【専門家解説】法律婚とは? 事実婚との違いやメリット・デメリット
「法律婚」や「事実婚」は見聞きするけど、それぞれの違いやメリット・デメリットについはよく知らない。そんな人も少なくないのではないでしょうか? 将来に向けて、自分に合った結婚の形を知っておくのも大切です。今回は弁護士の宮崎大輔さんに、法律婚とは何か、事実婚との違いも含めて教えてもらいました。
現代の日本において、夫婦の価値観、生活の方法などにはさまざまな形があることが徐々に認められてきています。
しかし、まだまだ認知が低い形もあります。例えば「事実婚」という関係について。まだ一般的な認知は高くないと思いますが、事実婚には「法律婚」にないメリットもあります。
今回は、そもそも法律婚とは一体何なのかを解説します。これを機会に、自分に合った夫婦の形について考えてみてはいかがでしょうか。
日本の「法律婚」ってそもそも何?
まずは「法律婚」とは何か、そして「事実婚」との違いについて紹介します。
「法律婚」は法律上・戸籍上ともに夫婦となること
「法律婚」とは、婚姻の意思を持った者同士が婚姻届を提出することによって、法律上の婚姻関係が認められ、その結果、戸籍上夫婦となることをいいます。
「法律婚」と「事実婚」の違い
一方で、事実婚とは、婚姻届を提出してはいないが、法律婚と同じように結婚する意思があり、夫婦としての生活実態がある状態をいいます。
「法律婚」をするのに必要な手続きとは?
ここで、法律婚における手続きの手順を簡単に紹介します。
STEP1:婚姻届の作成
お互い婚姻意思がある場合に、婚姻届けに記入します。
その際には、証人2名の押印も必要となります。
STEP2:婚姻届の提出
記載した婚姻届けを、各市区町村の役所に提出します。これで手続きは完了です。
「法律婚」のメリットとデメリット
法律婚には、大きなメリットとデメリットがあります。事実婚とも比較しながら確認していきましょう。
法律婚のメリット
まずは法律婚のメリットを紹介します。
(1)法定相続人になれる
法律婚の場合、夫婦の一方が亡くなれば、他方は法定相続人となり、亡くなった方の遺産を相続することができます。
一方、事実婚の場合は、遺言書などがない限り法定相続人とは認められず、遺産を相続できない可能性があります。
(2)子どもは「夫婦の子」と認められる
法律婚の場合、生まれた子どもは、法律上も2人の子ども(嫡出子)となります。
事実婚の場合は、生まれた子どもは婚外子(非嫡出子)となり、親権者は原則として母親の単独親権となります。そのため、夫が認知しない限り、夫の子どもとは認められません。また、認知したとしても、親権はどちらか一方にしなければいけません。
(3)生命保険の受け取りや手術の同意などの手続きがスムーズ
法律婚の場合は、生命保険の受け取りや手術の同意などは問題なく行えます。
事実婚の場合、問題が生じる場合があります。もっとも最近これらの点は、事実婚契約書を作成することにより、かなり改善されてきています。
法律婚のデメリット
続いては、法律婚におけるデメリットを解説します。
(1)離婚するためには時間と労力を要する
法律婚を解消したい場合、離婚という手続をとる必要があります。
もし一方に離婚の意思がなければ、離婚調停を経て、最悪の場合、離婚裁判で決着をつけなければいけません。その場合、1~2年程度の期間及び、弁護士費用、財産分与、養育費などの費用がかかります。
(2)姓を変えなければいけない
現在、法律婚の場合には夫婦別姓とすることは認められていません。
したがって、婚姻によって姓を変えたくない人にとっては、法律婚はデメリットとなり得ます。
「法律婚」から「事実婚」へ変更するには?
法律婚から事実婚へ変更することは可能です。
しかし変更するためには、生活実態を変えずに離婚届を役所に提出することが必要です。また、いくつかの注意点もあります。
ここでは、法律婚から事実婚に変更した場合に何が変わるのか、注意点や手続き方法とあわせて紹介します。
「法律婚」から「事実婚」になると何が変わる?
法律婚から事実婚に変更した際には、以下の点に変化が生じます。
・夫婦の一方の姓が変わる
・日本では共同親権が認められていないため、子どもの親権をどちらか一方に定めなければいけない
・相手が死亡した場合、相続権がなくなる
特に互いの相続権がなくなることから、遺産の相続について夫婦間で何らかの合意をしておく必要があります。
「法律婚」から「事実婚」へ変更する際の流れ
まずは離婚届を提出します。
その後、住民票の続柄に「妻(未届)」「夫(未届)」と記載する手続きが必要となります。
法律婚とも違う「パートナーシップ制度」とは?
「パートナーシップ制度」とは、戸籍上同性であるカップルに対し、婚姻に相当する関係であることを各地方自治体が公認する制度です。「同性パートナーシップ制度」とも呼ばれます。
日本では、2015年に東京都渋谷区と世田谷区でスタートし、2021年12月1日時点では、137の自治体でパートナーシップ制度が施行されています(同性パートナーシップ・ネット調べ)。
これからのパートナーにはさまざまな選択肢を
多くの人は「結婚=法律婚」というイメージを持っているのではないでしょうか。
しかし、お互いの個を尊重するためにも、「事実婚」という形のメリット・デメリットを知っておくことも大切です。
これからのパートナー同士の関係には、さまざまな選択肢があっても良いと思います。
(宮崎大輔)
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