しがくれるそれぞれの幸せ

#令和アラサー女子の推し活事情

瑞姫

近年話題の「推し活」。アラサーの働く女性という、おそらく「推し活」を一番謳歌できるであろう層が実際にはどのように推し活を楽しんでいるのか? 「推し」がいないライターが「推し活」を楽しむ女性たちにインタビューしました。

アラサー独身女性という、おそらく「推し活」を一番謳歌できるであろう層が実際にはどのように推し活を楽しんでいるのかを、「推し」がいないライター・瑞姫さんが「推し活」を楽しむ女性たちにインタビューする企画「令和アラサー女子の推し活事情」

今回は東京都在住、金子さん(28歳・IT系エンジニア)にインタビューしました。

日常に癒しを与えてくれる“推し”

▲提供写真

「推し活」を楽しんでいる人は、たった一人の“推し”がいる訳ではなく、他ジャンルに渡って推しがいることが多い。なんとなくこの企画を始める前から気づいていたことだが、連載が進むにつれて確信に変わりつつある。

今回インタビューした金子さんもその一人。彼女は昨今多くの人気を集める「ちいかわ」、ボーカロイドの「初音ミク」、とあるヴィジュアル系バンドの3つを推しているという。

最初に、2年ほど前から好きになったと言う「ちいかわ」のことから聞いた。金子さんは「2020年くらいに、Twitterでちいかわちゃんの漫画が投稿され出してすぐくらいから、リアルタイムで追うようになりました」と教えてくれた。

名前の通り、本当にちっちゃくてかわいいから好きです。守ってあげたくなるような(笑)。推しキャラクターはモモンガラッコなのですが、グッズが少ないので、基本的にハチワレちゃんを買ってしまいます。色合い的にも、好みでかわいいものが多いので」

インタビューはオンラインで行ったのだが、そう話す金子さんの側にはハチワレちゃんのぬいぐるみが。椅子にもハチワレちゃんと思わしき、ブルーとホワイトの綺麗な“ハチワレ”部分が見えた。他にも、背景には「ちいかわ」グッズが数多く映っている。

▲提供写真

ぬいぐるみやキーホルダーは家に飾るそうだが、「主に持ち歩けてなおかつ生活の中で使えるものを買っています」という金子さん。

バッグの中には「ちいかわ」グッズがあふれており、「ポーチや鏡、ポケットティッシュもちいかわちゃん。カバン開けたらちいかわちゃんがいっぱいです」と、日常生活を送っているとどこかで「ちいかわ」に必ず遭遇するような状況ができあがっているようだった。

「買うと満たされるんですよね。自分が買ったコンテンツが継続してくれたらいいなって思います。漫画の更新も日常の楽しみであり、癒しです」

出先でも、家でも、どこにいても目に入る「ちいかわ」。それは、“推し活”をすることで、疲れた心に元気をくれる、日常に寄り添うような存在のようだ。

非日常の楽しさをくれる“推し”

漫画の更新を楽しみにして、グッズを買う。日常生活を癒してくれるような“推し活”がちいかわ。では、あと二種類の“推し”は、一体金子さんにとってどんな存在なのか。

▲提供写真

『会える嬉しさ』『ライブに行く楽しさ』が初音ミクやヴィジュアル系バンドにはあります。特に初音ミクは、みんなでワイワイ楽しめるようなライブなんです。私はミクちゃんの見た目が好きで、そこから本格的に音楽にはまりました。最初に知ったのは14歳の時。本格的にハマったのが16歳。もう12年になりますね」

趣味でコスプレを楽しんでいるという金子さん。コスプレにハマったのも、10年前“初音ミクになりたい”と思ったことがきっかけだと言う。

「初音ミクちゃんのライブにコスプレで行ったのがきっかけです。年に1回、2回のライブで、その時に好きなミクちゃんのコスプレをします」

▲提供写真

“推しになりたい”というのも、推しへの愛の形。今でこそ「ちいかわ」グッズであふれている部屋だが、かつては「初音ミク」のグッズもたくさんあったそう。

ライブや“推し”のコスプレ以外にも推し活をしているのかと問うと、「初音ミクのソフトが発売された8月31日と、3月9日(「ミ(3)ク(9)の語呂合わせで“ミクの日”)は、ケーキを買ってお祝いしています」と教えてくれた。他にも、同じ初音ミクを好きな友達とカラオケに行って「初音ミク」の曲やボーカロイドの歌を歌ったり、コラボカフェに行ったりしているという。

コスプレでライブに行く“非日常”も楽しいと話してくれた金子さん。“日常の癒し”である「ちいかわ」とはまた違った幸せや楽しさをくれるのが「初音ミク」なのだろう。

ガチ恋、そして長年推し続けている“推し”

そこで気になるのが、一番長く追っているというヴィジュアル系バンドの“推し”。金子さんは10代の頃にハマり、そこから20歳くらいまでは、バンドメンバーの一人に“ガチ恋”だったという。

「ガチ恋の時は月に10本くらいあった、全てのライブに行っていました。夜行バスで遠征して、大阪、京都、名古屋……。いろいろな場所へ行きました。20歳前後の頃はアルバイトをしていたので、シフト外で自由なところは全部ライブ。それ以外の日はほぼ働くという生活をしていましたね」

ガチ恋の頃の熱量は凄まじい。しかし、そこでさらに驚くのが、「場所によっては母と一緒に」行っていたということだ。そのことについて聞くと「それ(母と一緒にライブに行けること)が一番大きかったですね。思春期は母とけんかすることもあったけど、そのおかげで基本的に仲良くできていました」

10代〜20歳前後の多感な時期に母とうまくコミュニケーションが取れていたのは、共通の趣味があったことも大きいだろう。

また「ちいかわ」グッズや、「初音ミク」グッズは、気になったものだけを買っていたという金子さんだが、ヴィジュアル系バンドの推しについては違ったようで、「とりあえず全部買っていましたね(笑)。メジャーじゃなかったので、どこか使命感もあって」と当時のことを振り返りながら話してくれた。

ヴィジュアル系の“ガチ恋”と聞けば、過激なイメージが多く、“推しと繋がりたい”と願うファンが多いように思うが、金子さんはそうではなかったそう。

「繋がりたいとかは思ったことなかったです。そんなこと言えなかったですし、好きって気持ちが大きすぎて、理想の王子様像として見てました。同担拒否とかも、基本的になかったですし、他の人が推しを好きでもいいって思ってました」

そんな“ガチ恋していた推し活”は、自身が社会人になった頃、推しのライブでのとある発表を持って変化する。

「バンドが活動休止したんです。活動休止を発表されたライブは本当に絶望って感じで泣き崩れてしまいました。けれど、推しが他のバンドの活動ではしてくれていたので、その時に“活動をしてくれていればそれでいい”と思うようになったんです」

そこからは自分のペースで推し活をするようになり、現在に至るという金子さん。今ではバンドのライブの本数も減っているため、遠征もすることは無くなったそうだが、近場で実施されるツアーには足を運んでいるという。

「今はただただ続けてほしいと願うばかりですね」

かつての情熱的な恋心のような“推し活”から、推しがただ活動を続けてくれることを願う、愛のような“推し活”。「ちいかわ」や「初音ミク」とは違い、リアルな世界に実際に存在する“人”であるからこその変化であり、感情なのかもしれない。

違った“幸せ”を与えてくれる、無くてはならない存在

▲提供写真

金子さんにとってなくてはならない“3つのジャンルの推し”は、どれも違った存在で金子さんに幸せを与えてくれる存在であることが分かった。

“推しを複数持とう!”と意識したわけではないだろうが、「推しジャンルが3つあるとどれかが活動を止めてしまっても、メンタルの救済ができる。一つだとバランスが崩れることもあると思うんですけど、心持ちが違うかなと」と推しが複数いる良さについて話してくれた金子さん。

「推しとはどんな存在ですか」と尋ねると、「生きる糧です。12年。青春時代を共に生きてきたので心の支えです」と答えてくれた。

インタビューをしていると、本当に心から幸せそうにみんながみんな推しについて語ってくれることがうれしい。今回の金子さんの“生きる糧”と言う言葉も、大袈裟ではなく心からの本心であり、日常生活を彩り、時に非日常に連れて行ってくれ、コミュニケーションのきっかけにもなる、なくてはならない存在であることが分かる。

中でも、一番長い推しであるヴィジュアル系バンドは、母と一緒に推していたこともあり、親子のコミュニケーションを繋ぐ大切な存在でもあっただろう。

3つのジャンルに推しがいる金子さんだが、グッズを買ったり、ライブに行ったり、イベントに参加したりと、「推しに純粋にお金を落としたい」と言う気持ちは変わらない。

そして、他ジャンルに“推し”がいても、そこに優劣はない。“推し方”も違えば、自分に与えてくれる影響も違う。けれど、どれも自分の人生を支え、彩ってくれる、大切な存在なのだ。

今回のインタビューからは、そんな複数に渡って推しがいることのすばらしさや楽しさが伺えた。たとえ、これからまた“推し”が増えても、きっとその存在も、彼女の人生に新しい色を加えてくれる、他の何にも代えがたい存在になるのだろう。

(瑞姫)

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