「自己認識」とは? 高める方法3つを解説
自己認識とは、自分の内面や他者から見た自分への理解のこと。自己認識力が高い人は、仕事のパフォーマンスも高いとされています。今回は、自己認識とは何か、どうすれば高められるかについて、心理カウンセラーの浅野寿和さんに解説してもらいます。
ビジネスにおける優秀なリーダーは、正しい自己認識を持っている傾向があります。自分の影響力を客観的に認識しており、今の自分に足りないものを理解しているのです。
また、自己認識力が高い人は、仕事のパフォーマンスも高いといわれています。
もしあなたが優れたリーダーシップを発揮したり、パフォーマンスを上げたりしたいなら、意識的に自己認識力を高めていきましょう。
「自己認識」とは?
まずは「自己認識」が何なのかを確認しましょう。
自己認識には「内面的自己認識」と「外面的自己認識」がある
自己認識(じこにんしき,Self-awareness)とは、自分自身を明確に理解する力を指します。自分の精神を観察・把握し、「環境や他者とは別の存在」として自己を認識する能力です。
自己認識力の高い人は、自分の能力や他者からどう見られているかを客観的に認識し、的確に対処できます。
逆に、自己認識力が低い人は自分の能力などを過大・過小評価しすぎたり、他者からどう見られているか分からず求められている対応ができなかったりする傾向があります。
米国の心理学者であるターシャ・ユーリックによると、自己認識には「内面的自己認識」と「外面的自己認識」の2つがあるとされています。
内面的自己認識=自身の内面や影響力への理解
内面的自己認識とは、自分の価値観や感情、能力、周囲への影響力などに対する理解です。
例えば、「実際の自分の能力」と「自分が思う自分の能力」のギャップが小さいほど、内面的自己認識力が高いといえます。
内面的自己認識力が高い人は、理想と現実のギャップによるストレスや不安が少なくなるため、仕事やプライベートの満足度・幸福度なども高いとされています。
外面的自己認識=他者が自分をどう見ているかの理解
外面的自己認識とは、他者が自分をどう見ているか理解する能力です。
例えば、「他者が抱いている自分への印象」と「自分は他者からこう思われているだろう」というイメージのギャップが小さいほど、外面的自己認識力が高いといえます。
外面的自己認識力が高い人は、相手の立場で物事を考えられるため、他者への共感力も高いとされています。
自己認識ができている状態・できていない状態とは?
自己認識についての理解を深めるために、「自己認識ができている状態」と「できていない状態」の例を紹介します。
自己認識ができている状態
例えば、仕事で高いパフォーマンスを上げている同僚に嫉妬してしまったとします。
この時、「本当は自分もそうなりたいのに、実現できていないから悔しいんだな」と認識し、パフォーマンスを上げるために工夫できる人は、自己認識ができているといえます。
つまりこの場合、「自分の考えやそれに伴う感情の所在は自分にある」と認識できていることが、自己認識できている状態です。
自己認識ができていない状態
例えば、上司から「最近仕事が早くなったね」と言われたとしましょう。
もしこう言われるまで「仕事のペースが上がった」と自覚していなかったなら、自己認識ができていなかったといえます。
つまりこの場合、「自分の認識や在り方が周囲に与える影響」を自覚できていないことが、自己認識できていない状態です。
そんな時は、「自分にはこんな面もあったのか」と認識し、自分の能力やプラスの影響力をさらに発揮する方法を考えてみましょう。
それが自分の影響力について考えるきっかけとなり、新たな自己認識につながるはずです。
自己認識力が高い人は全体の10~15%
ユーリックが行った調査の結果によると、高い精度で自己認識ができていたのはわずか10~15%だったそうです。
人には「自分の評価を高く保ちたい」という自己高揚動機があるため、客観的に自分を認識するのが難しい場合があるのです。
また、自分が他者からどう思われているか知ろうとすると、受け入れたくない自分の一面を突きつけられる可能性があります。
そのため、自己認識力を高めることが重要だと理解していても、なかなかチャレンジしにくいのでしょう。
自己認識力を高める方法3つ
ここからは、自己認識力を高める方法を紹介します。
(1)他者にフィードバックを求める
自分の言動や働きぶりへの印象について、上司や同僚などから評価してもらう方法です。
月に数回、ランチやディナーなどに誘って、機会をつくってみましょう。なお、前もって「客観的で率直な意見を求めていること」を伝えておくと、相手が事前に意見をまとめられるので親切です。
できれば意見を求める相手はあなたをよく知っている人か、応援してくれている人を選ぶと良いでしょう。
その方が、具体的な意見をもらいやすく、仮に厳しい評価だとしても「愛情ゆえ」と受け入れやすくなります。
もちろん、意見をもらったら感謝の気持ちを伝えることも忘れずに。
(2)自分にとっての楽しみや幸せを見つける
今まで仕事やプライベートで経験したことを振り返り、その中で何が楽しかったか、または幸せだったか考えてみましょう。
例えば、ノートやスマホのメモに「自分がやりがいを感じた仕事」「幸せだと感じた出来事」を書き出し、さらに「やりがいを感じた部分」「幸せを感じた理由」を掘り下げて書き入れます。
そうすれば、自分の得意分野や適性、価値観が見えてくるはずです。
(3)自分の行動や考え方を振り返る
一日の終わりに自分の行動や考え方を振り返ってみましょう。
「今日うまくいったことは何か」「今のやり方や考え方を変えなくて良いか」などを自分に問いかけます。
この方法には、コツが2つあります。
1つ目は、「うまくいったこと」と「うまくいかなかったこと」の両方を見つめることです。
仕事でミスをして落ち込んでいる時などは、つい否定的なことばかり思い浮かぶかもしれません。しかし、それでは自己認識力は高まりにくいでしょう。
なぜなら、自分の良い部分も悪い部分も含めて理解するのが自己認識だからです。
そして2つ目のコツは、「なぜ」ではなく「これから何をすれば良いのか」を考えること。
「どうしてあんなことをしてしまったんだろう」「なぜ自分はこれができないんだろう」と考えると、自分を責めるマイナス思考から抜け出せなくなりがちです。この状態で自己を正しく認識するのは難しいでしょう。
そこで、「できなかった理由」ではなく「できるためにすべきこと」を考えるように心掛けましょう。そうすれば、客観的に自分を見つめやすくなるので、自己認識の精度が上がるはずです。
パフォーマンス向上のために自己認識力を高めよう
自己認識力が高い人は仕事のパフォーマンスも高く、良い成果を出す傾向が強いといわれています。
もし、「より高いパフォーマンスを発揮したい」と考えているのなら、この記事を参考に自己認識を高める訓練をしてみてください。
自分の得意分野や苦手分野を正しく把握し、さらにレベルアップするにはどうすれば良いか考えることで、きっと仕事に良い影響があるはずです。
また、自分の価値観や他者への影響を自覚して振る舞いを変えることは、自分だけでなく周囲の人の幸せにもつながるでしょう。
(浅野寿和)
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