「自己管理」とは? できるようになる方法5つ
「なかなか自己管理ができず、やるべきことが思うように進まない……」と、もどかしい思いをしている人も多いと思います。この記事では、自己管理とは何か、どうすれば自己管理能力を上げられるのか、キャリアアドバイザーの藤井佐和子さんに解説してもらいます。
やる気があるのに、「時間がない」「気分が乗らない」などの理由で、ついつい後回しにしてしまうことってありませんか?
「自己管理ができていないからかな」と思いつつ、どうすれば良いか分からないまま同じことを繰り返してしまう……という人もいるかもしれません。
では、自己管理能力を高めてやりたいことを実現するためには、どうすれば良いのでしょうか。
そもそも「自己管理」とは?
「自己管理」には、大きく分けて以下の3つがあります。これらは、それぞれ独立したものでなく、相互に影響し合っています。
(1)時間管理
時間は無限ではありません。
その時間を有効活用するためには、スケジュール管理と優先順位づけが必要になります。
これらを的確に行い、睡眠や休息の時間を削らずやるべきことをやれるようにするのが、時間管理です。
(2)体調管理
体調が良い時と悪い時では、当然、パフォーマンスの差が出ます。
常に最高のパフォーマンスで物事に取り組めるように体調を整えるのが体調管理です。
睡眠は規則的に取れていますか? 適度な運動はしていますか? バランスの良い食事は取れていますか? 体調管理のために、生活スタイルを見直しましょう。
(3)感情・モチベーションの管理
常にやる気満々、という人はほぼいません。「今日は気分が乗らないなあ」「嫌なことが重なってモチベーションが上がってこないなあ」。こんなことは誰でもあるものです。
自分の感情やモチベーションの癖を知らないと気分のムラにうまく対処できないので、感情やモチベーションのアップダウンに振り回されがち。これではなかなかパフォーマンスが上がらないですよね。
そうならないように、自分の感情やモチベーションの傾向を把握してコントロールするのが、感情・モチベーションの管理です。
自己管理ができない原因は?
筆者は、自己管理ができない原因は「目的がはっきりしていないこと」だと考えています。
何のためにそれをやるのか? それをやって、どんな自分を実現し、何を成し遂げたいのか?
これらの目的がはっきりしていないと、なかなかやる意義を見いだせません。
そのため、つい「忙しいから」「難しいから」といった「やらなくてもいい理由」をつくって、自己管理をおろそかにしてしまうのです。
自己管理能力を高める方法5つ
自己管理は、訓練せずにある時突然できるようになるものではありません。
自己管理能力を高めるには、まず自分なりのやる意味を明確にすること。そして、途中で投げ出さずにやり切るための訓練や工夫をすることが大事です。
これらは、人によってしっくりくる方法が異なるので、以下を参考に試行錯誤してみてください。
(1)目的を明確にする
やるべきこと・やりたいことの目的がはっきりしていないと、つい「やらなくていい理由」を見つけて、それを達成するための自己管理をおろそかにしがちです。例えばこんなふうに。
「私がそれをやっても意味なんてないんじゃない?」
「チャレンジしたけどできなかった、なんてことになったら自信をなくすし、かえって評価を落とすから、最初からやらない方が良いのでは?」
確かに本当にやる意味がないのであれば、やらなくて良いかもしれません。
ですから、本当にやる意味があるのか確認し、「やらなくていい理由」に負けないように、まずは目的をとことん考えましょう。
それをやりたいと思った理由、やるメリットなどを、腹落ちするまでノートに書き出してみるのがおすすめです。
(2)スケジュールを立てる
やるべきこととその目的がはっきりしていても、いつやるのか決まっていないと実践できません。
また、思いつきで行き当たりばったりの行動をすると、体力的に無理をすることになったり、他の予定と被って時間を取れなかったりする可能性があります。
これでは、自己管理ができているとはいえないですよね。そのため、自己管理ができるようになるにはスケジュールを立てることも重要です。
スケジューリングの基本は、「いつから始めるか」と「いつまでに終わらせるか」を決めることです。
「いつまでに終わらせるか」は決められても、「いつから始めるか」まで考慮できていない人は、案外多いようです。
しかし、それをやるのにどれくらい時間がかかるのか見積もって開始時期を逆算しないと、期日ギリギリになってから「間に合わない!」と焦ることになります。
そうならないために、スケジュールを立てる時は始める日と終える日の両方を必ず決めましょう。
(3)時間をつくる
何かやるとなったら、当然、時間の確保が必要です。
前述したように、睡眠時間や余暇の時間を減らさずに時間をつくるスキルは、自己管理に欠かせません。では、実際どうすれば良いのでしょうか?
時間をつくるために参考にしたい、「ECRS(イクルス)の法則」というものがあります。これは、いわゆるタスクの断捨離です。
自分が今抱えているタスクについて、以下を適用できるか確認してみましょう。案外、無駄な時間や労力を使っているかもしれませんよ。
E:排除する(Eliminate)
目的が曖昧、または価値を生まないタスクを、全部(あるいは一部)やめること。時間の捻出のためには、これが一番効果的です。
C:結合・分離する(Combine)
別々のタイミングでこなしている類似したタスクをまとめて、効率化を図るのが「結合」です。
例えば、これまでは朝に資格試験の過去問を解き、夜に添削していたとします。これらを朝か夜のどちらかにまとめてやる(=結合する)のです。
問題を解いた直後に添削すれば、どうして間違えたのか思い出しやすく、原因と対策の分析にかかる時間が少なくなりますよね。
一方、同時にやっている毛色の異なるタスクを別々にすることで効率化を図るのが「分離」です。
例えば、資格の勉強をする合間に、仕事のメールへの返信もしていたとします。
勉強を中断してメールを返すと、また勉強に戻った時に「あれ? 今どの問題を解いていたんだっけ?」などと考える時間が発生するので、効率が悪くなります。
これを防ぐために、資格勉強の時間とメール返信の時間を別々に取る(=分離する)のです。
R:入れ替える(Rearrange)
タスクに取り組む順番を変えたり、複数ある一連のタスクの中のどれかを他のものに変えたりするのも、効率化につながります。
例えば、これまで難易度の高い順に取り組んでいたタスクを、難易度の低い順に取り組むようにするのが入れ替えです。
こうすれば、限られた時間の中で完了できる作業が増えるので、効率アップが狙えます。
S:簡素化する(Simplify)
タスクを標準化・単純化し、文字通りシンプルにすることです。
繰り返し使う文章はテンプレートを用意してコピーするだけで使えるようにする、などがこれに当たります。
(4)自分のやる気スイッチを見つける
時間はあるのに、気分が乗らなくてアクションできないことがあります。現実的にはできるはずなのに、スイッチが入らなくてできないのです。
しかし、このような状況でも何とかやる気を出して行動に移すのも、自己管理のうちです。
スイッチが入らずモチベーションが上がらない時は、もう一度目的を確認しましょう。目的を思い出すことで、「やろう」と思った時の気持ちがよみがえり、モチベーションが上がるでしょう。
こういう時にすぐ目的を確認できるよう、「なぜこれをやろうと思ったのか」をノートなどにメモしておくという方法があります。あるいは、デスクに目的やビジョンを書いた紙を貼っておくのもおすすめです。
また、やる気スイッチを入れてモチベーションをアップする方法には、以下のようなものもあります。
・単調な作業をし、手を動かしているうちに、だんだんエンジンがかかってくる
・余計なことを考えずに、まずはできるところから進めてみる
・1人で実行するのではなく、「この人とだったら楽しくできる」という人を巻き込む
・天気の良い日や集中できそうな朝など、気持ちが元気になる日を狙って作業する
いろいろ試して、どうすれば自分のやる気スイッチがONになるか探ってみましょう。
(5)起きる時間と寝る時間を決める
「心身一如(しんしんいちにょ)」、という言葉があります。これは、心と体は1つにつながっているという意味です。
実際、体調が悪くて何となく気分が乗らなかった、という経験がある人はいるでしょう。
自己管理、特に体調管理ができるようになるには、まず起きる時間と寝る時間を決めましょう。この2つが決まれば、それを基準に生活スタイルを整えることができます。
自己管理はハードルを低く
自己管理ができるようになるコツは、大きすぎる目標を立てないことです。慣れないうちにいきなり難しいことに挑戦すると、うまくいかずに心が折れてしまう可能性があります。
そのため、自己管理が苦手な人は、まず小さな目標を立てましょう。それをクリアすることが、成功体験になります。
「クリアできた」という成功体験をたくさん積み重ねることで、自己管理の習慣がつきますよ。
(藤井佐和子)
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