【File29】遠距離恋愛が辛すぎて自爆した話
今振り返れば「イタいな、自分!」と思うけれど、あの時は全力だった恋愛。そんな“イタい恋の思い出”は誰にでもあるものですよね。今では恋の達人である恋愛コラムニストに過去のイタい恋を振り返ってもらい、そこから得た教訓を紹介してもらう連載です。今回はkanaさんのイタい恋。
今回は自己肯定感が底辺だった私のイタい恋愛について話そうと思います。
彼とは東京出張の時に友人が開催した合コンで出会いました。
3カ月前、借金してまで尽くした男性に海外逃亡されホームレスになりかけるという地獄のような失恋をした私は、まだ彼のことが忘れられず、ドン底のメンタルのまま銀座へ向かいました。
しかし光のような切り替えの速さが私のストロングポイント。帰国子女で某商社に勤める3歳年下の彼に一目惚れし、すぐに意気投合。途中で合コンを抜け出し2人で朝まで飲み明かしました。
そしてそのまま付き合うことになったのです。
幸せな遠距離恋愛
彼はとてもピュアで優しい男性でした。
恋愛経験はそれほど多くありませんでしたが、見た目の可愛らしさとは裏腹に芯の強さと男らしさを感じさせる、夫にするなら最高の相手です。
私が涙ながらに元彼の話をした時も「カナちゃんがかわいそうだ!! 僕は絶対にカナちゃんを悲しませたりしない!!」と言ってくれました。
激務で終電近くまで働いているにもかかわらず、情緒不安定な私のために毎日電話をくれて飽きるまで話を聞いてくれるところも。
「こんなにハイスペで優しい男性には二度と出会えない。彼が運命の相手だったんだ」
ほんの1カ月前まで「元彼以上に好きになれる人はこの先現れないだろう」と人生を悲観していたのが幻だったかのような満たされた日々。
まさに幸せの絶頂でした。
自己肯定感が低い女の妄想
当時すでに婚活歴も5年に突入していたので、「この結婚を絶対に決めてやる!」と誓った私でしたが、3カ月前の失恋がやはり癒えていませんでした。
それに加え当時の私は自己肯定感が底辺。
付き合って2カ月もすると、頭の中でいつものネガティブ思考が出てきました。
「こんなに素敵な彼が結婚なんてしてくれるわけがない」
「どうせいつも通り、1年くらい付き合って振られるのだろう」
「今までも結婚できなかったのだから、今回も結婚できないに決まっている」
毎日の電話と彼の優しさで満たされていた恋愛が、会えない不満と結婚への不安で苦しい付き合いに変わっていったのです。
その頃から私は毎日の電話だけでは満足できなくなっていました。
「絶対に結婚してくれるという保証が欲しい……」
今考えると完全にヤバい思考です。付き合って2カ月、まだ数回しか会ったことのない男性に結婚の保証を求めるなんて正気の沙汰ではありません。
しかし「私は結婚してもらえない女」という負の思考は止まりませんでした。例えるならブレーキが壊れた車のように、一度走り出したら止まらない暴走車と化した私は、とある行動に出ます。
遠距離恋愛が辛すぎて自爆
今考えたら自分でもドン引きなのですが、私は日課だった電話で彼に「結婚の保証」を迫ったのです。
「ねえ、私たちいつ結婚する?」
「遠距離恋愛が辛い。結婚の保証が欲しい」
「結婚の保証がないと安心して付き合えない」
電話口で号泣しながら結婚の保証を迫る。
これが毎日です。
当時の彼の気持ちを聞くことはもうできないけれど、トラウマになるほど恐ろしい体験だったに違いありません。本当にごめんなさい。
次第に彼は私の電話に出なくなりました。当然ですよね。1+1=2くらい当たり前の話です。
でも彼は折り返しの電話をかけてくれました。怖かっただろうに、感謝しかありません。
とはいえ、彼が電話に出なくなったことで不安はさらに増長し、私はあることを確信しました。
「もうすぐ彼に振られるに違いない」
3カ月前の恐怖が蘇ってきました。
また私は一人ぼっちになる。こんな辛い思いはもうこりごりだ。
不安が絶頂に達した私は決めました。
「そうだ、婚活しよう!」
彼はまだ若い。私みたいな結婚に焦る30代女性なんかより、もっと若い子と出会って恋愛を楽しんでほしい。
そう勝手に決めつけて私は婚活を再開することにしたのです。
すぐに電話で彼に伝えました。
「私たち、別れよう」
「は?」
しばらく沈黙の時間が続いたのち、彼が半笑いで「まあ、あなたがそう思うならそれでいいよ」と言いました。
さすがに彼も驚いたと思います。昨日まで「結婚して〜結婚して〜保証が欲しい〜」とゾンビのように迫っていた女がいきなり「別れよう」と言ったのだから。
こうしてハイスぺ商社マンとの恋愛は終焉を迎えました。
まだまだ暴走は止まらない
実はこの話には続きがあります。
暴走車の私は止まることができないのです。ガードレールに激突しようが、バンパーが大破しようが、エンジンが壊れない限り走り続けます。
2週間後、私は彼と別れたことを後悔したのです。
今思えばなんで別れようと言ったのか。きっと「そんなこと言わないでおくれよ。結婚しよう」と言って欲しかったのだと思います。
そして彼に電話をかけました。
「別れようって言ったけど、やっぱりまだ好き。もう一回付き合ってほしい」
「は?」
イタい恋から得た教訓「恋愛の前に自己肯定感を高めよう」
恋愛は「自分が自分をどう捉えているか」が全てです。
「私は愛されない存在だ」という思い込みがあると、どんなに大切にしてくれる人と付き合っても「いつか彼に捨てられてしまうのではないか」と不安になってしまうのです。
その不安を払拭するために起こす行動はたいてい間違っていて、恋愛を自ら壊す結果になります。失恋の経験が増えるほど思い込みは強くなり、負のループから抜け出せなくなるのです。
この経験から「私の恋愛は何かがおかしい」とさすがの私も気づき、自分と向き合い自己肯定感を高めることができました。自己肯定感を高めることで、こんなにも穏やかな恋愛ができるのかと驚くばかりです。翌年知り合った夫とは結婚8年目の今も良好な関係を築いています。
(文・kana、イラスト・菜々子)